反撃
前回、感想をたくさんいただきました
本当に嬉しかったです(涙)
だから今回の話は頑張りました!
ではどうぞ
「ゴホン、では陛下には次のことをして頂きたいのです」
咳払いをし話の流れを変える
つまらなそうに椅子の上でふんぞり返る我が主
(くっそ、腹立たしい顔して)
態度に苛立つも、決して口にはしない
それが大人の対応だと心得ているから
「陛下」
突然、割って入るようにシド団長が口を挟んだ
やはりシド団長の私を見る目は厳しいものがある
「なんだ」
「貴方様は大国のただ一人の王で在らせられる。小娘一人の根も葉もない話をそんなに安易に受けることは許されません。御身に危険が迫った場合、陛下の代わりなど誰一人としていないのですよ」
私を睨む目は本物だ
射殺す程の殺気、抜刀はしていないが左腰にさされた剣の鞘を彼は握っている
少しでも私が変なことを口にすれば彼のその鋭い鈍色の剣は私の喉元を捕えようとするだろう
(実に忠実な犬)
いっそ恐ろしいと思った
純粋に主である陛下を護ろうとしている
何が彼をそこまでしたのか...きっとシド団長にとって陛下とは国よりも大切な存在なのだろう
そこまで考えて笑ってしまった
小さく息が零れる程度の笑み
「何がおかしい」
だが耳のいいシド団長には届いていたらしく、凄まれた
眉間の皺が増えている
陛下もまた、私を見ておかしなやつだとでも言いたげな表情をしていた
「これは....北の魔女の命にも御座いますよ。シド団長の陛下に対する忠誠心は私も見習わけらばならない程。ですが私はそれ以前に仮にも魔女で御座います。―――――見くびらないで下さいませ。」
「何が言いたい」
一瞬の間
私は近くにあった花瓶に活けられている白い花を一輪手に取った
睨むシド団長の元まで歩み寄る
一歩進む度、彼に近づくたびに自身が興奮状態にあることに気付いた
それは多分
シド団長が陛下を一身に慕う姿をみて昔の、他の姉様に対して私が抱いていたものと同じものを見たからだ
陛下はそんな私達の様子を静かに見守っている
この後の展開を彼は脇から口を出すことなく存在し続けるつもりらしい
「何をするきだ」
ピタリ
シド団長の目の前で足を止める
スッと徐に手に持つ一輪の白い花を差し出す
「――――命とは、魔女と精霊王によって創造され今尚形作られている。いかに人間が足掻こうともこの真実、この理を覆すことは許されない。貴方達が仰る、末端の私でも....小さきこの程度の命、枯らすことなど造作もないのですよ」
サラサラと瑞々しかったはずのその白い花は私の手の中で醜く枯れていった
水分を抜かれ、色褪せた白だったはずの花は茶色く変色し、手の中からさらりと砂のように零れ落ちる
「なっ!?」
それを目の前で目の当たりにしたシド団長の驚きに満ちた表情
微かに背後で陛下が動揺したのが分かった
(魔力が無いから魔法の類は使えない。但し生まれ持った自然を使う能力は、健在だ。この白い花には申し訳ないことをしたけれど、幾年先に必ず生まれてこれるようコレが咲いていた場所には絆を結んでおこう)
「お判りいただけましたか。私も陛下の前では忠実なる僕。おいそれと陛下に禍を齎すことは致しません。今回のお話は、今後を左右する重大なもの。シド団長にも何卒ご理解頂きたい」
頭は下げはしないが
切実な表情で訴えかける
それが伝わったのか、シド団長は小さく「陛下の安全が第一だ」といって扉の横、普段の定位置に戻った
「お前の魔術を初めて見た」
「陛下の目に居れる程の事でも御座いませんでしょう。陛下の御力は魔女をも凌駕するほど....それでは本題に入りますね。」
途中で話を終わらせる
陛下の表情が、少し何かを堪えるようなものになったから
「どうするつもりだ」
「干渉という呪いは魔法とは違い、一般に魔女のみが使える呪いです。どういった経緯であの黒猫がこの呪いを使ったかは定かではありませんが恐らく彼女の生前の魔力の保有量に比例しているものと思われます。」
「比例?」
「はい。呪いがなぜ一般に魔女しか使えないのか。それは均等な力の配分により使える技だからです。3つの要素をバランスよく使いこなせれば少量の魔力であっても短時間なら呪いを使うことが可能です。今回このように長時間かけていられるのは、あの猫だけの力では無いでしょうが、大半はあの猫のものです。これは生前彼女が召喚士であったということで納得がいきます」
私の説明に理解したと頷く陛下
理解力のある聡明な人で助かる
召喚士とは、その名の通り精霊を呼び出せる者の事
魔女は自然との繋がりや精霊王との関係性から精霊と会話をし、自由に駆使することができる
だが人間にはかなり高度な技だ
その高度な技を使える人間を、私達は召喚士と呼ぶ
召喚士は精霊に近い人間だ
精霊は純粋故、3つの要素もほぼ均等に持っている
そんな彼女が魔女同様に呪いを掛けることは、例外的に理解の範囲内である
「だから、俺か」
「左様に御座います」
その均等な魔力に対抗するために同じ要素を兼ね備える魔力を双方ぶつければ分解することができる
この国に、そんな魔力を持つ人など陛下しかいない
陛下もまた召喚士になることだってできる人材だ
陛下からは精霊に近い何かを感じさせるから....
「そこまでは分かった。ではどうやって俺は対抗すればいい」
「僭越ながら私が、陛下にその技を伝授いたします」
そう言えばハトが豆鉄砲でも食らったかのような表情をした
まあ、強いの欠片も見せなかった私が教えるというのは本当に変な話だけれど...
