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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
132/151

憎悪高まりて

邪悪なサブタイトル、中身も若干残酷描写有り。苦手な方はバック!・・・ってよくありますよね。でも実際、この話も読んでもらわないと次の話につながらないので、できれば読んでやってください(ノД`)・゜・。

「やはり、厄災が運ばれたわ」


(なんていうタイミング、もはや正気の沙汰じゃあない。私を見る目が、明らかにおかしい)


ゆっくりと開いた扉の先にいたのは、ニーナ嬢。確かにいろいろあったけれど、この子がここに来ることほど厄介なことはない。リリーも先程一戦を交えた為に、彼女に対して一気に警戒し殺気を放っている。



そして何のタイミングか、扉の前にいた騎士は誰一人としていない。この部屋付近には、私とリリーそしてニーナ嬢のみ。たとえニーナ嬢が、再び私を殺しにかかってきたとして、それを阻止しようとリリーが魔法を使ったとして・・・次は誰にも止められない。



浅く息を吐き、一つの決心をする。―――どうせ、簡単には死なない身だ。



「リリー、下がって」


目の前にいるリリーを手で制す。勿論、急にそんなことを言われたリリーは一瞬呆けた顔をしたが、次の瞬間には恐ろしい顔へと変わった。


「ですが、この娘。貴女様を本気で殺そうとしている眼をしています。そのようなものを目前に控え、貴女様の専属の女官である私の立場がございません」


「その女の言う通りよ、リリーさんとやら。その女は、殺される理由はあれど、庇われる理由はないわ!」


「黙れ小娘!」


まさに一触即発、話し合いでの解決はどうあっても望めそうにない。それどころか二人の気迫には、一番の当事者である私すら陰ってしまっている。これでは平行線を一途をたどる。そして、先程と同じようにまた繰り返される。


(正に、無駄な時間と言えるだろう)


「いいから、下がりなさい。――――リリー、陛下の元へ先に行ってこう伝えてほしいの」


「ですがっ」


「リリー、伝えて頂戴」


なおも食い下がろうとするリリーを目で制す。この問題は、私と彼女にあるようだ。もっとも私にはまったくと言っていいほどなかったのだけれど。ソレイユさんとの約束の手前、守らないわけにはいかない。


「――――、そうやって大事な時には決して私を一緒に居させてはくださらない。そんなにも私は信用に足りぬ存在でしょうか」


リリーが、そう言って悲しそうに顔をゆがませた。違う、そうじゃない。そこまで思って、また違うと、そう思った。違わない、その通りだ。私はリリーを信用していると思い込ませているだけで心のどこかで彼女をまだ完全には信じ切れていない。



最終的には、リリーを先に行かせて私の傍に決しておかない。的を完全に得た問いに、私は笑うしかなかった。


「信用しているよ、だからこそ。リリーを関係のないところで巻き込みたくはないの。そして信用をしているからこそお願いをしているの」


口からこぼれた・・・嘘

作り上げられた微笑みは、我ながら恐ろしいものだと感じた。そしてその嘘に騙される、リリー。私の微笑みに安堵したのか、ゆっくりと頷いた。



ゴォオ!!―――シュッ


「っと、会話の最中に攻撃してくるなんて随分姑息なことをするのね。――――堕ちたものだなぁ、コルデリア家も」



背後から、炎の槍が飛んできた。咄嗟にフゥ君の風でそれを弾き返すことはできたが、明らかなる挑発。


「リリー、コルデリア家は何やらきな臭い状況にはあるものの、以前として我が国との交流を進めていくそうよ。内部で起こった問題についても早々に片が付くから心配しないでくださいと当主が仰っていた・・・と、伝えてくれる?すぐに私も行くから」



今後も、滞りなくこの関係は保たれる。というより、そうさせる。ニーナ嬢が元に戻ってくれればその通りになるのだから。解術の方法は、きっと強い血。ニーナ嬢より純度、質、量が高いものの血を与えれば呪いは解ける。



