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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
22/151

水面下で遊戯その4‐SIDE陛下‐

陛下視点です!


その女の、逃げずに立つ姿勢に俺は驚くしかなかった

気が付いた時には足が動き

手が伸び

女を支えていた



口が頭より先に開く

己が口走った内容もすべて俺自身の意思だと云う事に

やはり驚くしかできなかっただろう


_________

____




「暫く自室に戻る」



この色のない白い部屋で数分

やっと俺は次の行動に移す決心をした



わたくしもその場までご同行いたします陛下」


まるで金魚の糞だなお前は

俺が一歩踏み出せばシドは少し慌てたようについてきた



「よい」


「ですが...」



俺の安全を気にかけてくれることはありがたい

これでも信用できる奴はこの王宮には少なすぎる



年若い帝王の下で働くのがそんなに嫌なのか

俺の命令だと、地方の貴族は民から重税を迫っているようだしな




未だ俺がこの地位についても

私腹を肥やしのうのうと歩き回る狸が多くいる




笑わせる

俺ができることなどたかが知れている


賢帝と言われようと

敵がいるのも確かだ


それが悪いわけではない

狸の言い分然り、民の反応然り



頭ごなしに否定するつもりもなければ肯定するつもりもないが





帝王である以上、言葉一つ気を付けなければならない

その一言で国は大きく動かせるのだから...




だからこそ忠誠心が何より俺は怖い

シドのように俺を命に代えても守ろうという意志は俺にとっての重圧でしかない



信用できる者と

忠誠心がある者は違う



シドは俺の言ったことを必ず遂行するだろう

それだけの忠誠心があるからこそ俺は騎士団長にした


それは俺がシドを信用しているからだ

何があっても裏切らないシドが近くにいることが何よりの安心で



ただ、その忠誠心があまりに重い

矛盾しているだろう


だがその矛盾が今までもこれからも結局は続くのだろうな



くどいぞ」



振り向くことをせず、シドに有無を言わせぬ声で言う

こういえばシドがどうするかわかっていての言葉だがな....



「出過ぎた真似をいたしました。夕刻より宰相がお戻りになる予定にございます、その時間までには御帰還下さいませ陛下」




宰相が帰るのか

魔女関連のことで動きがあればいいのだがな


シドの言葉に頷き

その部屋を後にした





そのままその足で

王宮の裏にある庭へと進んだ



(もう行動するとは、頼もしいな)



貶し言葉ではあるが

そう思ったのだから仕方あるまい




―――早く早く

我が君...時を争状況です



あの女が出て行った数分後のことだ

俺の周りが一気に騒がしくなったのは



頭に直接声が響く

その声音は酷く焦っている



声が導くまま、俺はただ進んだ

太陽が既に高いところまで上がっているのを見ると



夕刻までそこまで時間は無いようだな



着いた先は庭だった

何もない


先々代の王が愛娘のために作らせた庭

幻想的なのは分かるがもう少し質素にならなかったのかと思うぐらい煌びやかな庭



だがここではないらしい

いまだに声が頭に流れ込んでくる



また、声が教えるまま...普段は決して踏み入れることのない

その庭へと進んで行った






(そう云う事か)



一面に広がる多色の花

ただ、奥へと進んで行けばそれで終わり


うまく道を進めば....

その先に見えるのは水を司る魔女の御霊が眠る領域となる



進む手前

微かにあの毛色の違う輩の魔力を感じた



その者もまた、この道を知っていたのだろう

これは驚いた


相当の手練れであることが分かったのだから

この道は秘密を守るためにある道ではない


間違ってはいらない様に、何も知らないものを入れないよう守る道



魔女の領域は

フツウの人間には行くことのできない神なる区域


迂闊に入って死んでもらっては困るからな


だが...意図的に入ったようだ

その輩と一緒に、よく知った弱い魔力も感じ取ったからだ




(死んでないといいがな)


女の身の安全を多少気にしながら

間違うことをせずただ順に従って歩いた




ピチャン

どこからともなく水の弾く音


次第にザーっと流れる音が聞こえた

そう、目の前には大きな噴水がある



そして足元には桃色の花と

奥に黄色い花が咲いていた



(久々に足を踏み入れた、眠ってもこの魔力を未だに出すとは...純潔の魔女は末恐ろしいな)




