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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
18/151

騎士の生活その4‐SIDE陛下‐

――――涙が奪われた



(五月蠅い蠅が一匹潜り込んだかと思えばよもやこの帝国の花を無断で奪うとは)



執務室の静かな空気の中

俺の耳に届いた一つの知らせ


いつからか知らぬ魔力がこの王宮をうろうろしているのは分かっていた


むしろそんな輩を一々掃除していてはきりがない

害がなければ放置するのみ



動けば殺す

動かなければ観察するのみ



この不動の地位についてから

多くの人間がこの王宮を出入りするようになった




簡単に侵入できる手薄の城

今は他国の幹部の者共はそう思っているらしい


あながちはずれではないだろう

来る者拒まず...それが宰相の考えなのだから



勿論去るものは消すが



チラリと今月の予算案の書類から目を外し新しくついた女を見る



魔女...自分からそう言ったのだから

それ程の力を持っているのだろう


見た目は非力で何の取り柄もないような女だが


いいのは顔...だろうか

そこまで考えて思わず苦笑する



俺が女を観察するなどあったか?



別に女が嫌いではない

東の王は女が嫌いだと有名だがな



その時その時俺の欲求を解消してくれる



それ以前に女という生き物が居るだけで多少癒されもする



この女は俺にこの1年何をしてくれるのだろうか


求めるものをくれるのだろうか

...馬鹿馬鹿しい考えなのかもな



どこを見ているのだろうか

シドとは違いあたりをよく見渡している


そんなに珍しいものがこの部屋にはあるのか



あの剥製の鳥もこの女は終止珍しそうな顔をしていたな


今度部屋に別の鳥の剥製でも送ろうか

そこまで考えて思考を止める



そもそも今はそんなことを考えている暇はないな


ふと、女を見て思った


(そうだ、この女を連れていこうか。どんな反応を見せる?)



まだ宰相からの報告は無い

暇つぶしでしかないのなら少し遊んでみたいものだ


魔女が現れるまででいい

女が自分で魔女だと言った



不動の立場で在るが故にシドのような反応しかしない者が多い



そのなかでこの女は俺には新鮮過ぎた


無言席を立つ

どうするのかと思えば女は俺を見たままついてきた



シドは流石、というべきかあらゆる殺気を跳ね除けるだけの目をして周囲を警戒している


(俺に従順過ぎて困るがな)




女は....後ろは振り向かないが気配でわかる

ただひたすら俺についてきていることが


そんなに早くは歩いていないつもりだが...

少しは道を覚えろ


そう思いたくなるぐらい女は俺しか見ていない

自惚れにしか聞こえないだろうが事実だ



その姿を、必死について来ようとする小さな女を見て

少なからずその白く細い手を握り俺が引っ張りたい...そう思うのも悪いことだろうか



この地位がきっとこれから先自分の恋路を邪魔することは重々承知の上だ

まぁ、今更恋だのなんだの語る口など無いが



(どこまで俺に嘘をつける)


目の前には特殊な魔法が施された扉

この扉は俺と俺の臣下にしか開錠の仕方は分からないしできない


古狸が今更余計なことに首を突っ込まれてしまえば俺のしたい政治ができないからな



扉の前、思うことはそれだけだった

嘘をついている...とは一概には言えないだろう


今はやりたいことを、したいことをさせているつもりだからな


だがそれも今のうち

何か動きがあれば俺はお前を殺すぞ


俺の力は魔女に匹敵すると思っている

こんなことを言えば国から反感を受け忽ち俺が殺されてしまうがな



古に存在した純潔の魔女

唯一の生き残りを、我が国の馬鹿な男が残した中央の魔女


俺は生きている間に必ずその魔女を見つけ

彼女の自由を俺のできる範囲で叶えてやりたい


それは幼いころから魔女の話を聞いていたからこそだ



そのためにはお前が必要だ

1年の契約


その間、俺にお前を殺させてくれるなよ

密かに気に入った女だ


1年後お前がまだこの城に居たいと言うのであればお前に居場所を与えよう


優先順位は二の次だが相応の待遇をしてやる





指先から魔力が溢れ扉へと伝わる

それによって徐々(じょじょ)に扉が開き始めた


目の前に広がるこの国の戦力の一つ

花を愛でる趣味は持ち合わせていないがこれは別だ


数歩進み近くの花をそっと触る

折ってはだめだ


――――花が持ち去られた

我等が王よ、花が一輪知らぬ輩に奪われた


囁くように怒りと焦りを露にした声が聞こえる


『既に目星はついている、お前たちが騒ぐことではない...気を静めろ。この場に慣れない人間がいるだろう?』


その声に優しく宥めるように返せば

声は困惑し始めた


――――人間?なぜ....あぁ、人間。そうか、そうだったのか...我等が王よ貴方がそう言うのであれば我等はただ静かに見守りましょう。我等の意思は貴方とあの御方に




声は次第に喜びへと変わった

何に疑問を抱いたのか


精霊は純粋だ

その純粋な精霊が"あの御方"と、そう言った

これが珍しいわけではない


以前にもそう言っていた

"あの御方の御霊が再び戻った"

"あの御方が動きだした"


あの御方とはきっと魔女を指すのだろう

魔女は幾千の母であり生きた歴史



俺が探す俺が今この地位にいる意味

それは全てお前が握っているぞ魔女



この場から花を持ち出した愚かな人間

それを俺は知っている


(お前も知っているだろう?)



連れてこいと命ずれば女は挑発的な目で俺を見てきた

本当に飽きない存在だ


逃がしはしない

まだ、お前には利用価値があるのだからな


去って行く後ろ姿を見て思う

あの女にどこまでできるのかと...



「陛下、あんなことを仰ってよかったのですか?勘違いする者も多いですぞ」


女が退出した後シドが話しかけてきた

その顔は非常に険しいものだった


切りかかろうとしていたくらいだからな


「勘違い?そんなことをするような女に見えるか?」

「私には、そうとしか見えません」



俺の意見をバッサリと切り捨てた男

女嫌いにも程がある



(勘違い...したのならそれまでだ、と云う事だろう?)



あの目は試される覚悟があったのを分かったようだった

そう思って違かったのなら俺もそれまでと云う事だ



「いい、放っておけ。動きがれば俺が殺すまでだ」


睨みつけるように扉を見る


「御意」


無音無色のこの部屋で

俺は考える



魔女が現れるその日まで

SIDE陛下はどうでしょう?

今回2度目!!



文才が欲しくてしょうがない

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