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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
133/151

仕事中‐SIDEロード‐

本日二話投稿、お気を付けください。

「・・・さて、この状況どうしたものか」


一つ、まずなぜこの部屋にいる

一つ、なぜこの娘がいる

一つ、どうしてそんなに――――


「傷だらけになって!!一体何があったのです!」


陛下と一緒に、南国へ行ったはずのミアさんが、何故か酷い傷で私の部屋にいる、治癒を施しながら心の声が口からこぼれたのだ


――――――――――――

―――――



あの日、自身を傷つけ陛下を助けようとする姿に、何故か感情が波打つ感覚に襲われた。それは時間とともに消えていったが結局それが何なのか、気づくことはなかった。



ここを発つ際、リュヴァーに騎乗していた彼女を見て、陛下と同乗しなかったのかと少しほっとしたことも、気が付くことはなかった。そう、断じて気が付くことなどなかったのだ。


南国が、いまどのような状況なのかはわからない。北国とは違い、そこまで情勢が悪化しているとは聞いてはいない。西国との国境付近はなにやら慌ただしいとのことは聞いてはいるが、今回陛下達が行く分には何も問題はないだろう。



執務室で淡々と仕事をこなしていく。土地開発やら事業開拓だとか真面目な申告書、書類の中に混じる―――王都の片隅にある占いの館はよく当たる、恋愛に疎い人でも必ず気づく魔法、恋の・・・、恋愛の・・・、恋、愛、恋、愛



バサッ


「誰ですどうでもいい書類を重要な書類に混ぜた馬鹿者はっ」


思わず書類をすべて机から払い落とす。一枚一枚がひらひらと・・・そんなかわいいものではない、どさどさっと崩れていくのが分かった。



そして、後悔する


「・・・はぁ、片づけなければ」


感情に任せてつい物に当たってしまった事に激しく後悔し、いやいやしゃがんで書類を集める。―――と、にゅっという効果音でもつきそうに、白い手が伸ばされ書類をつかんで集め始めた



「随分と、散漫ですね。ロード様」


「ナタリー嬢、ありがとうございます」


伸ばされた手、視線をたどっていけば黄褐色の髪が流れ、薄桃色の瞳が視界に入った。ふと、目線が会う



「はい、集め終わりましたよ」


「ああ、態々すみません」


立ち上がり再び椅子へ着く、そういえばと彼女の方を向く。ナタリー嬢とは幼いころからの家同士のつながりでよく相手をしていた。あの頃は今とは違って引っ込み思案でなかなか意見を言うことができない子だった。



今では、そう思って彼女を見たが、ずいぶんと変わってしまった様子。すぐにほつれてぐしゃぐしゃになる髪は今では肩のラインできれいに整えてあり、人の目を見て話すことができなかった視線が今ではあちらからぶつけられるのだ。



「どうしたんです、人の顔をじろじろと・・・」


「―――いいえ、貴女もすっかり綺麗になって、大人になりましたね」


「なっ、なんですか急に!」


だが、以前として恥かしがりやなところは変わらないようだと面白くなった。何がきっかけで彼女がこうまで変わったのかわからないけれど、人生変わるチャンスはいくらでもあるだろう。



現に私がここにいるのだって、一つのチャンスを手にしたがゆえに得られた居場所なのだから・・・



物思いにふけっている時間が思いのほか長かったようであまり仕事が進むこともなく執務室を後にした。すると、不意に自分の部屋の結界が揺れるのを感じた。――――堂々と、侵入者ですか


執務室を後にし足早に自室へ向かう。そして話は、冒頭へ戻るのだ


―――――――――――

――――


傷だらけの、ミアさんに治癒魔法を施す。魔力の放出を惜しむことなく上級の治癒魔法をかけ続けた。意識が混濁しているのか呼びかけても小さく息を吐くだけで返ってはこない。



(切り傷、炎の魔法による火傷、そして打撲の数々)



女性にするにはあまりに酷い仕打ちだ。一体あちらで何があったというのだろうか、陛下に関してみればあの人ほど強い人を見たことがないから、そして多大なる信頼を置いているからこそ大丈夫だと言い切れる。



しかし、この少女は別だ。私が連れてきたばかりに、多くの危険にさらすことになってしまった。申し訳ないやら、健気な姿を見守りたいと思ったりと矛盾する心にイライラすることもあった。



(それでも今は、この傷を治す事だけを優先しなければ)



