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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第3章
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女店主その5‐SIDE陛下‐

たどり着けない...女店主へ←

余計な物入れ過ぎなのかな...


だって陛下視点入れないと話がまとまらないし(-_-;)


どうぞ!


「陛下、今夜はもうお休みになられた方がよろしいかと...」



それは俺を気遣っている女官長の一言

幼少期より面倒を見てくれた女官の一人だ




いわば第二の母の様なものだろう

そんな存在にストップをかけられれば素直に従うほかない




周りの目がない今、上下関係は一切ない

...まあ俺が思っているだけだが




「そうだな」




手にしている書類をすべて机の上に投げる様に置く


一枚、風圧で机からひらりひらりと下に落ちた

それを無言で素早く拾い俺に渡してくる




俺はその手を徐に掴んだ





「....何をなさるのです陛下」



俺の突然の行動に若干困惑の色をしつつも顔には出さない




「これはどうした?」



ぐっとその手を反せばそこには少しばかり痛々しい痣があった



俺が落とした書類を拾う瞬間に見えた些細な傷だが、この女はこの仕事でそうそうヘマはしない






(と、なれば不自然なのは明らか)






「...これ、は」




言葉に詰まるのが分かった

月に照らされた彼女の顔がよりはっきりと浮かび上がる



「あ...――――」


言いかけた途端、どこからともなく強い風を感じた

咄嗟に俺は彼女の手を離した




遠くの方で風が唸っているのが見える

精霊の仕業だろうか




ガッシャーン!!

数秒後その風が遅れて俺たちのいる部屋に風圧として届き

耐え切れなかった窓が音を立てて壊れた



「王宮屈指の精鋭が張っている結界を風圧で壊すなんて..」




そんなことを言っていた気はするが、俺はそれどころではなかった


(あの方向は少し不味いな)



壊れた窓に足をかけ後ろに呆然と立っている女官長に指示を出す




「少し見てくる。応援はいらぬ....余計な詮索はするなよ」




「陛下!!」





女官長の声を背に俺はその窓から飛び降りた

普通の人間ならば即死の高さ...だが、俺には関係ない



全身から受ける風の抵抗を拡散させ何事もなく着地する

上を向けばあの壊れた窓はこの一瞬の間に修復されていた



彼女もきっと俺の指示通り余計な検索はせず、明日には何事もなかったかのように振る舞うのだろう





「よくできた女官だ」



小さく笑い目的の場所に足を運ぶ

ここからは歩かなければ歴代の魔法使いが仕掛けた罠に永遠に囚われることになってしまう





咲き誇る花を横目にその場所を目指す


(やはり誰かいるな)



複数の気配だ



近づけば近づくほど気配を感じる

こんな時間にこんな場所に侵入する不届き者は誰なんだろうな





そう思いながら最後の一歩を踏み出せばそこには男が一人立っていた


―――おかしいな、確かに気配が一つ以上はあったはずなんだが...



もう一度見てもそれは変わらない



「誰だ」



我ながら在り来たりな台詞だな

足を止め正面にその侵入者を見つめる




新緑を思わせる髪

....こいつは風の精霊か





なぜその精霊がここに?

いくら魔女が己の母であろうとも、それは中央の魔女だ


水を司る東の魔女は精霊には然程重要な人物ではあるまい



「主がそれを望んでいる」


主だと?

ここにいるのか...?



すると突然もう一つの気配を感じ取った

――ほう...今までこの近距離で気配を消すなど




人ならざる気配だ

が、精霊ではない...いや、精霊なのか?




疑問をぶつければ新緑の精霊はその問いに答えた



しかしどうだろうか

なれば後ろにいるのは精霊王ということか?



(それはないな。精霊王は決して人のいる世界には踏み入れない...ならば誰だ)



精霊を配下にする魔法使いか?

いや、それは人間だしな...



懇願するかのように一言


一国の王が利益なく願うかのように言うのはおかしいがな




そして現れた人物に俺は再び驚く

とても小さい


一見誰かわからないが多分女か少年だろう

背丈がそのぐらいしかない




残念ながら顔が全く分からない

これでもこの国の王なんだがな、俺は


まぁ相手は人間じゃないようなので俺に傅く権利はないか...




もう一度その訳の分からない人なのか人ではないのかも知りえないいわば物体を見る



(ありえるのだろうか)


一瞬、期待が胸を走る

だがそんなはずはないと打ち消す



しかし言葉と頭が反して口にしてしまった


――魔女か、と



あり得ない話ではないが、現実を離れすぎている

精霊が従うのも魔女ならばありうる


それが300年も前なら...の話だがな



その問いに物体は肯定も否定もせず笑い逆に問われた



魔女の存在は昔から信じている

現に、俺は魔女を知っている



嘘も真もあるか

俺がこの目でこの耳ではっきりと覚えているのだから



(一頻り笑い無言を貫いて最後は背を向けるか)



その態度に少々腹が立った

未だかつてこのような扱いをされたのは初めてだ


何様だと思うだろうが

これでも王様だからな




「これはこれは失礼。なれど私も急いでいる...この国の帝王よ、己の立場を弁えそれでも尚自分の考えを持つ貴方は素晴らしい。貴方が存在することによってこの国がどうなるのか少し楽しみになってきたぞ...」



大概たいがいお前も何様だと俺が問いただしたくなる言い方だな

敬う口調なのか見下した口調なのかわからない





だが、そんなこと全部今は水に流してやる




(おいおい)


「―――嘘...だろ」



俺が呟くのが早かったかあちらが早かったか

次の瞬間にはその場に俺しかいなかった




「夢...」



そう思わずにはいられなかった

しかし、下を見ればさっきそいつらが居た場所は草が踏み倒されている跡がある



日が昇る

先ほどの女官のように俺も、呆然と立つ事しかできなかった



あれほど探し求めていたものがこのタイミングでこんな唐突にくるものか



「ははは...面白い」



踵を返し再び元来た道を戻った

帰れば寝る暇などないだろうが、どうでもいい




――――銀の最後の保有者

あれは人ならざる美しさだ






朝露の中

新緑の騎士を連れた銀の...蒼く澄んだ、それでいて絶対的力を表す銀の瞳を持つ魔女




「見つけ出してやる」




居ると確信した今

俺はこれから貴女を全力で捕まえに行くだろう



こみ上げるほどの歓喜を理性で抑え込む






その時、俺は忘れていた

ロードに就かせた魔女と名乗るもう一人の女を...






はい、今回は長くなりました

そしてこの回で陛下はミアンさんと出会うのであります


今回もここまで読んでいただいて本当にありがとうございました

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