(一応花を枯らして見せたりして、魔女ですよアピールはしたつもりだったんだけどね)
「―――大丈夫なのか?....急に不安になってきたぞ、シド。お前の判断の方が正しい気が「ちょ!!信じて下さいよ!私の評価って陛下から見てどれだけ低いんですか!!ちゃんと北の魔女から教わりましたから!」――――なら、いいんだ。それを先に言え」
「つまりはどん底なんですね、私に対する陛下の評価は。別にいいですけどね、ええいいですよ。.....では、早速伝授いたしますね」
ジト目で陛下を視つつ話を続ける
陛下は、私をからかったのだろうか。いや、あれは本気で不安だったに違いない
しかもシド団長に意見を求めた
悔しい、私ってそんなに陛下から信用されてなかったんだね
(あ、だから教育係なんてものが付くのか)
そこまで考えて頭を振る
今は余計なことを考えている暇はない
集中しろ
「簡単です。魔力でこの王宮を包むイメージを頭の中で思い浮かべて下さい」
座る陛下の横に立ち
指示をする
陛下はゆっくりその青い瞳を瞼で隠していく
完全に閉じきり彼から濃密な魔力が漂い始めた
シド団長もその成行きを静かに見守っている
彼の魔力は金粉のように輝きながら辺りへ散らばっていく
(いい調子だ)
「陛下、その調子です。結界を張るのではありません、あくまで包み込むように...もう少し魔力を広げられますか」
集中しているのだろう
私の問いに答えることはせず、しかし先程より魔力が広範囲に広げられたのが分かった
「ではその魔力を安定させた後、王宮内にいるもの全ての魔力を自分の広げた魔力で掬い取るように圧縮なさってください」
ここからが難しい
広げるのは魔力が多い人間ならだれでもできる
そこから他者の魔力を掬い取るだけの自身の質と純度が必要になる
相手に引っ張られたり、圧縮しきれずその場で拡散してしまえば意味がない
突如
ビリッと空気が裂けるような感覚がした
(きた!!)
それは、陛下が確かに異物という干渉の呪いを掬い取った事によって反発がおこった証拠でもある
「――――このような魔力の使い方は、初めてだ」
「もう、自分のモノにしたのですか」
驚いた
呪いはその特殊な使い方と魔力から、普通の人間には決してまねできないものだとおもっていたのに。簡単にやってのけ、更に自分のモノにするとは
「圧縮を始めた、その後はどうすればいい」
(流石陛下だ...とでも言って置こう。いや、正直に言おう。なんて化け物だ、私が言うのもおかしいが陛下の順応力とその魔力には目を見張るものがある....こいつ本当に人間か?)
「.....では、圧縮したらその力を自分の手のひらに乗せるイメージをしてください」
急に私たちのいる部屋が圧迫される
陛下の魔力が、翳した左手の上で渦を巻き始めている
それは次第に音を立て、ゴウゴウと唸るように激しさを増し始めた
シド団長が一歩前に出ようとするのを私が目で止める
今の陛下に迂闊に近づいてはいけない
陛下の周りで飛び交う魔力に、ジど団長が傷つけられるかもしれないからだ
(これが...干渉の呪い)
どんどん陛下の手のひらに金粉と同じような量で全く別色の紫色に近いなにかが渦巻いている
そして....
「これで全部だ、どうすればいい!」
流石に余裕がなくなってきたのか陛下が珍しく声を荒げた
私はそっとその手のひらにのっている魔力の塊といっていいソレの上に手を翳した
「陛下はそのまま、この圧縮した魔力を暫し留めていて下さい」
そう言って私はその塊にそっと触れる
呪いは、魔女によって作られ魔女にのみ解除できる
アネッサ姉さまがあの塔に掛けていた呪いと、要は同じ事
(案外、あっさり終わるわね)
ブワッと私が触れた瞬間
その塊が空気と同化するように揺れ消えてなくなった
「―――消え、た」
沈黙を守り静かに見ていたシド団長が、そんなことを零した
「何を...した、んだ」
いつの前にか陛下は目を開いていた
青い双眼が私を捕える
もたれかかるように椅子に座る陛下
少し汗を掻いている
それもそうだ
急に呪いをしろといって、この短時間でやってしまったのだから
私は陛下の傍に近づき
あらかじめ入っていた白いハンカチでその汗を拭いた
「何も、ただ同調させたに過ぎません。ご無理をおかけしました、ありがとうございます」
一通り汗を拭いて手を戻そうとしたとき
その手を陛下が取る
「久々に....訳の分からない魔力の使い方をした。――――もう少し、俺を労われ」
そう言って陛下は自身が据わる椅子、長椅子に身を横たえた
陛下の頭は私のひざの上
(...膝枕ですか)
静かに目を閉じる陛下
片手はいまも陛下に掴まれたまま
陛下の手から伝わってくる熱が、熱い
「今回は、大目に見る」
「大目にって....ねぇ」
シド団長が堅苦しく言う
だけど今回の事は私にはどうにもできないし、もう寝てるし陛下
ただ...とそこまで考え下を見る
美しく人形の様な顔を眺めながら
あのハゲによく似ていて、強くて威信があって...
今回は頑張ったから少しだけ、ほんの少しだけ大目に見ようか
さらりと私のもう片方の手で陛下の金の髪を撫で上げる
細く、なめらかな毛質だった
「さて....あちら様はどう動き、王宮は変化を見せるのか。」
戻れないところまで来たら
あとは、無理にでも進むまでだ
一応、一応呪いを解くまでに至った!
でも描写が上手くできなかったと後悔...
少しでも臨場感あふれるれるものにしたいと思っても文にするのは難しい
感想、いつでもお待ちしております
拙い文章ですがここまでよんでくださりありがとうございました