月下の塔
ここはあえてロードさん視点を入れずミアンさんとフゥ君のターンで...
それでは、どうぞ
虚空の中、それは一際目立つ塔
この場合は塔というより巨大な洞窟ね
一瞬にして私達は目的の場所にたどり着いた
声がずっと私達を呼びかけていたからこそこんなに早くたどり着けたんだけどね
「人間は全部で15人ってところだ」
塔を囲むように衛兵が立っている
馬鹿ではないので正面からこんばんわなんて言って登場はしない
「上に行きましょう」
声は上から聞こえてきている
目の前にいるからだろうか、すごく強い念
さっきよりも感じる
呼んでいるってことを...
「了解」
ゴオっと唸りをあげ風が渦巻く
時間にして数秒
近くにいた衛兵は突然の風に驚きはしたものの大して動じることもなく再び視線を前方へと移していた
――――――――
―――
「ここまでが近づける限界。見えるだろう?強力な結界が施されている。人間技じゃない、純度と質と量がすべて一定...魔女にしか扱えない魔力だろう?」
私を抱きかかえたままフゥ君は言う
確かに、これは人間が成せる結界ではないしフゥ君でも入れない
(魔女の呪いだ。―――懐かしい)
そっとなぞるようにその結界に触れる
瞬間、とても暖かい魔力を感じ取った
この魔力は、紛れもなくアネッサ姉さまのもの
「嬉しいわ。嬉しすぎて...過去を思い出してしまいそうだ」
背後から抱きかかえてくれるフゥ君に思わず身を託す
魔女だって感情がある
300年、触れることのできなかった同族の力を目の前に言葉には言い表せない感情が溢れ出た
私の行動に何も言わずさっきより強く抱きしめてくれるフゥ君
いつの間にか大きく強く逞しくなった風の精霊は、心配性だけど私の一番近くにいてくれる
(さり気無いお前の行動が、我の孤独な何かを溶かしてくれているのかもしれないな)
「魔力が戻るまで、俺達は全力でミアンを護る。戻っても、それは変わらない」
暖かい風だ
フゥ君が気を利かせて風を循環させている御蔭だろう
優しい精霊だ
直接的な表現ではないが、要はいつまでも傍にいてくれると取っていいのだろう?
(自分で生み出した精霊はなんとも綺麗だ)
ほんのり心が温かくなったところで、再び脳に声が届く
その声に現実へと引き戻された
「ふふ、辛気臭くなっちゃった。それに相手を待たせてはいけないものね」
今はこちらに集中しよう
やんわりと腕を解き支える体制になってくれる
「頼んだババア、この声をどうにかしてくれよ」
威勢のいいことを言う
こんな子に育てた覚えはなかったなぁ
「ババアは余計だよフゥ君」
そこまで言って、両手をその懐かしい魔力を放つ結界に触れた
俺はそんな可愛い名前じゃない―――とフゥ君が嘆いていたようだったけど時間が惜しいのでスルー
これは魔女による魔女たちだけの為の結界
解くことは容易い、魔女同士なら
魔女以外には解くことは出来ない
魔女の意志のみがこの結界を作り上げるのだから
それ以外の、つまり人間や精霊が触れようものなら弾く
しかも厄介なのが周囲にいた不特定多数の者までも弾かれるってところだ
場所なんて関係ない
この波動とうまく合致してしまったものは全員弾かれる
邪心を持った者が触れれば各々の魔女が持つ力によって死んでしまう
この場合、もしフゥ君がなにか邪な考えを持ってこの結界に触れたのならばアネッサ姉さまの力...つまりは大地の力によって全身が石化してしまうってことだ
(素直な子でよかったわ)
力を同調させながら思う
安堵しつつ、徐々に結界は溶ける様に消えていった
「これで、よし」
案外呆気ないと思いがちだけど魔女じゃなければ死んでしまう恐ろしい結界を解いたの
魔女ってつくづく恐ろしいと改めて実感したわ、って私魔女だけどね
「じゃあ、入るとしますか。五月蠅くていけねーよ」
手を引くフゥ君
今日でこの声とおさらば出来るのだと、心なしか表情がさっきより良い
「そうね」
そう一言言って仲良く結界の中へ入る
勿論、ここにはアネッサ姉さまの御霊があるかもしれない。ほかの人間は入るのは好ましくないので新たに私の呪いを施すことも忘れない
≪お願いだ≫
≪お願いだ≫
「ここ....ね」
空に漂う私達
ある一点からフゥ君を困らせている原因である声が聞こえてきた
そこは最上階の部屋から
そしてこの部屋から強い肌を刺すような魔力も感じ取れた
紛れもなくリーナ姉さんの時と同じ、魔女の魔力だ
アネッサ姉さまの御霊がこの一室にあるとみて間違いはなさそうね
(あー、結界の中には入れてもこの魔力は厳しいかな)
フゥ君が少し苦しそうな顔をしている
それもそのはず、自分より強い魔力に当てられるのは初めてだものね
いくら私の魔力を受け継いでいるとしても、長時間の滞在は好ましくない
フゥ君が私に引っ付いていられるのは、まだ魔力が無い状態だから
初めての体験ってところね、よかったじゃないの
「笑ってないで早くしてくれ」
怒っているけど気の抜けた声音
冗談はここまでにして...行きますか
「じゃ、入るわよ」
私の言葉と同時にフゥ君が風を舞い立たせその部屋のガラス窓を割った
パリン
パリンと耳につく音がする
高いことが幸いして下には聞こえていないよう
窓を割ったことで余計にその強い念と、魔女の魔力が溢れだしてきた
それを全身で感じながら窓へ近づき
そして中へ入った
≪お願いだ、お願いだ!!≫
念を飛ばす相手を漸く目に納めた
と、思わずそこで口元が上に持ちあがる
「随分、念じるのね」
私の声にやっと反応して顔を上げた
ずっと私達に念じかけていた彼は、赤褐色の髪とモスグリーンの瞳を持つ若き青年だった
はい、グダグダだったかもしれません
すいませんです。
ってことで出会いました
いつになったらロードさん出てくるのかなー...
毎度、皆様からのコメントや評価、お気に入りなど感謝尽くしです
本当にありがとうございます(涙)
烏滸がましくはありますが月詠からの質問を活動報告にてさせて頂きました。
ご回答の程、していただければ幸いです。
ここまで読んでくださってありがとうございました