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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第4章
83/151

一大事‐SIDEオルダンテ‐

オルダンテ、ジル殿下の弟

絶賛病み気の視点です


忌々しい

どうなっている!



足早に執務室へと向かう

重々しい扉の奥には既にこの国の重臣たちが揃っていた


何故こんなにも急いでいるのか

それは、数分前に遡る


――――――――――

――――



金属が擦れるような、ガシャガシャと耳触りな音がこちらへ向かってくるのが分かった

僕の手の中で音も立てずに眠る愛しい愛しいフィアナ



外にいるからだろうか

フィアナの体温が腕から伝わってこない



(早く自室に戻って暖を取らないと...風邪をひいてはいけないからね)



そう思いながらフィアナを撫でた



先程から近づいてきていた音がよりはっきり聞こえてくる


その音に反応してフィアナがゆっくりとした動きをしながら起きた


僕の中でどす黒い感情が広がり始めた

それでなくても今のフィアナの聴覚は人間の何倍もあるのに、そんなに大きな音を出して僕に近づいてくる馬鹿はどこのどいつだ?





ガシャ


僕の背後で五月蠅い音を立てていたそいつは止まった



すると腕の中で静かにしていたフィアナが体を捻って僕の腕の中から飛び降りた



そして、そのままどこかに行ってしまった

馬鹿フィアナ!体があんなに冷たくなっている状態でどこに行くつもりなんだ?



慌ててフィアナを呼びとめようとすれば

背後にいたそいつが僕に向かって話始める



「オルダンテ殿下!至急お耳に入れたい事が御座いま「おい、誰が発言を許した」」



僕の機嫌は急下降中

せっかくの休憩を、しかもフィアナとの貴重な時間をコイツに邪魔された



なによりフィアナが心配だ

.....だが、こいつはそれも阻む



最終的には発言の許可も与えていないのに勝手に話始めようとする


馬鹿か、この男

前王である父上が認めただがなんだか知らないが所詮平民出の騎士が、図々しい


本来ならば僕の目の前に現れることすら叶わない塵屑ごみくずのような人間が...



軽蔑の眼差しで見つめる

本来ならばこのまま切り殺したいところだが


「僕とフィアナの邪魔をするくらいの急用なんだろう?大目に見てやる、何用だ」


寛大な僕はこの男の話に耳を傾けることにした


フィアナにも一応護衛は常についている

何かあった場合は直ぐに知らせてくれるだろう



ああ、もしもフィアナに何かあったらこいつを殺す理由にはなるな


そんなことを考えていた僕の耳に

恐ろしい内容が飛び込んでくる



「申し上げます、帝国より使者が参りました!明日、アルファジュール帝国の現国王


――――――ア...アレ、アレン・アルファジュール皇帝がこちらに視察に来る模様です!」



「....なんだって?」


まさか、と思った

何の冗談かと



「は、はい。先程帝国より竜騎士とみられる帝国の軍服を着た使者が現れました。国境の門番の許しなく上空からの不法入国を本来ならば咎めるべきだと思いましたが、相手は使者としての証明パスを持っていたことから謁見を許可致しました。」



「まて、誰の許しで謁見を許可した!」



証明パスがある以上咎めることは出来ない

それは5国の決まり事だからだ



しかし、その後の適切な検査と審査を受けなければ本来謁見は叶わない

他国の使者を信用できるかといえば、それは無理な話


謁見とはその国の王と直接話すことになる

周囲に多くの護衛を置いても決して絶対安全ではないから



それ以前に、だ

僕の耳に入る前に僕に断りもなく許可するなどどういう事だ!?



目の前に傅く騎士は恐る恐るといった声音で再び話始める


「お、恐れながらこの使者の話を伺ったのが丁度アンナ殿でいらしたようで....使者の言伝を預かり返事をしたとのことです。我々はアンナ殿からの指示で王宮内にいる殿下を見つけ次第報告し、至急殿下を執務室へお連れするようにと命ぜられました」



(――――あの女狐)



僕の下に何の抵抗もなく着いたと思えば

早々に余計なことをしてくれる!



何か裏があるのか?

いや、それよりもこの忙しいときによりにもよって帝国の、しかも王が視察だと?



