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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第4章
94/151

陛下と猫

6月下旬まで更新していなくて、本当に申し訳ありません

大変お待たせしました


では、どうぞ

私は猫の俊敏さを生かし微かに残る陛下の魔力をたどった


と、突然陛下の気配が二つに分かれる



(――このタイミングでまさか帰るつもり!?)



身代わりという影武者を作り出したのかもしれない

この国に自分の信頼する宰相が居るとわかった時点で、彼は用済みとばかりに去るつもりに違いない



この考えは十中八九あたる

なんせ陛下だ、いつもの決め台詞で「信用に足りる~」とか言いそうだからだ



「フゥ君!」



走りながら風の精霊を呼ぶ

あの塔に行くのはすぐだったがそれはフゥ君の風の力があってこそだ



とりあえずもう一度手伝ってもらおう



≪はいよ≫



流石はフゥ君

呼んだらどこへでも駆けつけてくれるのね



でも、心なしか浮かない表情をしている

なんでだろう



「フゥ君、とりあえず至急ハゲの子孫の元まで私を連れて行って」



フゥ君に、陛下と言ってもいまいちピンとこないだろう

だからあえて"ハゲの子孫"にした、これが一番分かり易いはずだから



≪お、おう≫


何故そこでどもるフゥ君よ

私をそっと、いや若干怯えながら抱きかかえる



なんだ、なんか変だ




それは風に包まれ移動を始めても同じ

時折私の方をチラチラとみてくる



(――――鬱陶しい)



「なんだ、言いたいことがあるならはっきりしろ。鬱陶しいわ」



猫の姿のままきつく睨む

うっと詰まった声を出した後、フゥ君は静かに言った



≪...お、怒ってないか?≫



(何がだ....ああ、もしかして)



「なんだ、私を放り投げたことに後悔してるの?」



私を塔へ運んだ際、最後の最後で私を放り投げてくれた可愛い可愛いフゥ君

勿論彼の風の力によって衝撃があったわけではないけれど、猫という小さい姿であの高さから落とされるのは正直恐怖しかなかった



言えば、フゥ君は黙った

図星だったようだ



(でも、そうやって素直に反省するからフゥ君は憎めないんだよなー)



素直さが取り柄の風の精霊

私を冗談半分で落としたことに後悔しているようだ



私は何も言わない

そうこうしているうちにアンナさんの部屋が見えてきた



城に近づくにつれ分かったのは、陛下はアンナさんの部屋のその奥、廊下の最奥の部屋にいるようだった



「怒ってないよ」



そもそも私はそこまで短気ではない

昔の私?...我儘と言ってほしいね



≪え?≫

「何度も言わせないでよ、だからそんなことで一々怒ってません。ほら、もう着くから」



これ以上フゥ君と共に近づけば陛下に気づかれる

この状態で陛下に見られるのだけは絶対にあってはならない



≪そっ...かぁ。うん悪かった!ごめんミアン。怪我してない?≫


私の言葉に喜び安堵の表情を浮かべるフゥ君

本当に、可愛いな



「大丈夫、フゥ君の風のおかげで怪我もしていないし。そろそろ降ろして。気づかれてしまう...今度はゆっくり降ろしてね」



≪まかせろ。それより...気を付けろよ、なんか嫌な雰囲気がさっき来た時より濃くなってる。この数分間で何か動きがあったのかもしれない≫




私を抱きしめる力が強くなる

きっと、それは心配する気持ちの大きさ



苦しいぐらいの締め付けも、今回ばかりは仕方がない

彼も本能でかぎ分けたのだろうから...確かに、アンナさんの窓から出ていったときより強い負の念を感じる




(いったい何があったのかしら)




大丈夫だと、小さくつぶやく

そしてフゥ君は私を静かに近くの草木の根本に降ろしてくれた


≪いつでも見てる。気を付けろ≫


「うん...ありがとう」



フゥ君の言葉を背に、私は木を器用に上り先程出ていったアンナさんの扉の前に行く

私の顔の横をシュッと音を立てて風が斬る


次の瞬間には閉まっていたはずの扉があいていた

フゥ君の鋭い風が窓の隙間のカギを押し上げ開けてくれたのだろう



―――――――――――

―――




(アンナさんは、まだ帰ってきてないか)



部屋の中に人の気配はない

そう言えば彼女、奥の部屋は何もないと言っていた



彼女を疑うわけではないけれど...なぜだろうか、奥の部屋から何かを感じる

少し懐かしいような、さっきは全然気が付かなかったのだけれど



おそるおそる奥へと進む

扉は完全には締まっては無かったようで押せばすんなり入れた



「―――なんにもない」




確かに何もなかった

では、先程の違和感は何だろうか?



