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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第4章
70/151

その眼光は‐SIDEジル‐

大変長らくお待たせいたしました

一度すべて書いたのに消えてしまったので、少し話が短いかもしれないです


悔しい(涙)←



温かみの消えた冷たい瞳

その眼光は、恐ろしいほど暗かった




―――――――――――

―――――



月光を背に現れた少女

どうしてこの場にいるのか、この少女は誰なのか


それは直ぐにわかった



俺と少女の間

まるで砦の様に、少女を隠すように長身の青年が現れた





新緑を思わせる緑色りょくしょくの髪と、澄んだ黄褐色の瞳


(精霊...か?)



「おっと、不躾にこの方を視界に入れることは許されませんよ。」




そう言って更に少女をおのが背に隠す青年

その青年はどう見ても人間ではなかった



俺自身魔力を持つ端くれとしてその位は分かった

この精霊が人間に使役される程弱くはないということも...




と、なると気になるのが青年の後ろで守られるように存在する少女



風が室内を吹き抜ける

同時に見えた、風に靡く銀色の髪



(まさ...か)



先程の銀は見間違いではなかったというのか

闇夜に包まれて尚鈍く光る銀は確かだった




青年を前に咄嗟に行動する

今は俺のプライドや見栄なんて目の前の存在には意味をなさない



普段掃除の手が入ることが無いその無機質で温かみのない薄汚れた地面に額を擦り付けるかのように傅く




たった一瞬見ただけなのに

軽率な行動をする



核心が無いのに易々と頭を下げるでもなく、傅くとは一国の王族が簡単にとっていい行動ではないとわかっていた



しかし、何か確証に近いものを俺は感じ取っていた




そしたらどうだろう

精霊に守られるかのように背後にいた少女が俺の目の前でそっと手を差し伸べて下さった



見上げて交わる視線

近くで見ないとわからなかったが、銀色の瞳に薄らと蒼が混じっていた



まるで深海を思わせる瞳

見入っていると、その蒼銀の瞳は弧を描いた



(しまった)




まさに苦笑

自己紹介を促されるなど恥さらしだ...



自己嫌悪に陥りながらも最低限度の挨拶を口にする

そうすれば、幼い風貌の魔女はミアと呼ぶことを許して下さった




それだけではない

対等に話がしたいと仰られた



しかも俺にはその権利があるらしい


「――権利、ですか?」



不敬にあたる行為だと承知している

魔女に質問、まして許されていないのに発言するなど言語道断



しかし少女の様な魔女はそんな俺の行動をやんわりと流し教えて下さった




正直、甘く見ていたのだ

目の前にいる魔女のことを




それは300年の時を経て再会を果たした大地の魔女との会話でも思った

抱擁を交わす二人はまるで母と子の様



確かにその後の会話で少女は貫禄のある表情をしていたが

甘えるような瞳に可愛らしいとさえ思った




緊迫した空気を壊すかのような声音で俺に意見を求めたとき

不覚にも間抜けな声を出してしまったのだって、少女に油断していた証拠だ



この場合"少女"と魔女を呼んでいるあたり

きっと軽く見ていた証拠でもあるのだけれど....





大地の魔女がその少女に説教をするような様子は本当に親子のようだった



精霊も軽口を叩くほど柔らかな空気

一種異常な状況であると理解しつつも俺は




「――――くっ...はは!」


堪えきれず笑ってしまった

本来ならば絶対にしてはいけない



「ちょ、笑わないでくださいよ!」


しかし必死になっている少女を見て笑わずにはいられなかったのだ


どう見ても普通の少女だ

敢えていうなれば容姿の整った少女


「ははっ...も、申し訳ありません」



幾分か年下だとわかる風貌にほかの二人には無い親近感の様なものも感じた



だからこそ、話した

今に至るまでの内容を嘘偽りなく


そう、嘘は言っていない

そして3人の反応を伺った


静寂を破るかの如く響いた一声

冷気を纏った冷たく地を這うような声だった



「そうですね―――――汚い、汚らわしいわ」



声は少女のものだった

驚きはしたものの今まで王宮で政敵からの嫌悪の言葉を浴びせられてきた自身にとってそれ程恐ろしいとは感じなかった




甘く、見ていたのだ

少女が西の国について話し出したとき思わず凄んでしまった



(俺だって馬鹿じゃない。確かに何の抵抗もなくここに来たが、それだって考えている。打算があるわけではない、それに関しては軽率な行動をとったものだと理解はしている。しかし、この状況で自分にできることを考えるのも正しい選択のはずだと思ったんだ)



