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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第2章
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騎士の生活その3

陛下が動いたのはそれからしばらくしてからのことだった



全然動こうとしな陛下を見ながら

シドさんはこんな時何を考えてるのかなーと一人考え

変な妄想に浸っていたところ陛下が動いてくれた




勿論私たちにかける言葉なんてなくて

一人で執務室を出ていってしまった


私たちもおくれを取らないように陛下の後ろにつく



シドさんは毎回のことだからいいとして

私に対する目線は正直痛いものだ



(シドさん、早くほかの騎士の人に私を紹介して欲しいなぁ...)






陛下の行く場所は私には全然わからなくて

昨日こんな道あったかな?って思うところばかりを進んで行く


シドさんは慣れたもので前後左右を警戒しながら進む余裕があった





私がそんなことしたらきっと迷うわ

陛下だけを見つめながら進む私



少し歩いて着いた先にはこれまた大きな迫力のある扉だった



(うーん、この扉も何か仕掛けがありそー)


私の部屋の扉には仕掛けなんてものはなかった

要は特別な部屋にのみ扉にも魔法がかかっている状態なんだと思う



しかも"関係者の言葉でしか開かない"ってオプション付きね

....と、勝手な解釈をしてみた



すると不思議な光景が私の目に飛び込む

陛下は言葉を発しないで指で軽くその扉の線をなぞった



魔力の脈動をなぞるように優しく緩やかに

そうすれば扉が鈍い音を立てて開いた



(一瞬しか見ていないけど陛下の手...きっと魔法以外にも鍛錬してるのかもしれないわ)



男らしい手

だけど何もしない温室のお坊ちゃんのような手じゃなくていくつもの経験をしてきているような手だった



陛下がその部屋へ入っていく

私達も後に続いて入っていった




______

____




(これはこれは....見事なもので)



私達が入ると扉はすぐに閉められた

いや、直ぐに閉めなければ害を及ぼすから



300年生きる私でも初めて見る

幻想的な純白の世界



見渡す限りの白




陛下は数歩進んでその白い絨毯の上にしゃがみ込んだ



「どう思うシド」



一輪、手折ることはせず静かにシドさんに話しかける陛下

感情の読み取れないその表情



「はい陛下...どうにも毛色の違うやからが入り込んだようですね」



淡々と答えるシドさん

だけれど少し...いや、大分目が逝っていたと思うのは私だけ?



「お前には説明をしていなかったな。ここにある花は全て猛毒を持つ、今は地に根を張っているから安心できるが手折るなよ。たちまち毒がこの空気を汚染する」



にやりと...私を脅すかのような表情


(馬鹿にしているのか陛下は)


「知っていますよ、この花は帝国指定の毒花≪アルファスの涙≫ですよね?」



私も横目でその花を見た

綺麗でとてもかわいいのだけれど、残念ね



「そうだ、普段ならこの場所でのみ栽培され俺と俺の臣下...宰相しか入れぬ場所だ」



そう言って陛下は花を優しく撫で立ち上がる





「だが....可笑しなことに何者かが入った形跡がある。どう思うお前は」



(それは、あの庭師のことかな)


思いたる節がある

でも、エルダンさんは躊躇いもなくこれからあの花を使って何かをやり遂げるだろう



私はそれに少なからず興味を持っている

誰にあのアルファスの涙を使うのか...を


「誰かを殺したいのでは?」


花から目を陛下に移す

陛下の目は先ほどとは大きく違って好奇心が湧いた子供の様な目をしていた



「誰を殺す」


「一概には言えません、大切な人であったり憎むべき相手だったり」



シドさんはそんな私達の会話を黙って聞いている

そう言えば、シドさんは私が魔女だってことを知っているのだろうか?



「そうか...では命令だ。この花を盗んだ者を俺の前に連れてこい」



指示は出さないんじゃなかったのかしら

私をみながら陛下はそう言った



シドさんには言っていない

....と、言うことは私にのみ与えられた指示なのかな



「賜りました陛下」



陛下に一瞥いちべつすれば、当の陛下は何も言わず

また花に視線を移した



(なんで....ここに誰かが入ったことが分かったの?)



あの扉を開けられるだけの手練れ

要はきっとエルダンさんはそれだけの人間


でも...それを超える陛下



きっと何かを察したから陛下は執務室から足をここまで運んだ

それもかなり確信があったからこそ



「私にこのような場所を教えてもよろしかったのですか?」


我ながら変な質問だと思う

でも、こんな兵器みたいな花が育っている場所を私なんかに教えていいのだろうか


1年の契約

それとは釣り合わないほどの重い帝国の秘密ではないの?



「馬鹿だな、お前は簡単に俺からは逃げられん」



背筋に虫が走るようなゾワッとした感覚が全身を襲った

それはどういう意味だろう



陛下の目は冗談を言っているようではなくて、私は何かに囚われたかのような錯覚に陥った




「...それはそれは、陛下を甘くみていました」


「貴様陛下になんと無礼なことを」



私の言葉にいち早く反応したシドさん

今にもその腰についている剣を抜こうとしていて


「よいシド」



そんなシドさんを陛下が薄く笑って止めた

陛下の言葉に渋々剣の鞘から手を外す



「申し訳ございません」


何を思っての発言だろうか今のは

"逃がさない"だなんて陛下の様な綺麗な人に言われれば下手に取る人間だっているでしょうに...




「では行け」



私が謝ると陛下は気にも留めていないかのように私にこの部屋から出ていくことを促した



その言葉に私は素直に動く


(シドさんの目が怖いからね)



花を踏みつけないようにゆっくり扉に向かって進んで行く



"逃がさない"それがどういった意味かは知らないけれど

とりあえず今はその花を持ち出した人間をどうにかしなければいけない



私がエルダンさんの命をその手に握っている、そう言っても過言ではない


(ま、少しエルダンさんとお話しでもしながら殺すか生かすか決めようかな)



そんなことを思いながら私はその白い空間から抜け出した


陛下ってばどういう意味かしら

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