≪閑話≫魔女達の日常
謹んで新年のお祝いを申し上げます
読者様一同には幸多き新春を迎えられたことと存じます
旧年中は格別の御厚情を賜り、誠にありがとうございました。
本年も昨年同様、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
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と、いうことで新年一発目は魔女達の魔女達による魔女達のためのお話とさせて頂きます!それでは、どうぞ
「ミアン、ちょっときてー!!」
それは朝一番の声から始まり、後に私を不幸のどん底まで落とす悪魔の声だった
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ミアンと呼ばれた少女は声の主の元まで駆け寄った
年齢は4,5歳といったところだろうか
まだ幼い可愛らしい少女
しかしながらこの少女、周囲の同年代とは明らかに違う点があった
「なあに、朝からそんなに大声出して。みっともないからやめて頂戴」
少女を呼んだのは大層美しい娘だった
紅の髪をし、燃えるような焔と銀を併せ持つ瞳の女性
そんな女性を少女は睨む目つきで喰いかかった
美少女、しかも幼い彼女からみっともないと言われて精神的ダメージを受ける女性
「ミアンの言う通りだ。ルーゼは馬鹿だな」
紅蓮の女性はルーゼと呼ばれているらしい
そんなルーゼを馬鹿と呼んだのもこれまた美しい女性
赤銅の髪と琥珀色の瞳を持つ者だった
しかし美しいがいかんせん言葉がガサツなためか少々近寄りがたい雰囲気を醸し出している
「なっ、馬鹿だと!?ユシュカは知らないんだな、馬鹿と言った方が馬鹿なんだぞ!」
自信満々に言うルーゼ
そんなルーゼに対し呆れた視線を送るユシュカと呼ばれた女性
「呆れたー、そんなん俗世が考えてる発想でしょーに」
ふんと鼻で笑うユシュカ
ルーゼを相手にする気力も失せたのか一瞥して何処かえ消えてしまった
そう、消えた
しかしながら彼女達にはこれが普通
急に消えても別に驚くことは無い
「ミアンはどう思う!?」
「どうでもいいんだよね。それよりなんで呼んだの?まだ寝たりないんだけど」
我干渉せず
そう言いたげな表情で少女は言い放った
「あらあら、朝からそんな無愛想な顔しちゃだーめ」
横槍が入る
突如現れた女性はフワリと少女を抱き上げた
「リーナ姉さん!おはよう!」
少女は抱き上げた女性に抱きついた
うふふ、と花の綻ぶような笑顔でミアンを抱きしめる女性
少女の肩に女性の長い髪がかかる
藍色の深い純粋な色
「そうそう、ミアンは笑顔が一番素敵よ」
女性はミアンをそっと引き離し目を合わせて笑った
その目は、碧銀の瞳をしている
女性というには少々若いが、少女というには大分大人
リーナと呼ばれた女性は数分間少女を抱きかかえていた
「あら、おはようルーゼ」
そして今気づいたかのように紅蓮の女性に挨拶をするリーナ
「...いいよ、リーナはミアンが大好きでミアンもリーナが大好きなことは周知の事実だし!おはよう」
少し悲しそうな表情
そんな表情をしても彼女達はけして慰めたりはしない
これもまた周知の事実だ
紅蓮の女性はそういう星の元に生まれてしまったのかもしれない
「朝から騒々しい声に末の子が懐くわけなかろうに、ルーゼも学ばない頭をどうにかしないとね」
「ふふ、おはようアネッサ姉さん」
「――――はよう」
扉を開けてやってきたのは艶やかな色気を持った女性
黒髪に漆黒銀の瞳を持つアネッサと呼ばれた女性からは他の女性たちにない貫禄のようなものがある
アネッサに朝の挨拶をするのは上からリーナ
そして不貞腐れたような可愛げのない挨拶をしたのはミアン
