崩れる音‐SIDE陛下‐
こうやって余計に視点いれるのがいけないのかな...
うわ、どうなんだろう
入れない方が面倒じゃないのかな
うーわー、まあ今回は書いちゃったので(軽い)
それではどうぞ
「北国へ行く。今すぐに竜騎士を呼べ」
「なりません」
俺の言ったことを即斬り捨てたのは、鬼の様な顔をした女官長
そんなにスッパリ言わなくとも。少なくとも俺、国王なんだけど...
―――――――――――
―――――
扉の近くに立っているシドは既に使い物にならなくなっている
北へ行くと言った俺に対するシドの反応は、俺も驚いた
まさか絶叫するとは思わなかった
仮にも、他国から鷹と呼ばれるお前がこんなことで取り乱すとは思わなかったよ
そう思いながら女官長を呼び出す
シドは放心状態なので、放置
となれば今使えそうなのは女官長くらいだろう
案の定、呼べばすぐ女官長は現れた
多分シドの絶叫に反応し、近くまで来ていたのだろう
そして話は冒頭へと戻るのだが....
「王に意見するつもりか」
「臣下や民の意見を聞き素晴らしい見解を見出す我が国の賢帝と謳われる陛下は、そのように臣下に圧力をかけるような愚かな王では御座いません」
前半は...褒めている
しかし、後半はどちらかというとお前が俺に対して圧力というプレッシャーをかけている様にしか取れないのは勘違いなのだろうか
「視察だ、視察」
尤もな理由を口にすれば、女官長はその整った眉の眉間に皺を寄せた
(王の前で表情を露見するなよ)
「具体的な理由を仰っていただかなければ我々とてそう易々と御身をあちらへ行かせることは出来ません。それでなくとも、今かの国は前国王が崩御し決められていた王が即位せず王不在のまま治安が悪化している一方です。そのような危険な国に我が国の国王が出向く理由はなんです」
わかっている
女官長が、俺を心配してくれていることは分かっているつもりだ
「影の情報が入った。状況次第では余も動かねばならない。意味が分かるか、最悪は――――戦争だ」
戦争
その一言に女官長ははっとした表情を浮かばせる
そして、いつの間にか立ち直っていたジルもこちらを真剣な表情で見ていた
戦争は最後の手段だ
今ロードとあの少女が、北で探っているだろう
が、次期国王が幽閉となれば話は別だ
幽閉に関しては多分、国家機密だろう
弟である第二殿下では、あの国は直ぐに壊れる
元々放浪癖があるの以前ジル皇太子が言っていた
何度か行われた両国の交流を深めるための催しに参加した際、年の近いジル皇太子と話をした
友人と呼ぶにふさわしい人物
そんな彼が幽閉されているとなると心配だ
とはいっても、所詮は国が違う
共に国を背負う義務を負っている以上決して相成れぬ部分もあるだろう
今回の件は友人が心配でなどといった甘いものではない
正直な話、幽閉され息絶えていたとしても悲しみはあるがそれ以上の情は湧かないだろう
だが、ジル皇太子が今死なれるのは困る
漸く5国ともに均衡が取れはじめたというのに...
せめてジル皇太子の弟も、帝王学の少しは学んでいればいいものを
学のない者が政務を取り仕切れば国庫は底をつく
学のない者が軍事を取り仕切れば忽ち戦火を交えることとなるだろう
その結果どちらも向かうは国の崩壊
北国が崩壊したところで、こちらには影響がない...そうとは言い切れない
飢えに苦しんだ民は、そのうち紛争を起こすだろう
そしてその紛争の...火の粉はその周辺諸国にも降りかかる
戦力では北国の民の力など脅威ではないかもしれない
だが、少なからず死者が出るだろう
望まぬ死に、親しいものは憤りを感じる
そして復讐するだろう
復讐した先に待ち受ける更なる復讐
その押収は、悪い意味で北国の団結を深め、戦争へと発展する
安定した国土を荒らす時間も余裕もない
事が大きくなる前に収集を付けなければいけない状態になっているのだ
「既に、北国では抑えきれない状態になっている。視察という圧力をかけ、次期国王を指名されたジル皇太子の安否と現在の政情を我々も把握しなければならない。この対談で北国を見極める必要があるんだよ――――場合によって他の東、西、南と会合を開く場合がある。事は...重大だ」
本来ならば国王ではなく、せめて宰相が行くべきだろう
だが、その宰相も北国にいる
ナギが言うはじき出されたという現象によってあちらに護衛として送った影が悉く帰ってきてしまった
―――魔女
これが今回のキーワードだ
ナギの報告がある以上
魔女の事も気になる
(だから余計に、俺が行かなければ意味がない)
「ではせめて...護衛は万全になさってください」
「そのつもりだ」
目をシドへ向ける
視線に、意味を理解したのか一礼して出ていった
これからシド率いる選ばれた騎士団が集められる
「影は置いていく。王と精鋭の騎士が不在ということが万が一にでもばれれば厄介だ。」
その言い分に女官長は深く頭を下げた
きっと、ナギは置いて行かれることに怒るだろう
「陛下」
「なんだ」
話は終わったと思っていたが...
何やら言いたそうな表情を浮かべる女官長に、発言を許す
「チェルファンをお連れしてください、流石に私はご同行できませんので」
チェルファンか...確かに腕は立つ
信用もしている
だが...
「いらん」
そう言えば女官長は攻め立てようとする
そこまで心配されるとは、一応国内でも頂点に立てると自負するほどの魔力は有しているはずなんだがな
「別に、戦争にいくわけではないんだ。チェルファンは余も信頼している、だからこそ置いていく。お前たちはいつも通り王が不在であることを周囲に気づかないよう生活をすればいいんだ」
あまり納得はしていない様子だが、これ以上あれこれは言わないだろう
「陛下、先程使者を送りました」
そう言って現れたシド
仕事が早いのは助かるんだが...
「使者を送る前に、一度ここへ寄って欲しかったのだがな。まあいいか、気を付けろと言葉をかけるだけだったし...証明パスは持たせたか?」
「陛下の労いの言葉、私の口からお伝えしましょう。それと、証明パスはきちんと手渡しました」
(知ってるか、それ一応王命を無視したのと同じだからな...別にいいけど)
女官長に下がるよう指示する
再び執務室はシドと俺の二人だけとなった
そういや、使者にいつ視察に行くか伝えていなかったな
....シド、流石に何年も俺の側近をやっているからわかったのだろうか
「シド、視察の日程を使者に伝えたか?」
やはり行くとなれば1週間後だろうか
その間は北国のことをもう少し詳しく調べる必要があるな
「はい、陛下が時を争うと仰っていたので使者到着より明日―――――翌日には伺うとの旨を伝えよと使者に言伝ました」
出た言葉はあまりにも衝撃的だった
そして、今度は陛下の絶叫が響いたのは言うまでもないだろう
陛下がへたれになって、冷酷になって、へたれになって終わるという展開。
文末は前回の陛下視点と似たように作ってみました。
ここまで読んでくださってありがとうございました