(うーん、よく知った気配を感じたと思ったんだけどな)


どうやら気のせいだったらしい

再び元の部屋に戻る



そもそもこんなところで油を売っている暇は無いんだった

一刻も早く陛下の元に行かなければ



(気配が二つある、さっきよりも鮮明になっていることから...魔法は完成したと思われる)




急げ、時間は思ったより無いようだ

飛び上がり閉まっている最初の扉を開け廊下に出る


急いでたので周囲に気が向かなかったが、幸い誰もいなかった

ふかふかの絨毯の上を駆ける



扉がいくつかあったが、どの部屋からも魔力は感じられない

やはり奥にあるだろう部屋に居る


(魔女なのに、魔女なのに四足歩行で走ってる)



自己嫌悪に陥るも、どうにか走る

いつか絶対陛下を犬に変えてリードに繋げて走らせてやる



だんだん思考がぶっとびそうになりながら漸く陛下がいるであろう部屋の前にたどり着いた


「っふ...はぁ」


よかった、まだ気配がある

乱れた息を整えつつ、足の爪で扉を引っ掻く



静かな廊下に、私の引っ掻く音が不気味に響く



カリカリ

少し引っ掻けば扉がすぐに開いた



(私じゃなくて黒猫だったらどうしたんだ)


自分が言うのもなんだが不用心だな

ま、陛下の事だからそんな危険さえもどうにかしてしまうんだろうけど



バタン

扉が閉まる



どうやら開けてくれたのはシドさんのようだ

すんごい私を睨んでいる...猫の姿でも私を毛嫌いしますか貴方は



「あと一分でも遅ければ俺はこの部屋にはいなかったぞ」



(存じております、その隣の陛下そっくりの方を身代わりにこの国を出ていこうとなされていたことぐらい勘と気配でわかりましたよ)



≪ニー(ハゲろ)≫


せめてもの反抗とばかりに、猫語を発してみる

うるうるおめめ



か細い声とは裏腹な意味

日頃の鬱憤受け取りなさい



「....シド、野良猫が迷い込んだらしい。種類からしてこの国の最北端の方に位置する場所に生息していそうな猫だ。白いからな。ここの気候は些か暑いだろう、丁重に帰してやれ――――雪山に」




こ、ここに魔物よりも殺戮的な笑みを零す鬼畜な野郎がいる

なんだ...なんだこの男は



(か弱い猫を雪山に放置ですって?それ以前にそんな種類の猫が居た事すら初めて知ったわよ!?)




「も、申し訳ありません。ほんの出来心です」



シュンと耳と尻尾が何故か垂れ下がってしまった

おおう、だんだん自分か野生化してることに驚きさえしなくなってきたよ



「いいのか、帰れるぞ―――雪山」


「遠慮します、結構です、申し訳ありません。この状況を楽しまないでください陛下」



切実な訴えに鼻で笑う陛下

根性曲がってるな、本当に



そしてこんなやり取りの中でも決して微動だにしないシド団長

会うのは数週週間ぶりなのに、なぜだろう...懐かしく感じる。こんなことを言ったらきっと気味悪がられるんだろうけど





「で、俺のところに来ると言う事はジル皇太子殿下でもロードにもできない何か、若しくは要件なんだろう―――――何が分かった」



(聡い人だ)


この一瞬で、この短時間でよくここまでわかったものだ

良く頭の働く、賢い子だ



(あのハゲに、よく似ている)





頭を下げる

私が頭を下げるのは後にも先にも、人間という分類にいたってはこの人だけに違いない



「―――貴方の御力が必要です」




私の声は、その静かな空間にはよく響いた

お待たせしたのにこの出来で、すいません(・_・;)

文才の無さに呆れてしまいそうです


なんでかな、終わりが見えているのに肉づけをしてしまう月詠

どんどん話をつまらなくしているようで怖い(涙)



それでも、それでも

ここまで読んでくださって、待っていてくださって本当にありがとうございます

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