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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第3章
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輪廻

第3章OP

残酷描写あり


苦手な方はバックお願いします

「こっちだミアン。気を付けるんだぞ」



優しく微笑む

少し白髪の混じった男は、まだ10歳くらいの少女に向かって手を伸ばす



その手に追突する勢いで少女は男の手に飛び込んで行った

周りに人の気配はなく



ただ静かな新緑の森

太陽が木の葉から漏れ出すように降り注いでいた



「うふふっ...大丈夫だもん、アッシュが私をいつも助けてくれるからー!!」



鈴の転がるような可愛らしい声

妖精のように飛び跳ね動き回る少女は見ているこちらまで楽しくさせた




アッシュと呼ばれた初老の男はそんな少女を愛おしそうに見る

慈愛の含んだ目は彼の懐の大きさを表しているようにも思える




「そうだな、私が生きている間はミアンをいつでも助けてやろう」



そう言って腕の中にいる少女の頭を優しく撫でた

銀色に輝く髪は光に反射してより一層美しくさせた




この姿を見て

誰もが思う彼女達のこれから先も続いて欲しい優しい未来




それは...

その崩壊の足音は直ぐ傍まで近づいている



誰も知らなかったのだ

誰もこのことを予想しなかった


_____

__




「あぁ!!嫌よ...嫌!」



森に、少女の悲痛な叫びが響いた

それに反応するかのように森にいた精霊が気を張り詰める



静かで優しかった森が

その少女の声で殺気の充満する負の空気を帯びた



少女の目の前には

無残にも木にはりつけにされ全身から血を流して息絶えた







"アッシュと少女に呼ばれた初老の男だった"




見る影もないその姿

既に顔が誰かさえ分からないようなそんな状況




降り注ぐ太陽の光は変わらないはずなのに

その男は光に照らされることなくくすんだ血を流したままだった



あたり一面

鉄の錆びたような、血独特の臭い



「うおぇ」


思わず少女はその臭いと姿に嘔吐おうとした


まだ10歳くらいの少女が体験すべきではなかったのだ

あまりにも酷すぎる光景



少女はもう何も出ない

そのぐらいになるまで吐き続けた


目からは大量の涙が

鼻水が出て、顔がグチャグチャに涙と涎と鼻水で汚れた姿になっていた



少女を泣かせたのは誰だ

彼女達の静かで優しい生活を壊したのは誰だ



森にいる数多の生き物は怒る

大切な大切な存在をここまで傷つけたものは誰だ...と




数十分後

少女は嗚咽しながらも、もう一度...大好きだった男をみた



母のように優しく包んでくれて

父のように強く守ってくれた存在であるその男を





吐き気を気力で抑え込み

見る影もない男に微笑んだ



傍まで近寄る

血の臭いが一層きつく、よりよく男の姿が見えた



体が切り刻まれ

殴られたような跡もある



指が四方に曲り、左の親指がなかった

痛々しい姿



目を逸らしたくなるのを必死に我慢して

その少女は血で染まったその男の顔を優しく撫でた



少女の白い手に男の血がついた

そんなことは気にしていないかのように今度は背伸びをして両手で男を抱きしめた




少女の銀の瞳からこぼれた涙は

男の流す血と混じり合う



「アッシュ....アッシュ!!アッシュアッシュアッシュ!!」



ひたすらに男の名前を呼び続ける少女

しかし男はその声にこたえることは無かった




不意に少女が名を呼ぶのをやめ

男から離れた



服には男の血が大量についている

その白い手に頬に血がついていた



「アッシュ...さよなら」


小さく小さく少女は言った

別れの言葉を



その言葉と共に

アッシュと呼ばれた男はサラサラと砂になり



瞬く間に消えた

傍に山になった砂を残して




少女はその砂をチラリとみて

背を向けてどこかへ歩き出した



その少女の表情は見えず

木の葉から溢れる木漏れ日なかを進む



握りこぶし一つ

その白い掌から鮮血が流れた


その血はあの男のものではなく

少女の爪が己の手に食い込んで流れ出た血



「外道が」


低く、あの可愛らしい鈴の転がる声ではなく

地を這うような低い声が少女のその小さな口からこぼれた




少女が向かう先は分からず

森にいる数多の生物もまた...少女の行方をあえて追うことはしなかった





帝国歴1618年のことである



新章です!!

残酷ですね

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