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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
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水面下で遊戯その2

(こんなところにあったの)



静かに...ただひたすら静かにそこに静止するリーナ姉さんの御霊



眠りについた魔女の行方は誰一人として

知ることは無かった




私でさえ、わからなかった

私の同胞

私の仲間

私の唯一の家族



この男は、エルダンさんは分かっているのだろうか

この水色をした綺麗な水晶が東の魔女の御霊だと云う事を



知っているのかもしれない

目が...この御霊を見る目が他とは違っていたから



「この水晶、綺麗ですね」



私がそう言えば

エルダンさんはさも自分のことのように顔を緩めて優しそうな眼差しで水晶を見ていた


「そうでしょう?」


分かったことがある

この男、東に住む者で間違いはない




黄色い花は東ではどこにでも咲いている

争いを嫌ったリーナ姉さんは魔法をむやみやたらに使わせないようにこの花を街中に植えた




きっとエルダンさんはこの花を見慣れているから

この場所で魔法を使っちゃいけないことを知っている


「この水晶、ミアさんには何に見えます?」



目線が私へと向けられる

あえて私はエルダンさんと視線を交わらせないようにする


「...さぁ、でも大切なものだと思います。端くれですが、強い魔力を感じますから」


「この水晶が欲しい、なんて烏滸おこがましいことだとは思っていますが...どうしても触れてみたい」



戦慄くように彼は言う

その姿がいつか見た王の面影を私に写した



そこまで考えて結論が出る

簡単なことだった



魔力が人並以上にあって

あの扉を開けることができて


この空間に対してなんとも思っていない


(エルダン...考えた名前ね)


カザエル・ダンジュール

現東国王であり病弱と言われ俗世には出てこない


しかし、安定した国作りとその方針は

病弱という欠点をも凌ぐと言われている





いつかの、私に枷を付けた男の子孫

よくよく見ればどことなく似ているかもしれない


「エルダンさん。この水晶は何かご存じなんですね?」


視線がぶつかる

私の確信したような目にエルダンさんは笑った



「ハハハ!...ライン4本のミアさんこそご存じではないのですか?」


刹那

風が変わった



エルダンさんは人が変わったように

私を蔑んだ目で見てきた



「まさかただの新米騎士だと思っていましたが...帝王が認めた騎士だったとは。予想外だ」




そう言って私から数歩、離れるように下がった

その意味が何となく分かる


これからこの人は私に何かをするつもりだと



「私も予想外でした。」


素直に述べればエルダンさんは馬鹿にしたように笑う

本当のことを言ったまでなのに



「手薄になったものだこの城も。...この水晶は、我々が崇拝すべき東の魔女の御霊ですよ」




なんと云う事だろう

人間が殺した筈なのに


よもや崇拝などと口にして

笑うどころか呆れてしまう



(手薄...だと思っているのはあの陛下を知らないからよ。)


私でも少し恐怖を感じるような人

陛下はきっと強い


そう私は思っている

手薄な城が落ちない理由なんて一つじゃない


「袋の鼠は...そう簡単に外の世界に逃げ出すことはできません。」


独り言のようにつぶやく

あえて魔女の御霊には触れない




「何が言いたいんですかミアさん」


傍から見れば静かで穏やかな雰囲気だけれども

一度近くによればきっとそうは思わないような殺伐とした空気




「陛下が怒る前にこの城から出ていくことをお勧めします」


やわらかく笑かけながら外に出ることを私は促した

ここで捕まえては面白くない



他国に己を偽り

帝国の花を奪うなんて無茶をする人間



見ている分には当分飽きない

そんな楽しい存在を私は消したくなんてない


「ミアさん、きっと貴女は私...俺の正体が分かったのでしょう。陛下直属の部隊で陛下指名のミアさんならばきっと。ただ俺もなるべく関係のない人間は殺したくないんです」



そう言ってエルダンさんは

一輪、黄色い花を摘み取った



「見過ごせと?」


「その通り。俺が目的を果たすまでで構わない....それまでは黙っていてはくれないだろうか」



その目的は何か

アルファスの涙を使う時点でその目的が良い方向に傾くはずがない



黙っていろなんて随分上からの目線

笑うエルダンさんは、どこか脅迫めいていた



「東の王カザエル様...我が領土への許可のない侵入は本来であれば大罪にございます。どうか、我らの花をこの場に置き早々に立ち去ることを願います」



片膝をつき

敬うように私は彼を見た


数日前

会話を初めてしたときはとても笑顔が似合う優しい人だと思ったけど



私が騎士になった途端

既に私たちの間には影ができた



「交渉は...」


「破談にございますカザエル様」



私が言うのが早いか

彼が動くのが早かったのか


静かで美しい魔女の眠る地に騒音が鳴り響いた






次の話から

戦闘描写


....展開が早いかな

次の章はゆっくりにするつもりです

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