しかも....明日

馬鹿にしているのも、侮辱しているにも程がある



確かにこの国は帝国には敵わない

だがこんなにもあからさまに上下関係を見せつけられるとは思わなかったよ



「執務室へ向かう」


「はっ、仰せのままに」



頭のキレる女だと、過大評価しすぎたようだな

あの女への罰則も考えなければならない



本来ならばあり得ないことだが、この時ばかりは荒々しく足音を立てながら執務室へと急いだ


――――――――――

――――



扉を開けると一斉にこちらを向いた

僕が席に着くが、誰一人として口は開かない



「どうなっている、アンナ!」



殺す勢いでアンナを睨みつける

だがこの女は気づいていないような素振りを見せながら淡々を話し出した



「あちらへ潜り込ませている間諜の情報によると、帝国側の国王は何やらこちらを危険視しているのだとか...先日のヴィンセント前国王陛下が崩御したことによりこの国は些か不安定な状況。治安の悪化が懸念される中で、あちらはこの国の次期王を見定めるおつもりです。今回の視察は、表向きは両国の繁栄拡大目的での話し合いですが実際はこの国をどう扱うか見極めるのが目的かと思われました」



そこまで言うと

周囲から次々に罵声が飛び交い始めた


「図に乗りおって!」

「我々を傘下にしたつもりか!?」

「青二才が随分としゃしゃり出るものだ!!」



(五月蠅いなー、なんでそんなに怒るんだよ。確かに帝国の明日視察に来るって申し出は正直僕らを馬鹿にしているけれどもうアンナが来訪を受けた以上どうしようもできないんだから適当にあちらと話をつけて帰ってもらえばいいじゃないか)



「オルダンテ殿下!このままでは我々の国家の威厳にかかわりますぞ!」

「そうです!こちらが腰を上げないことをいいことに帝国が付け上がり始めています、ここは一度我が国の威厳を見せつけるべきでは!!」



重臣がそんな事を言えば周囲にいた他の重臣たちも口々にそうだと賛同の声を上げる



「五月蠅い!」



そんな彼らを一喝する

馬鹿みたいにギャーギャー騒いで、本当にはしたない


静かになった一室

「それよりも、まだアンナの報告は終わっていない。最後まで聞いてから口を開け」


そう言って視線をアンナに向ける

目で合図すれと再びアンナは口を開いた



「謁見の許可は失礼ながら私が許可致しました。皆様の考えも重々理解しての事です。使者の不法入国だけでなく視察が明日という一国の相手に対する無礼を咎めることをしなかったのですから。しかしながら、この機会を逆に逃してはいけないとの判断をしました。」



「機会だと?」



「その通りに御座います殿下。あちら側は今回の視察で、こちら側を見極めるつもりです。つまりは帝国は次期王を、次期王として認めるか否かを決めるはず。なんとも腹の立つ考えではありますが相手は帝国、侮ってはなりません。穏便に過ごすが吉だと考えました。そして、殿下がいかにこの国で才ある人間かを証明する絶好の機会だとも思いました。帝国や周辺国だけでなく国内の民にも、前陛下の判断ではなく魔女様の恩恵を受ける殿下が正しいのだと知らしめるよい機会だと...」



そこまで言って頭を下げた

ふん、一時は馬鹿な女だと思ったがそれも思い違いか


(兄上の下にいるのは勿体ない女だ、僕の下について正解さ)



周囲の重臣もアンナの言い分に納得した様子

さっきまでの喧騒から打って変わって、今度はいかにして穏便に済ますかについての話し合いが行われた



「では、明日の帝国視察団及び国王視察は最高の礼儀と我が国の威厳をもってしてお出迎えしようか」



「「「仰せのままに」」」



そこで今日の騒動はどうにかおさまった

扉を出る際、アンナと目が合った


「今後の活躍も期待している」


「勿体ないお言葉です」


深く女は頭を下げた

使える、この女は使えるよ兄上!


吹き出しそうになる笑いをどうにか堪えて部屋から出た


「アハッ、あはははっ!!」


急に笑い出した僕に周りにいた何人かの護衛が驚いていたけど気にしない



それよりも...

「フィアナは、大丈夫かな?」



僕は再びさっきのフィアナと別れた場所に足を動かし始める




――――――この後起こることを僕は予想だにしなかった

僕が僕であり続けることのできる時間は、そう長くはないことに僕はまだ知る由もなかった

十分な帝王学を学んでいない弟の愚かな考えは、恐ろしいですね


そしてアンナとは...?

ここまで読んでくださってありがとうございました

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