思惑の中で―SIDE陛下―
陛下視点ここで登場
流石に陛下の話も入れなければ彼が消えてしまう!的な...
では、どうぞ
「陛下、今月の決算報告についてなのですが―――」
「国王陛下!竜騎士の一人が怪我をしてしまったようで神殿で執り行われるはずの―――」
代わる代わる謁見を申し込む臣下
全て宰相であるロードが行う仕事のはずだった....が
何故かその仕事が俺に回ってくる
―――なぜ部下に回さず俺にまわすんだ、あいつは
ロードとあの少女がこの国を出発し既に2週間
流石に魔女にはまだ会えぬか...
目の前にいる、使いの者をチラリとみて小さくため息
自分の執務のほかに宰相が普段行っている仕事まで回されると流石に疲れる
「決算の報告書は余ではなくその部署へそのまま届よ。怪我をしたものについてはより腕の立つ者を向かわせる」
一通り説明し、その場を流す
正直一人でどうこうできる量ではない
バタン
最後の一人が出ていき漸く静かになった執務室
「何かお手伝いできることは...」
そっと俺に近づいてくるシド
今回はシドでも役には立つまい、こいつができるのは護衛だけだ
「いや、それより少し話し相手になれ」
手に持っている書類を雑に置き近くのソファに身を沈める
「ナギ....居るか」
俺のその言葉に反応しすぐさま目の前に一人の男が傅いた
何処から来たのか、いつからいたのか
帝国屈指の騎士団長でさえその男の登場に身構えることすらできなかった
「ここに、帝王陛下」
(俺を表だって帝王と呼ぶのはお前たちぐらいだよ)
音もなく存在する男に危惧の眼差しを送るシド
しかし俺になにかあるわけでもないので様子を見ている...というところだろうか
「あいつらの様子は?」
その男はゆっくり俺へと顔を上げる
紅の瞳と俺の蒼の瞳が交差する
「なかなか面白い状況ですね。彼らも十分面白いですが、それより北の内部情勢の方が僕的には楽しいですよ」
いきなり砕けた物言いに驚くシド
そのシドのあまり見ることのない間抜けな表情がなんともいいがたいな
「ナギ、シドが驚いている」
「いやーそんなことを申されましても僕、堅苦しいの駄目なので...ね、帝王陛下」
そこで俺に視線をよこすな
純真無垢そうな笑みを見せるナギ
しかし、こいつは俺でも一目置くほどの男
一人称は僕であっても、性格は俺様だろう
「シドも警戒しなくていい。誰も入られない様に結界を張ってあるし、第一こいつに警戒したところでお前では手も足も出せないだろう」
最後の言葉を侮辱とでも受け取ったのだろうか
途端に機嫌の悪そうな表情になる
おいおい、一応これでも陛下の前なのだから悟られないよう表情をかえるな
自分で一応と言うのも悲しいが...
「陛下、陛下直属部隊の我等を甘く見ないでいただきたい」
「でも僕が居たことに気が付かなかったじゃないですか、あの一瞬で僕は陛下を殺すこともできたのですよ」
シドの怒気をさらに煽るかのようなナギの言葉
止めてくれ、やっと執務室が落ち着いたのに
「貴様!」
ほらみろ、シドが怒った
いや...この場合そんな呑気なことを考える前にこいつらの一発即発の雰囲気をどうにかせねばならぬのだろうが
いかんせん目の前で挑発的に笑っているナギから殺意の念は伝わってこない
つまりはシドという堅物を煽るだけ煽って楽しんでいる
まったく質の悪い餓鬼だ
「いい加減にしろナギ。シドもそう怒るな、別にお前たちの部隊を甘く見ているわけでも侮辱しているわけでもない。現にお前たちを俺は頼っているだろう、少しは察しろ」
なんで陛下たる立場の俺がこいつらの仲裁にならねばらん
まったく面倒だ
「それで、ナギ。報告がまだ終わっていないが」
痛む頭を押さえナギを見ればまたもにやりと意味深な笑みを浮かべた
「北の第一王太子殿下、今弟によって幽閉されているそうですよ」
その言葉にさらに頭が痛む
北国の王が崩御してからというもの一気に情勢が危うくなり治安も悪化した
俺たちも一応資金援助はしているが、譲位争いが酷いらしい
そのことは一応あいつらを視察に向かわせる前ロードに確認させておいた
だが、ここまで酷くなっているとはな
このままではそのうち譲位争いで内紛が勃発するぞ
(この状況であいつらを送り込むべきではなかったか)
後悔先に立たず
今更になって時機を見誤ったと思う
「ナギ、あいつらに何か事件に巻き込まれる前に帰国しろと伝えてこい」
「それがですねー、僕急にあの国からはじき出されちゃったんですよ。もう本当に急に!だから彼らもこの国に帰ってきてるのではないのですか?」
―――既に何かに巻き込まれたようだな
ナギの話では、夜更けに強い魔力を感じ身構えた途端
草原に投げ出されていたらしい
ずっと遠くに北国が見えたので領地から弾き飛ばされたのだと推測したようだ
よくよく見てみればほかにも数人
驚きながら放心状態で固まっている者、まだ寝ているものなど様々いたそうだ
(ロードは宰相だ、直ぐに城に戻るはず。それにあの娘とて俺の管轄下にいる以上この国にいればすぐに気づくことができる)
と、なると帰ってきてないことは明白だった
「何もなければいいが」
ボソリと安否を心配する内容が口からこぼれた
....ともすれば、急にナギが思いついたかのような口調で言い出す
「そうそう、もう一つ報告」
チラリと目線だけを送る
仕事とあいつらの生存とが頭を巡り声すら出すのが面倒だ
「あの国に確かにいますよ
――――――古の魔女、純潔の魔女が 」
そう言ってナギは楽しそうに笑った
と、いうことで本日2話UP
ここで遠慮なく陛下視点終わります←
新しく登場です
ナギ君
おいおい登場人物として出しますが、年齢設定16歳です
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました