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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第1章
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夜獨その1

よるひとり...と読みます。

難しいね、漢字って←

ハッと働かない頭を無理矢理動かして外を見ると既に暗く深い夜になっていた

放心状態に陥って暫く経っていたんだろう...



私は体を起こして窓の近くへ行った

少しでもその窓を開こうものなら普通の人間なら見えない何かで弾かれる

私は"フツウ"ではないから窓を覆う透明な膜が見えるんだけどね


「300年経っても帝王の呪縛からは逃れられないのねー私」


辛気臭い顔が窓に映る

それは紛れもなく私の顔で...



はちみつ色の髪に琥珀色の瞳

この国では在り来たりなはずなのに、まさか見つかるなんて



(あの男の人は誰だったんだろう)


ふと、疑問が頭を巡る

あの男の人は誰だったのか...分かるのは確かに陛下のしもべであるということと、陛下に限りなく忠誠を誓う者、私の微かな魔女の色を見分けた凄腕さんってとこ




一人の夜は怖い

よくそんなことを近くの村の女の子が口々に言っていた気がする



私も一人が怖い

でも、一人が好きな夜もある


矛盾していると言えばそうなるかもしれない

でも誰しも夜の深みに嵌りたいときだってあるはずだから



昼だけでは明るすぎる人もいる

私は昼を好まない


"魔女"は昼よりも夜を好むから

私たちの時間は夜


(本当なら魔法なんて使えないからこの窓も開けられないけど...)


「新月の夜なら話は別よー、なーんてね」


私はその見えない膜に触れた

感触なんてない


でも、少しヒヤッてする

魔女にできないことはないよー、自分で言っちゃうけどね



あくまで同調させるように力を広げていく

水が波打つようなそんな感じに....優しく広げていく



これは私の魔力じゃない

空気中に漂う小さな魔力をかき集めたに過ぎない


(新月の時は月の光が一切ないから魔力が散り難いんだよねー。魔女にはありがたいわ)



そんなことを考えているうちにその見えない膜はスウッと翳した私の手の周りから溶けていく様に消えていった



「これで良し!」



私はその溶けた膜を抜け、窓から身を乗り出した

窓の奥はバルコニーになっていて不思議な造りになっている



私が完全に出ると窓は既にもとの透明な膜を張っていた

....やるわね宮廷魔術師も。


穴が開いてもすぐに補強され続けるだなんて本当に抜かりないわ


バルコニーに出た私はそのまま白い手すりに上半身を預けるように寄りかかった

白い手すりも夜の色に呑まれている...




「それにしても月のない夜は一層深く常世に続く道になりけり....ね。星ひとつない今夜は本当に一人だわー」



手を上空に翳しても私の手は見えなくて

そのまま消えてなくなってしまうんじゃないかと錯覚してしまう



「――北の魔女は言う

それその力を何にするかと


東の魔女は言う

その力は何を守るかと


西の魔女は言う

守る守るで攻めは無いかと


南の魔女は言う

攻めは無くして何をするかと


中央の魔女は何も言わず

ただただそれその者々を見つめ静かに佇み世の流れを見定める



寄らば大樹の陰の如く

人は柳に雪折れなし



生きた歴史が話すは過去

これはただの戯曲に過ぎず


魔女は詠い歴史を残さん」




私が夜に紛れて小さく歌ったこの詩は

帝国に残る数少ない魔女の文献の一文で....


新月の暗い深い夜に獨の歌が消えていった



逃げられるはずがない

あの綺麗な男...陛下は偶然とはいえ私の真名で契約を促した


その時より私は陛下の従順な人形でしかない


逃げられないのならその契約の1年を静かに過ごそう

誰でもいいからきっと1年経てば新しい人が見つかる


それが、純潔ではないとしても....



(この世に純潔は1人...寂しいなー)                           


別に慣れたといえば慣れたかもしれない

精霊だっているし一概に一人ではないのだから...



でも、できることなら仲間が生きていて欲しかった

魔女にも欲はある


私の笑顔はまたも新月に隠され

寒くなってきた外から身を守ろうと逃げられない檻に自ら入った


膜が溶けて私を包むように、捕まえるように中へと引きこんだ



その後、その膜はやはり何事もなかったかのように透明な膜を張っていた




             

うん、シーリーアース!!

自分シリアス大好きなんですよ、でもハッピーエンド大好きだけどね←


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