潜入捜査その1
そろそろ陛下も出さないと...
この物語、タグに逆ハーって出ているのに未だ逆ハーレムにはならず...←
いや、王道で行きたいんですよ
右斜めを目標に
物語の終結に向けて更新を進めている一方、付箋を貼り過ぎて少々筆が進まないのもまた事実
っと、とりあえずどうぞ
コンコン
木の扉を数回叩く音がする
(ロードさんかな)
日はすっかり昇っている
そろそろ皆活動を始める時間だ
「はーい」
返事をしながら扉の前まで急ぎ足
なんでかって?
コンコン....コンコンコンコン....ガッ!ガンガン!
途端に叩く音が荒くなった
随分朝から粗ぶっているもんだなあ
ガチャ
―――――ドン!
擬音ばかりで申し訳ない
しかし、擬音でしかこの状況を明確に表す術がなかったのよ
説明するとこうだ
最初は優しく扉を叩いていたにも関わらず、私が中々返事をしないからまだ寝ているものだと勘違いしたロードさんは、私を起こそうとした
そこで一つの問題が発生
紳士たるもの淑女の部屋に無断で入ることは許されない
ロードさんはマナーを守っているからこそ、私を起こせない
この宿、主人はそんなに優しくなくて自分で起きて自分で出ていく方式を経営理念に含めているらしい
余計なことは言うくせに
案外冷たいのね
となると、部屋に入れないロードさんは叩くということで自己主張ならぬ起こし方という手段をとった
叩く音がエスカレートしていく
面白くて放置していたら、今にも扉をたたき壊さんばかりの音になったので慌てて返事をして扉へと向かった
――――ま、ここまでは私が悪いとしようじゃないか
ただし....
「案外近くにいらしたのですね、ランウェイ様」
額を抑え眉間に皺を寄せるロードさん
扉は外開きだったのを忘れていて思いきり開けたらなんと目の前にいたロードさんの額に扉がジャストミーーーート!!
いい音を頂きました
少し赤くなった額を見て思わず零れそうになる笑いを咄嗟に手で押さえ堪える
「―――――あなたに対して淑女という概念を少しでも抱いていた自分が恥ずかしくてたまりませんよ。一から躾けし直した方がいいのかもしれないですね」
そう言って意味深に笑う
笑顔とは単に嬉しい時に見せるもの、そんな考えを打ち消してくれるようなくらい怒った笑顔
人はどんな時でも笑顔が作れるようだ
――――――――
――――
「で、今後のことなのですが...」
気を取り直して私の部屋
特に双方とも朝食はいらないとの判断で今後の計画を目下話合い中
木でできた簡単な椅子
それに私とロードさんは向かい合う形で座った
シミひとつない肌理細やかなロードさんの額に先程の傷は無い
いつの間にか治癒魔法で治してしまったらしい
なんとも早業
むしろその位の怪我なら自然治癒に任せろよ...と言いたかったけど空気を読んで自重
既に今後の動きについて計画していた私はすかさず案を出す
「―――――――私を猫にしてください」
と、このフレーズだけ言ったことに激しく後悔
絶対、十中八九これだけを聞いた人は勘違いをする、若しくは理解しない
案の定それは賢いロードさんにも伝わりはしなかった
なんだこいつ、的な目で私を見ている
その眼差しが今までにないくらい....痛いです、はい
「こんな時に何を言い出すかと思えば、貴女は本物の馬鹿ですね。それともあれですか、このくそ忙しい私を翻弄しているおつもりか?確かに"夫婦"設定など馬鹿げたこともしましたがそれも理由があってのことです。......おめでたいのは脳内だけに留めておいてください」
(なんて散々な言われようなんだ、確かに私が補足しなかったのもいけなかったよ?でも、それをそんなに言わなくたっていいじゃないのさ!!)
「すいません、本当にすいません。私の言葉足らずで申し訳ございません。もー本当に申し訳ないと思っているのでそのよな目で私を見ないでください説明しますから!」
息継ぎをしないまま口早に言う
それだけロードさんの私に対するものが酷かったのは言うまでもないだろう
「何故、猫なのですか?」
怪しいものを見るような目で私を見つめる
うう、なかなか酷いもんだ
「この国に入ってずっと思っていたのですが、なんだか治安が悪すぎじゃないですか?前国王が崩御なさったのは私でも小耳にはさむ程度ですが知っています。幸いにも前国王は大層聡明な方なので次期王も既に指名しているとか....まだ戴冠式は行っていないようですが、いくら王が不在とはいえあまりに物騒です」
私の考えにロードさんは真剣に耳を傾けてくれた
最初はそりゃー冷たい眼差しだったけど、しっかり聞いてくれているようで安心
さらに続ける
「活気もさしてよくない。それはつまり国民を統括する王宮で何か起こっているからなのではないかと私は推測しました。まさか変装をして入るなど無謀すぎるので....いっそのこと魔法で動物になっちゃえばいいんじゃないかなーと思いまして」
我ながら頑張った
案を出すのはいいものの、実際言い訳なんて考えていなかった
即席アドリブ
ロードさんの反応が怖い
「―――――まあ、その推測を立てた事は褒めましょう。その通りです、この国の歪は王宮内で起こっていることが原因でしょう。それにしても、猫ですか....貴女、なぜまた猫なんて在り来たりな動物にしたのです?」
この男は人を上げて下げるタイプだ
自分最高、と思ったのもつかの間鋭いところをついてくる
きっとロードさんは知っている
ジル殿下から聞かされた内部の混乱についてその一部始終を誰かに既に聞いているらしい
猫に反応するのがいい例だ
そして歪の原因が王宮であることも、掴んでいる内容らしい
さて、今度はどう言い訳すればいいんだ
素直に言ってしまうか?
「何か、知っているのですね?」
私が答えないことにさらに追い打ちをかけるロードさん
何もしていないのに尋問にかかっている気分だ
いや、実際何かはいろいろしているけどさ!
「実は――――――――前国王の息子2人、特に次期王であるヴィゾーネ皇太子殿下は猫がお好きだという噂を耳にしていたので!王宮に何匹か居るという噂もあります!一匹くらい紛れ込んでも絶対ばれませんよ、ええ絶対!!」
気迫で押します
ジル殿下が猫を好きなのか正直全く知らないが、今は嘘でもなんでもいい
とりあえず、無理矢理だけど....無茶苦茶な言い訳しました!
「ボソッ、俺の深読みか―――――楽観的な脳みそではありますが、試す価値のある内容かもしれないですね」
何か考える仕草をしたものの一瞬にして笑顔になる
何かにひらめいたような表情だ
(しかもオッケー頂きましたぁぁああ!!)
心の中でガッツポーズ
ロードさんが今の会話で何を考え、何をひらめいたかは分からないけどこれに便乗しない手はない
「ほ、本当ですか!?」
「ええ....貴女の案でいきましょうか」
ジル殿下、貴女の願い....叶えられそうですよ
殿下の言った通りの"猫"になってね!
ロードさんが言った夫婦設定、彼は嘘をつきました。
理由なんて本当はないくせに←
彼が楽しみたかったから作った設定なんですよね、本当は
それに、少しだけネタバレですが
ジル殿下は猫より犬派です(-_-;)
ではここまで読んでくださってありがとうございました