アネッサはミアンに視線を送る
暗にもう一度挨拶をしろと言っているのだ
それを知ってか知らずかミアンはそっぽを向いてしまった
その様子にアネッサはため息を零す
「アネッサ姉さんおはよう、ミアンはどうしたの――――――って、ああ」
ミアンの様子を気にするも、そう言えばと思い出したような表情のルーゼ
「たったあれだけのことで拗ねるだなんて、餓鬼だねぇ末の子よ」
「たった!?少し礼儀がなってないだけで魔物の沢山いる場所に放置する!?しかもアッシュまで道連れにして!御蔭でアッシュ怪我したんだよ?」
そう、少女は昨晩アネッサの手によって魔物の森へと落とされた
人質は少女の護り人であるアッシュ
彼を助けたければ魔法は一切使わず魔物を倒し10分以内に彼の居る洞窟まで行くことが条件だった
これも、普通の人間なら驚くを通り越して失神するだろう
なんせ魔物に魔法を使わないと云う事は防衛する術をしないということだから
しかし...彼女たちは違う
「魔女ならば、自然の恩恵に肖り駆使しなさい。修行が足りぬ末の子が彼の護り人を傷つけたのだよ」
魔女
それは生きた歴史と呼ばれる半不死身の存在
魔女は世界を創造する柱を担う
だからこそ人ならざる存在
魔法だけでなく自らの世界の力を有することができる
そんな魔女だが、ミアンは自然の恩恵をうまく操ることができなかった
「みんなみんな沢山集まってくるんだもん」
そう
決して才能が無いわけではない
むしろミアンは有り余っている
自然に好かれ過ぎるのだ
だから恵みの雨が欲しいと願えば水の精霊が洪水の如く雨を降らし、日向ぼっこがしたいと願えば光りの精霊によって日照り続きになる。
杞憂の表情を浮かべるミアンの頭に優しく手が置かれる
それは、ルーゼのものだった
「コントロールするのが難しいんだね、大丈夫そのうち慣れるよ」
「うふふ、本当に無責任な発言しかしないわよねールーゼは」
本人は褒めているつもりなんだろう
しかしそんなリーナの発言に傷つくルーゼ
「末の子はこの世界の核に一番近いのかもしれないね、だから魔女の証をそんなに多く持っているんだよ...確かに無責任極まりない発言をしているけど強ち外れでもない。もう少し自然と戯れる時間を作りなさい」
そう言ってアネッサはフラリと外へ行ってしまった
ミアンは思う
まるで母親のようだ...と
叱るし褒める
アネッサが出ていった扉がちゃんとしまっていなかったようで、3人のいる部屋に風が流れ込んできた
その風に少女の髪が靡く
朝に翳され煌々と光る銀色の髪
そしてルーゼを見上げる瞳は蒼銀色
全身で魔女の証である"銀"をその身に宿した少女
他の魔女より、異質の美しさを持つ少女は言う
「.....で?結局朝っぱらから私を呼んだ理由はなんだったの?」
彼女たちの朝は気まぐれな猫のよう
一人一人が誰かに多大な干渉をするわけでもなく個人を尊重する
後にミアンは護り人であるアッシュと共に森で遊び始める
沢山の命と、精霊と戯れた
その数か月後
彼女たちの日常が大きく変化し始める
森での斬撃
それは助言者であるアネッサを後悔の渦に巻き込んで...
だだ言えることは
彼女たちの日常は、それはもう堕落した生活を送っていたということだ
と、いうことで微妙でしょうか?
すいません←
こんな感じで、実は一番弄られ役は南の魔女コルデロ・ルゼラなんです。
天然な東の魔女、ダルマスタ・リヴァナウロ
ガサツでクールな西の魔女、コークス・ユシュカ
皆を纏めるお母さん北の魔女、バルブレロ・アネッサ
そして淡泊で以外と素直な中央の魔女、ミアン・レテェシェフォード
ここだけの話、ミアンの本名を打つときが一番面倒です←
小さいエとかエとかオとかすごく面倒(._.)
それはともあれ
新年一発目、ご愛読の程ありがとうございます