世間一般

魔力があると思われる俺はこの不可侵領域でもそれ程害はない



ただ少し肌がビリビリするようなそんな感覚



―――...そうで...ね、...なしく...も..を



目的の人物は俺の目と鼻の先

近くで既に戦いが始まっているようだった



俺はまだ出てはいけないと

静かに見守る



だが見る限り

あの女はもう動けない様子だ



(この領域でまだ意識があることが凄いことだ)



新鮮な反応を見せるだけの女にとって

この領域は女に死を与える場所に過ぎない


俺がここに来るまで

意識があっただけ、それだけで稀だ...



「―――まだ話す口が残っているでしょう」


漸く聞き取れた声の主を見れば

それはよく知った男だった



(まさか東の王が俺の国にいたとはな)



どこかの国の間諜だとは思っていたがまさか王自らだったとは


これでは迂闊に殺すことは出来なくなりそうだ。

チッと聞こえないように舌打ちをした




その瞬間

やけに乾いた音がした


目をやれば、動けなくなった女に手を挙げている姿



今...ここで出ていきたいところだが、相手が一国の王だとすれば

お前の命はここで散っても文句は言えないんだ



自身が危険を冒してまで来た理由

それを知らなければ俺も動きようがないからな



何の感情もないような目で笑うカザエル・ダンジュール

その表情に虫唾が走る思いだった



「俺はあの水色の水晶が欲しいのです。ただ、触れようとすれば何かに弾かれる...どうやったら手に入れられるのだろうか」




(まだ、お前に猶予があったらしいな)


後ろに倒れる女に俺は手を伸ばす

真意が分かったのならばお前をこのまま見殺す理由にはなりはしない


俺は飛び出し

その女をしっかりと抱きとめた

______

___



「死なせるわけがないだろう、俺の認めた騎士だぞ」



腕にぐったりともたれかかるように女は意識を失っていた

よく見れば口元から血が流れている


さっきの乾いた音の原因はこれで間違いないことが分かった



正面を見れば

カザエル・ダンジュールは心底驚いたような表情をしていた



(あまり構っている時間はないな)


視線を腕の中にいる女へ向ける

長居できないのは重々承知だ


もう一度視線を男に向ければ

あの表情はどこへ行ったのか、いやに裏のある笑顔を見せてきた



「久しいなアレン・アルファジュール」


「この状況下でよく言えたものだカザエル・ダンジュール」



互いに溢れんばかりの魔力を出す

黄色い花が活発的に反応しだした



なるべく女に毒が回らないように

結界を張ってやる




「なぜお前がここに来た」


睨みつけるように俺を見てくる

ザワザワと花が忙しなく震えている


この男の感情に同調するかのように.....


「それはこちらの台詞だ、なぜこの場にお前がいる」


睨み返すように男を見れば

男は意味深な笑みを浮かべた


「この水晶が欲しかったんだが....また別の機会にしよう。お前が来てしまっては時間が食ってしまう。病弱な俺は早々に国に帰らなければ」


あきらめるか

それはそれで助かる話しだ



国同士の会話があまりにも物騒すぎる

よく戦争が起こらないと、度々自身が思うくらいだからな



「機会など次は無い。去れ」


「眉間に皺寄せるとそのうちその痕が取れなくなるよアレン陛下」



余計な御世話だ

そう思った時には男は一陣の風を舞わせて跡形もなく消えた




再び静寂が訪れる

サワサワと花が揺れ、ザーっと噴水から水が流れる音がする


この領域は来るべきではない

俺は女を抱きかかえ噴水に背を向けた



――――賢い子


風に乗ってそんな声が聞こえた気がした

やけに凛としていて澄んだ声



だが振り返りはしない

そう本能が告げたからだ



「死なずに済んでよかったな」


歩きながらいまだに眠る女に一人小さく声をかけた

聞こえていないことぐらいわかっている



俺の声は水の音に掻き消された



空の太陽は濃い橙色へと変わっていた

もうすぐ宰相が執務室に来るころだろう



俺は足早にその庭を後にした....








あー、最後は呆気ない←

とりあえず2章終了!!

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