誰がここへ運んだのか、自力でここに来ることはまずないだろう。まず私の部屋をこの少女は知らない。それ以前にこの傷でここまで来れるはずがないのだ。だが今はそんなものもどうでもいい。よく、私の前に連れてきてくれた、と感謝すらしている。己の得意とする、癒しの魔法が彼女の役に立てるのだから

――――――――

――――



「―――」


少女の治癒が終わったのは、それから次の日のこと。一夜かけて漸く外傷と内部の傷をいやし終えた。後は気力が回復するのを待つだけだ。



数分もしないうちに目を覚ますだろう、そう思い自室のキッチンへ向かいナタリー嬢からもらった安定剤の役割も果たすと教えられたハーブを淹れる。


爽やかな香りがするそのお茶に、数滴蜂蜜を注ぐ。滑らかに滑り落ちる蜂蜜に、何か近しいものを感じた


(そういえば、彼女の髪も同じようにベッドの上で流れるように・・・いや、まて落ち着け。何を考えている)



邪心を払うかのように頭を振り淹れたてのお茶を手に、再び彼女の休む部屋へ足を運ぶ。扉を開いた先、彼女はどうやら目を覚ましたらしい。


「ここがどこが、ご存じで?」


お茶を近くの机において、彼女に話しかけた。かけられた本人は、本当にここがどこかわかっていなかったらしい。大きく目を見開いて私を見て驚いていた。


「・・・あ、れ?」


「首を傾げたいのは私ですが?―――どうやらあちらで色々あったようですね、とりあえず飲みなさい」


進めたお茶を、手に取り口にする彼女を見て、普段よりだいぶ弱っているのだと見て取れた。手渡す際触れた手がまだ冷たく顔色も依然としてよくはない。しかし、お茶を静かに口にし、熱が伝導したのかほんのり頬が赤く染まった。


「おい、しいです。フランの花と葉ですか?蜂蜜が甘くしてくれてとても飲みやすいです」


そういって笑う彼女に、思わず顔をそむける


(な・・・なんですあれ。病人はやけに素直になると言いますが、あれは)



身体と共に心も衰弱してしまったに違いない、素直すぎる彼女は張り合いがないが、ある意味脅威であることがわかった。


「そうですか、ならいいんです。ほら、早く休んでしまいなさい。あの傷では後に二日はそこから動いてはいけませんよ」


――――――――――――

――――



執務室の机、何時かと同じように書類が宙を舞い下へと落ちる。仕方ない、としゃがんで書類を集めようと手にする。


そして再び伸びてくる白い手


「散漫・・・心ここにあらずという感じですよロード様」


「ナタリー嬢、ああ、すみません」



集められた書類を手にし、机にそっと置く。それを見ていたナタリー嬢が静かに声をかけてきた。


「ですが、幾分機嫌がよろしいのですね」


「――――失礼、気を引き締めましょう。」


彼女の傷が開いていないか、無理をしてあの部屋から出ていないか、下手に気になって仕事が思うようにはかどらない。それを目敏くナタリー嬢に見破られてしまったらしい。


ナタリー嬢と、そういえばあのお茶はこの娘からもらったものだったと思い出す。魔女探しで昼夜問わず動き回っていたころ、少しでも心が安らぐようにともらったものだ。



「ナタリー嬢」


これは言っておかねばと思い、彼女の名を呼ぶ。薄桃色の瞳と視線が交わった。


「な、なんでしょうか」


「あのハーブのお茶、美味しくいただきました。―――フランの花と葉ですか?いい香りでしたよ」


ミアさんが、美味しいと顔を綻ばせていた。実際にフランの花と葉がどのようなものかを調べてみれば、かなり貴重で高価な花だったようだ。


確かに香りもよかった。あれに近いお茶を探してみようか、彼女が喜ぶかも…そこまで考えていやいやありえない、なぜこんなことを考えるのかと必死に否定した。


「また、お勧めのがあったら教えてくださいね」


どういったものが好みなのか、把握しておかなければいけませんしね。ナタリー嬢にそう願えば、なぜか恥ずかしそうに下を見てはいと小さく返事をしただけだった。



さて、このままでも終わり切らないようだから、今日はおしまいにしましょうか・・・こうして、執務室を後にし、いまだ本調子ではない彼女のいる自室へと向かった。



と、いうことでロードさん視点。かなり緩い、そして無理やり展開。ごめんなさい。フゥ君が連れて行ったのはまさかの国を跨いでロードさんのいる王宮でした。なぜ、どうして、それは明日詳しく更新します。


それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました

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