陛下と猫その2
頑張って更新します、はい
ではどうぞ
「―――貴方の御力が必要です」
たった一言
頭を垂れて、私は主人に願う
彼の言葉を耳にするまで、私は頭を上げはしない
「何故、俺なんだ」
「ご説明致します、その前に...この姿での話は些か不便に御座います。陛下の御力で元の姿に戻してはいただけませんか」
(いや、空気読んでないとは思ったんだけどさ、流石にこの姿ではちょっとさ)
陛下から発せられるオーラをひしひしと感じる
冷ややかなオーラだ、自分でできないならするな、とでも言いたげな雰囲気を感じる
「...馬鹿猫が。」
呆れた口調、微かな怒りとともに陛下は私の体を一撫でした
次の瞬間体中が熱を帯びる
熱いわけではない心地よい暖かさ
詠唱なしに彼は、ロードさんとアンナさん二人がかりでかけた魔法を解く
ふわり
私の茶色の髪が揺れる
目をゆっくり開ければ、視点が前より随分高くなっている
(無事、戻ったようね)
「お手を煩わせてしまいました。有難う御座います」
「いい。それより話の続きだ」
急かす陛下
私が掴んだ情報を早く知りたいのだろう
そこまで有益なわけではないけれど...
「陛下程の御方ならば既にお気づきのはず。この国の、王宮内ほぼすべての人間に"干渉"という呪いがかかっていること」
陛下はまだ何も言わない
言わないということはとりあえず知っていた、という肯定の意味に捕えていいだろう
「その干渉という呪いを解く存在、この国ではもはや陛下かおりませぬ。幸いにして、なんの運命か陛下はこうして此処に居られる。それ即ち北の魔女の御導きのことと存じます。北の魔女はこの忌々しき事態を憂いていらっしゃいます。北の魔女は貴方様ならこの国の負なる渦を晴らせると仰っておりました――――――陛下、両国安泰の為、その類稀なる御力にて呪いを解き放っていただきたい」
話を切り先程より更に深く頭を下げる
今この瞬間、私は自分を恥じた
(魔女でありながら、私は何もできず、人間に頭を下げている。わかるだろうか....私の存在はなんだ?魔女だ、300年の時を生きる魔女でありながら普通の人間より弱い)
帝国の王が私に鎖をかけ
その鎖を解いた東の王に魔力を奪われ
300年の後
彼の血を受け継ぐ人間に契約で縛られ
こうして、頭を下げている
前ほど目の前にいる陛下が憎くないのは、彼の秘めたる力を見たせいか
それとも私の認知している真実が本当ではないかもしれないということが分かったせいか....
沈黙は陛下の言葉によって終わる
「失敗すれば」
(そう、失敗は許されない)
「戦争だ」
尤もな話だ
一体この国で何人の人間が、帝国の王が国賓として招かれていることを知っているだろうか
何か月王が不在なのか
普通なら攻め落とされてもおかしくないのだ
国民が反旗を翻していたかもしれない
切れ切れになったロープの上を全速力で走っているようなものだ
もう、いつ崩れてもおかしくない国
そこに他国の、しかも豊かな国土を持つ豊かな国の王が居るとしたら
陛下を殺そうとするだろう
そして豊かな土地を奪おうとするだろう
今回
そんなある意味で台風の目の様な存在が動くのだ
周囲を巻き込んで....
この干渉の呪いを解いて、すべてが終わるわけではない
あくまで陛下は帝国の王だ
この国の王ではない
微かな穴を開ける存在に過ぎない
その穴を広げるのは他でもない正統な後継者であるジル殿下だ
(いったい何人の臣下が呪いの存在に気づいているのか)
誰一人として気づいていなかった場合には、残念だが我々にはどうすることもできない
だけど、使える臣下が居た場合
私達はジル殿下を全力でサポートする、両国の協定の下に
「北の皇太子殿下も、承知しての願いだと仰っておりました。あくまでこの国の問題、全責任は次期国王である皇太子殿下が背負われると....」
「顔を上げろ」
説明が終わると、陛下は私にそう言った
言われた通り顔を上げる
彼の青い瞳が鋭く、私を見据えている
深い青に飲み込まれそうになる
「お前はどう思う」
唐突に私に陛下は問うた
どう思う....この件に関して私はどう思ったのだろうか
「――――陛下の思うがままに。....と言うべきでしょうが、今回ばかりは僭越ながら申し上げます。今回の全てにおいての原因である蘇りった女召喚士の存在、見過ごせば後に大きな災いを齎すでしょう。断言できます、あれは異物です。悪い芽は早々に摘むべきです」
陛下の青い双眼を見返す
彼の瞳の奥には私の仮の姿が映っている
「ふっ、ははは!お前のその目、確かに普通の人間には無いものだ。魔女の分血という存在でありながらこの俺に堂々と純血の魔女と言い張っただけのことはある。....手を貸してやる、来い」
そう言って私の手を掴んで、引き寄せられた
数メートルの距離が数十センチの距離まで近づいた
楽しそうに笑う陛下
どこか、あのハゲの雰囲気を漂わせる
「なんだ、もう少し驚くと思ったのだがな」
グッと頬を掴まれ上を向かされる
顎を掴むなんて甘いもんじゃない
「陛下」
シド団長が、陛下の行動に静かに注意を促す....が、陛下は聞く耳を持たなかった
「なあ...俺がお前の、特に北の魔女の話に乗ったとして。その見返りは当然あるんだろう?」
ニヒルに笑うこの男
やはり、悪魔の生まれ変わりにちがいない
普通ならばここで頬でも赤く染めるだろう生娘ならば
だけど、私だって伊達に300年生きてませんから
「何をお望みです?」
7割の羞恥と2割の怒り、1割の慈しみが私の心を埋め尽くした
私の返事に陛下はふっと息を零す様に笑った後
珍しい程の笑みで私に言ってのける
「では、お前に教育を施すとしよう」
(――――教育?)
私の耳に陛下が口を寄せる
僅かに息がふわりとかかる
耳朶に、陛下の低く艶やかな声が響いた
「俺の専属魔女として相応しいよう、魔力を練り直し――――貢献しろ」
遠くでシド団長が咳払いをしているのが聞こえたような気がした、そして痛いぐらいの殺気にもにた視線
だけどそんなこと
今ではどうでもいい
陛下の、その声が私の脳を揺さぶった
――――私、魔女なのに!?魔力を練り直すって、私は子供か!
くっそ鬼畜悪魔野郎....見返りがそれってどういう意味だっての!
「....あはっ、承知しました」
なんでうちの陛下はこんなに歪んてしまったのだろうか
ああ、七面倒な人が魔力を持っているなんて。これから先が思いやられる
私の乾いた声が虚しく部屋に拡散した
さあ、漸く反撃だ
で、結局陛下に説明しただけで終わりというね←
会話文少なすぎるのかな、だから話が進まないのかな
第3章クソ長い...頑張ります。
ここまで読んでくださってありがとうございました
追伸
厚かましくも...感想や一言頂けると一層の励みになります。いえ、流石に図に乗りました(・_・;)
PV2,000,000突破
感謝してもしつくせません、本当にありがとうございます