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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
19/151

水面下で遊戯その1

私がまず向かったのは先日、エルダンさんと話した庭

今日も見事に花が咲き乱れている



これを、これだけの庭を造るのにはどれ程の時を有したのだろう?

数多くの種類が視界一杯に広がる




足を進める度に花の蔓が足に絡み付くようにサワサワと動いているのを感じた



ここも同じ

私の領域




そんなことを考えていると目の前にエルダンさんの姿を捉えた



私の気配に気が付いたのか

私が話しかける前にこちらを振り向いた



この姿を...どう思うのだろう?


(きっとエルダンさん、私が新米のペーペー騎士でしかないと思っていたに違いないわ)



そう、エルダンさんは私が思わず笑ってしまいたくなるような少し間抜けな顔で私を見つめてきていた



「こんにちはエルダンさん」



にこり

笑いかければつられるようにエルダンさんも笑ってくれた



「まさか...ミアさんがそんなにお強い方だとは思いもせず。失礼いたしました」


少し土で汚れた頬をシャツの袖で拭きながら一瞥された



「畏まらなくていいと言ったはずですよ!私もまだまだ未熟者ですから」



両手を前にだし

左右に振る


困った表情を見せればエルダンさんは笑ってくれた


自然すぎるほどの微笑を私に向けた



「そうそう、ミアさんに似合う花があったのであちらに植えていたんです。よろしければ見ていただけませんか?」



急に思い出したかのように私にそう言ったエルダンさん

私に似合う花をくれる


前に私がアルファスの涙に興味を持った時エルダンさんが約束してくれたもの


(どんな花なのかしら)



エルダンさんは慣れたようにその庭を歩き始めた

私の背丈以上ある花が視界を悪くする


ゆっくり歩く分には綺麗って思えるけど

今は花が邪魔で仕方がないわ



私と違ってエルダンさんはスムーズに歩いていく

まるで花がエルダンさんをよけるかのように



(少し...少しだけ道をあけて?)


心の中で静かに願う

すると花は私が一歩を踏み出すタイミングを見計らってよけてくれた



大まかによけることはしないから

変に思われる心配もない


ありがとう

そう心の中で呟いて進みだす



さっきとは違いかなり快適に進むことができる



「大丈夫ですかミアさん」



時折心配するかのように私に尋ねてくる

当の本人は私からは見えないけど....



「大丈夫です!!」



やや大きめに叫ぶと案外近くにいたのか、なら安心です、と聞こえた



そして視界が広くなる

こんなところがあったんだ


目の前に噴水がありその周りを黄色の花が囲んでいた

奥まで行くとこんな庭なのね



一人納得品がらエルダンさんについていく

足元には桃色の花が咲いている



「ここ、案外知られていないんですよ。」


噴水の前で立ち止まり

エルダンさんはそう呟いた



「こんなにきれいなのに」



私もエルダンさんの傍に行き立ち止まる

なんでこんなに綺麗なのに誰も来ないのだろうか?



「綺麗ですよね」


エルダンさんの視線が噴水の上を見ている

その視線を追えばあることが分かった



(そりゃ....知られないでしょうね)


数秒前の疑問が一瞬にして消える

この場所は本来は来ちゃいけないんだよエルダンさん



私の目が噴水からエルダンさんへと再度向けられる

エルダンさんは静かにただ見ていた



噴水の周りを黄色い花が囲んでいて

背丈は私の膝くらい



よくよく見渡せば

この噴水から流れるように幾つもの水の道ができていた


ここから王宮や街に水が行くのかな



こんなにきれいな場所

(普通の人間が入れば簡単には出れないのよ)



あの黄色い花は飾りじゃない

噴水を守っている花



黄色い花はかつて東の魔女がこよなく愛した花だった

リーナ姉さんはこの花が大好きで、袋に入れれば匂い袋になって...薬にもなる花



でも魔力を感じればその匂いは悪臭となり嗅覚を麻痺させる

薬が毒になる...多重人格と呼ばれる花


そしてこの空間

とくに噴水からは濃く純度の高い魔力があたりを包んでいる


森に比べればそれほどまででは無いかもしれないけれど

それでも純度は高い


花はこの純度の高い魔力を吸い続け、ほかの魔力を受け付けはしない


(エルダンさん....貴方がフツウの人間ならば、この空間は苦しいものなのよ)


細く

私の口元が上がる


目は未だエルダンさんを見たままで




至ってなんともないように立っているエルダンさん

本人に自覚症状なんてなんでしょうね



本当にこの男は面白い

そう思わずにはいられなかった



私は目線をもう一度噴水の上に向ける



そこには...水の力で落ちずに空中にとどまる








"東の魔女の御霊があった"





話がいっきに動きます!!

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