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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第3章
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宰相と魔女その2

「珍しいですか?」


「あぁ、いつもなら俺より先にはこないだろう」



陛下も珍しい

いつもならだれかと話すときでも仕事をしながらなのにこの人と話すときは目を見ている



(案外仲良し?)



憎まれ口を叩いているかのようだけど

そこまで険悪したムードはなくて、むしろ少しだけほんわかと和んでしまいそうだった



と、云うかお前は何様だ

陛下を待たせることもあるような聞こえ方だったわよ





「今回ばかりは言いたくて言いたくて仕方がなかったのですよ。陛下、北に魔女が現れたそうです」




―――途端、陛下の目の色が変わった

先程までの少し優しげな眼は貧欲に何かを捕える強者の眼だ




宰相って国を纏める役目で陛下の手足となり国民の意見をよりよく聞き入れるはずの役職でしょうに....魔女探しが本職になってきたんじゃないの?




「どれ程確かな話だ」


「高いかと...現にあちらに送った間諜の者は北の国の皇太子殿下と並ぶ魔女を見たとのこと。銀を所持していたとか」




明確である

そう断言するロードさん



いつか陛下が言っていた信用に足りる臣下の一人であろうロードさんの話



それほどまでに陛下が魔女を探す理由など見当もつかないけど...陛下の眉間には何本もの皺が刻まれていた



(北に魔女...ね)



そもそもこんな話を聞いてもいい立場なのだろうか



シドさんはいいかもしれない

だって陛下お抱えの騎士団団長なのだから



でも私は立場が全く違う

所詮、1年の契約で偽の魔女として存在するだけの一庶民ではないか



これはもしかしなくてもすべて終わったら殺される感じかしら




と、そこまで考えて止める

あんまりいい気がしない...なるようになればいいさ



どうせ死なないのなら

そう思って私はこの余興にも結局参加したんじゃないの




「お前はどう思う」




それに...

賢帝と言われるだけある素質を持ったこの男と、一瞬とはいえ私の中に銀を見た男



ゾクゾクさせる目をしたあの東の王だってリリーのことだってまだまだ気になる



「聞いているのか」



たった1年しかないのはある意味駄目だったかしら



行く先が気になって仕方がないわ!



....なんて考えてて、陛下が私を呼んでいたとは気が付くはずもなく



「本当に...私の眼は確かに彼女の中に銀があると見たはずでしたのに。取り越し苦労と言うべきか、どうも貴女は魔女ではないようだ」



メーベル


ロードさんが言った呪文が早かったか私が嘆くのが早かったか



「あうっ」


突如私の思考を阻むように水が数滴頭の上から降ってきた



そこで気が付く


全員今私を見ているのだと...



「あ...えっと」


「陛下は、お前に意見を求めていらっしゃるのだ」



シドさんが呆れた口調で教えてくれた

視線は冷たいけど放置されない分助かります



(んー居ないって正直に言う?)



ふふ、それじゃつまらないわ


「居る...かもしれませんよ?純潔ではないけど血を分けた者かもしれない」


「銀を見た、と言っているのに純潔ではないと?」



上がる口元を抑え

いざ発言すれば食いかかってくるのは天敵ロードさん


「私が純潔ですから」


「口を慎め。高貴なる御方だ...今の発言は極刑にあたるぞ」



(本当のことを言ったまでなのになー、怖い怖い)



軽く言ったつもりが

まさらロードさんに思いきり睨まれてしまった



それは冗談抜きのマジ顔

敬うのはいいけど見たことないのに、よくそこまで思い入れができるわね




人間は見もしない者に対しても縋る

時に醜く思うけど

時に愛おしく感じる



人間って不思議よね

然程さほど私と変わらないのに考えが異なる



「失礼いたしました」



深く深く礼を取る

魔女に対して礼をしたのではない



ロードさんの人間らしさに敬意を称して礼を取るのよ



「いえ、無理矢理連れてきてしまった私にも非があるでしょう。愚痴の一つでも零したくなるのは分かりますから。ただ身の振りを考えて下さいね」



「あ...は、はい」



まさかロードさんに同情された

ま、自分のせいであることも自覚はしているのね



「いつの間に親しくなった?」



「「なってないです(よ)」」



気の抜けた陛下一言にこれまた偶然

言葉が綺麗に重なった



その様子に小さく笑ったシドさんを私は見逃さなかった



「嫌いですね、私貴方の様な女性は」


「お褒めの言葉と受け取りますランウェイ様」



精神的な攻防

幼稚と受け取らないでほしいわ


これでも立派な心理戦なのだから...



「ならば、明日からお前たち二人は北に赴いてもらおうか」



...はい?




「ロード・ランウェイの護衛としてミアが行け。北の魔女が本当に居るのか確かめてこい」




それは、何の拷問でしょうか陛下



執務室に妙な空気が流れた瞬間だった

この人もなかなか鬼畜だわ



(勤務3日目、あまりに激動の生活は森育ちの私には少々厳しい世界のようです)



誰に言ったともわからない

ただそっと嘆くように心の中で私は呟いた



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