そこでも少女は怒るでもなく微笑んだ

だから思わず真実を話してしまった




「――――あの女性は、既に死んでいる」



精霊王のくだりでは各々がそれぞれ思うことがあったのだと思う

それは俺自身もそうだ



だが、ここまで来ているのに核心的な疑問が声に出ない

焦燥が募る


もやがかかったかのように霞んでいるのだ

それは他の2人もそうだった



「何故、精霊王は己を呼ぼうとした人間に自ら罰を与えなかったのか」



一人を除いて...


少女の内容で今まで散り散りになっていたソレが一本の糸のように繋がった



(そういうことか。しかし、自分の見解はきっと目の前の3人を愚弄することと同等な程の内容だ。迂闊に言うことは出来ない)




ならば....




「―――――貴女方を愚弄するつもりは毛頭御座いませんが、私の見解を聞いては頂けないでしょうか」



先手必勝、言ったもん勝ちとはこのことを言うのだろう



「失礼ながら...精霊王様が、関与している可能性があると私は考えました」


馬鹿だとは理解している

精霊王がこの内容に一枚かんでいると言ったのだから


「――――へぇ」


数秒の間をあけて何かに納得するかのように少女は頷いた


―――立ち上がり今にも殺さんと殺気を向ける精霊の手を掴みながら

分かっていたつもりだ


彼の王を愚弄、侮辱したのだから

それでも精霊から発せられる殺気に身が竦んだ




そして目の当たりにする



「不満か?我にそのような態度――――――――――消すぞ」


温かみの消えた冷たい瞳

その眼光は、恐ろしいほど暗かった


何故だ、先程まで楽しく会話を共にしていたではないか

どうしてだ、あんなにも親しく微笑み合っていたではないか



何故、どうして....消すなどと末恐ろしいことを言ってのけるのだ



自身でも驚いたが

俺はいつの間にか口を挟んでいた



すると、精霊を見ていた少女がこちらを向く



それは先程までのあどけない表情をする少女ではなかった

ゾッとするような瞳



表情のない顔

それを見てわかった



(なんて....愚かな)




そもそも俺は人間ではないか

目の前にいる最上級とも取れる精霊、残滓となった大地の魔女



そして氷を具現化したかのような少女...いや、時の魔女



本質的な意味でこの世界を支えているのは誰だ

紛れもなくこの御方だろう



(絶対不可侵なのだ)




非現実的な状況に俺は酔っていたのだ

対等に話せると揚々としていたのだ



しかしどうだ

対等に話せるのはそれを許されたからだ



そのような関係になったわけではない


これがたかが人間と

創造主たる魔女の違いだ



王族とはいえ人間

そう、彼らから見れば人間という一枠で纏められてしまう



無知で幼い少女ではない

確かに上に立つものとしての覇気があった


それは父上と同じだ

つまり、長年培ってきた経験が無ければそう現れるものでもない



―――――300年を生き、今尚若く瑞々しい魔力を内に秘める"生きた歴史"なのだ



途端力が抜けるのがわかった

正直、意識を失いたいくらいだ


しかし現実は甘くない

俺が顔を青くしているにもかかわらず話は進む


先程までのあの冷徹なまでの眼光はどこへ行ったのか

優しい眼差しで首をかしげる様は本当に愛らしい


あの殺気を当てられ声が出ない状況なのに

違うのかと問われ無理矢理声を出す



「い、いえ。全くもってその通りです」


若干声が震えた

妥協して欲しい



既にキャパシティーが限界まで来ているのだ

苦笑している時の魔女をみて、夢だと思うことぐらい許してくれるだろうか




くっはー、やっぱり短かった(苦笑)

一度書いたのに消えるとか、本気でやる気失せますよね←



が、しかし頑張りました

この回がないと次に進めませんからね(-_-;)


今回はミアがミアンであることの再確認でもありました

ただ優しいだけのミアンではないんです、本来は人が死のうが生きようがなんとも思わないような子ですから(-_-;)


ちなみに澄んだ黄褐色とは琥珀色のことです

鼈甲飴べっこうあめをご存知でしょうか、そんな色ですよ



ここまで読んでくださってありがとうございました

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