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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
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水面下で遊戯その3

流血

戦闘描写が多少入ります


苦手な方はバックお願いします


黄色い花が空を舞った

轟音があたり一面に響き渡る




(己が崇拝すべき対象の前で血を流すつもりかこの男は)



彼が動いたその瞬間

私は後方に飛んだ


あと少し、私の判断が遅れていれば私は黄色い花によって串刺しになっていたわね



私が居たその場には無数の黄色い花の蔓が刃のように突き刺さっていた

流石は東の王だけある


この花の使い方をよく熟知しているわ

それと同時にヒヤリとさせられた



彼は私を本気で殺そうとしている

そう思わずにはいられなかった



あの一撃は本気だった

隙も力も研ぎ澄まされた一撃



「流石帝王が選んだ騎士なだけはあります。見た目からは想像できない瞬発力だ....」



褒めているのだろうか

貶しているようにも聞こえる内容だわ



彼はさっき摘み取った花を優しく撫でながら

狂気を宿した目で私を睨みつけてくる



眼光が陛下と同じ

意志が強く、曲げない...己の立場をよく理解したその姿



(嫌な相手。こんなに面白そうな男を消すのは本当にもったいない)



久々にゾクゾクするのが分かった

体が.....魔女としての本能がこの戦いを望んでいる



なんて野蛮な魔女

睨みつけられるその目を見ながら私は自分のおぞましさに笑うしかなかった



「このような場で...あなた方の国の魔女が眠るこの地で血を流すこと、いささか惨いのではございませんか?」



フラリ

足元が少し平衡感覚を失ったような気がする



いや、それが普通なのだ

今の状況で...長引けば死なないとはいえ何年かは寝たきり生活を強いられることになりそう




それは少々避けたい



――――本格的に黄色い花が本領を発揮し始めたのだ

魔力に敏感なこの花は私ではなく彼の魔力に反応した


黄色い花は目には見えない粒子を空気中に充満させている

神経が麻痺し、あらゆる機能を停止の状態に近づける


ただ、彼は東の王

こうなった時の回避の仕方も知っている




目には目を

毒には毒をもって解毒の作用となす



黄色い花には親がある

一見どれも同じに見えるその黄色い花


実は一輪だけ花弁が7枚ある

他の花は5枚



その親の花の花弁には解毒作用がある

何万本ある中で見つけるのは早々たやすいことではないけれど






この場に咲く黄色い花

一輪だけある7枚の救いの花


(その一輪を....彼が持っているのよね)



絶望的ともいえるこの状況

魔女といえども万能ではない


できないことは無いけれど

威力は限られているのだから...



そう、さっき彼が手にしたのは

その親の花


見れば一枚花弁がなくなっている



余裕の笑みに私は苦笑するしかなかった

自然は私に手を貸してくれる


でもこの場所は残念ながら分が悪いみたい




(この領域は....私のモノではない)



リーナ姉さんが眠ってもリーナ姉さんの御霊がある

だからだろうか?



さっからこの場所にある数多の自然に声をかけても

私に反応することは無かった




「辛そうですねミアさん。大人しく頷いていればいいものを」



同情の眼差しで私に近づいてくる

私を追い込むなんて人間....いるんだね


そう思わずにはいられなかった

あのハゲは別




私を軟禁した帝王はそれは馬鹿だったけど

馬鹿になる前は確かにいい男だったからね



なんて、こんな状況でふと思った



自然を操れない今、私に残された選択肢は

静かにこの場に立っていること



下手に動けば私の動きに反応して花が粒子をより多くまき散らしてしまう



唯一いいのは

この恐ろしく密度の高い魔力が粒子が外へ出ることを妨げているって所かしら



「死が怖いですかミアさん。まだその職に就いたばかりだというのに残念ですね」


コツン

目の前で彼が止まった


見上げる形で彼を見る

背に太陽が降り注いで、彼の髪色が金色にも見える


更に興味深い水色の瞳

光の加減で碧色にも近い色が時折顔をのぞかせている


リーナ姉さんの瞳に近い色だ

東国は総じて水色や青、緑といった瞳の色を持つ


王族や上流貴族になるにつれ、瞳はリーナ姉さんの色に近づく。それは昔、リーナ姉さんの分血と王族が交わったからだそうな...。



庭師の彼の姿は

明るい鈍色のくすんだ茶色だったはず


これが本来の彼の姿だというのなら

あの時私が彼を昔枷を付けた男に似ていると思ったのも強ち外れではないはず



あの男も、日の下では琥珀色の髪色をし..緑青色の瞳をしていた

どこまでも深い闇をまとった人間だった




私が反応しないでただ無言で見つめているのが気に食わなかったのか

彼は眉間に皺を寄せて再び口を開いた


「まだ、話す口は残っているでしょう」



その言葉に私はフッと口元を歪めて笑うだけだった

そろそろ立っていられなくなってきた



(じわじわと感覚が無くなっていくのが分かるってつらいわ)



全身の神経が機能を停止していくのが分かる

血の巡りがどんどん遅くなる



下半身から上に駆け上がるように粒子が体を駆け巡る

拷問用の花なんだもの



頭と口は使えないと不便よね

この黄色い花は悪く使えば拷問用になる



彼が私にまだ喋れるだなんて言ったのも

この花の特徴を知っていたから



何も言わない私を見て苛々してきているのが分かった

殺気がビリビリする



パンッ!!

その音と同時に私の頬が熱を持った

叩かれた...理解した瞬間に今度は体の中心に激痛が走る



(いったいわ...口の中絶対に切れた)


私が動けないことをいいことに

頬と腹部をこの男は殴った


口内で血の味がしたことから

きっと切ったのだろうと思う



お腹の痛みも尋常じゃない

立っていられないけれど、神経が麻痺している今座ることも許されない


「あぁ....女性に手は出したくなかったのですがね。あまりにも強情なのでついつい」



彼はそう言って笑った

なんにも思っていない表情で...



「俺はあの水色の水晶が欲しいのです。ただ、触れようとすれば何かに弾かれる...どうやったら手に入れられるのだろうか」




彼は、純粋にリーナ姉さんを崇拝しているんだ

子供の様な目で強請るようにその水晶を見上げていた



純粋と狂気は紙一重

純粋すぎる思いはあまりに危険


国王でありながら、ここまで魔女に執着する理由はなんなのか

もしこんな状況でなければ聞いてみたかった


(でも、そろそろ限界)


視界が霞む

体が後ろに倒れていくのが分かった



多分、この後私はこの場所に放置されてしまうか

彼の手によって肉塊にされてしまう気がする



この場所に放置されれば

私は多分、このこの空気に慣れるために数十年眠らなければいけない


肉塊にされ放置されれば

数百年はかかるだろうね...



「―――死ぬ...か」


彼が何も感じない様子で私が倒れる瞬間呟いた

どうでもいいかのように、私を見て...







「死なせるわけがないだろう俺が認めた騎士だぞ」




意識が飛ぶ寸前

叩きつけられると思った体は暖かい何かによって包まれた


そして、見えないけれどきっと




陛下の声が聞こえた気がした




はい、次のターン



ここは王道で締めたいっす!!

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