ご対面その1
サブタイトル付けるの面倒!!と言っていた私の好きな作家さんの気持ち....早4話目にして気持ちが痛いほどわかりました。
「私魔女なんかじゃないですよ。止めてください!おばあちゃんが待ってるんです」
あの後私は胡散臭い笑顔をする男の人に手を引かれ裏道を少し進んだところに止めてあった馬車に乗り込む羽目になった
いやーこの裏道には似つかないほどの高級感あふれる馬車で...
ま、陛下直々の命令で動いているのならこのくらい凄い馬車なのも納得できるけどさー
(このままじゃ連れてかれるオチよね!?)
焦るものの一度乗った馬車は止まることを知らず...
男の人は私を離さないとでも言いたげにまだ手を掴んでいる
「だから、あくまで候補です」
こいつ理解してねーんじゃねぇの?
みたいな目で私を見る...え、私が悪いの??
(でも、このままだと本当にやばいわよ私)
冷や汗ダラダラで考えるけどなんせこの状況、まともに頭なんて働くはずもなく
進む馬車はついに表道へと出て城へ行くための大通りに出た
明るいところでみるとこの馬車には帝国の紋章が刻まれている
白、水色、琥珀色、紅色...そして蒼銀のダイヤが中心にある帝国の紋章
嫌味か...そう思いたくなるくらい私たちにはいけ好かない形
白は北を意味し、水色は東、琥珀は西を、紅は南、蒼銀は中央を現している
そう、それははるか昔己の先祖が滅ぼした純潔の魔女の色
(虫唾が走るわー、思い出すだけで鼻水ものだわ)
そんな悪態をつきながら静かに馬車で抜け出す方法を考える
この速さで降りることなんてできない
魔法...は使えない
色仕掛けならいける....わけないか
「それにしても半年探して漸く1人とは....魔女探しもなかなか大変です。貴方は今までどこで暮らしていたのですか?」
私の手を握るその男はやや疲れたような表情をしながら問うた
「山の麓で...おばあちゃんと。」
おばあちゃんなんていないけどー...大切なので2回言います
嘘八百ですけど面倒事には巻き込まれたくないんです。
私は小さく声を発した
「へぇ、麓ですか。それはそれは...ここまでよく」
ひぃ!?疑ってるよー怖いよー
男の人は私を疑うかのような目で見ている
そりゃーおばあちゃんと2人暮らしのくせに歩いて2日もかかるここまで物を売りに来るなんて冷静に考えれば変だと思うのは凄く理解できるんだけどさ、それしか使える嘘がないんだもん!!
「近くにお店とかないから....」
「へぇ」
あーん、疑いの目が鋭くなったー
今までここまで聞かれたことがなかったし、こんなに急接近して逃げられない状態で人と話したことなんてないから言葉が思うように出てこないのよ
「まぁいいでしょう。もうすぐ城に着きますから...それまで貴方には逃げないように万全を期して眠っていただきましょうかねー」
にへらと不敵に微笑む男...
意味が分かりません!!
その男は急に私の頭に手をかざした
それはまさしく魔法を使う寸前の仕草で...
(魔法が使えたら今すぐ逃げ出せるのに!!)
今の私じゃ魔法は使えない
魔女だけど今は無理なんです!!
小さく抵抗をみせるも虚しく終わり
ついに魔法は発動する
「ラル・ドゥーラ...いい夢を」
魔女の私が魔法にかけられるなんて笑っちゃう?
しょうがないじゃない、それも全部あのハゲのせいよ
霞む世界
最後に見えたのは爽やかに笑う男の顔だった
(本当に、ついてないわ)
体がゆっくりと倒れる
そこで私の記憶は途絶えた
こ...こんなもので大丈夫かなぁ。