「―――一言一句違えることなく伝えます。早々のお戻りを」


リリーは私たちに背を向け、その扉から足早に出て行った



―――――――――――――

―――――


「あなたのその行動は、評価します。楽に死なせて差し上げましょう」


「ねぇ、一ついいかしら」



挑発的な態度に対し、冷静に切り返す。せめてしっかりと理由を聞かなければやられ損だ。私から質問されたことに、嫌な顔はするものの聞く気はあるようだ



「なぜ、そんなにも時の魔女に反応するのかしら。確かに私にも時の魔女と同じ血が流れているわ。だからと言って、私はあなたにあったこともなかった。それなのに貴女は私に対して一方的な敵意を向けてくる」



「貴女の穢れた血が、あの方々を死へと追いやったのだ。その血が流れているだけで同罪。われらが崇拝すべき南の魔女様までも手にかけた同胞殺し、そのものの血があなたにも流れている。だから、殺すのです」


一瞬、この娘が何を言っているのかわからなかった。というより理解することを私の脳が拒否した。なんと言った?ああ、そうだ



「―――――同胞、殺し?」


「そうよ、あなたの血の元である純血の魔女、時の魔女は他四人の魔女を殺し―――」


ザシュッ


「っと、危ないです。ああ、少し切れてしまいした。見てください、私の血は紅いでしょう。貴女のその血は、何色なんでしょうかね」



神経が昂り、思わず放ってしまった風の刃を寸で躱したニーナ嬢。挑発的ではあっても、身のこなしは6代目にふさわしい。


「なんですかその眼は。虫唾が走りますね・・・殺してやるわ」


ニーナ嬢はそう言って、私に魔法を繰り出してきた


――――――――――

――――


「っ・・・ゴホッ」


「まだ生きていたの・・・さすがにしぶといわね」


小さくつぶやいて、ニーナ嬢は私に遠い間合いから左足の蹴りを放った。つま先は私の横腹に当たる。そして、意識が遠くなるのを感じた。



≪お掃除、しないとねぇ…≫


私が死んだとでも思ったのだろう、ニーナ嬢の声音が変わるのがわかった。だがしかし、聞き覚えがない。それにしても魔女を掃除というとはなかなか嫌われたらしい。



バタン


扉が閉まる音がした。一方的な、攻撃だった・・・その一言に尽きる。それ以前に私は反抗する気はなかった。


「――――ちくしょうっ」


結論として、やられ損だ。私の血ではどうにも役不足だったらしい。色彩の魔法がかけられている手前、純度も質も量もカス同然だ。魔女の血に酷く敏感だったから、仮初ではあれもしかしたら、と思った。本来なら私の血が少量でも流れればそれで解決すると思っていた。だからすぐに行けるとリリーに伝えた。しかしどうだ、結果としてこれだ。



彼女の、ニーナ嬢の魔法、体術申し分なかった。6代目を名乗るにふさわしい人物だ。いくら死なないからとはいえ、これはさすがに痛い。



あの会話で彼女の癪に障った何かがあったらしく、楽になんてそんなものはどこにもなかった。まず初めに逃げられないように両の足首に短剣が刺さった。ともすれば反撃を恐れ、炎の魔法で一気に燃やそうとしてきた。流石に焼け爛れるのには抵抗があったのでフレインの風で吹き飛ばしたが、ともすれば炎を纏ったレイピアのような細身の長剣で斬り付けてきた。



炎を纏っているから、斬り付けられても熱が出血を防いだ。殺したくても、やはり血を見るのはいやなようだった。


魔法でいたぶってもあまり殺しているという実感がわかないからだろうか、途中から体術へと変わった。



そこからはもう、惨いの言葉に尽きる。

うなりをあげて振り上げられた拳は、後頭部に当たり、その衝撃でのけぞった拍子に見えた振り上げられた右手に二発目があるとわかった。


ともすれば、今度は足を使ってくる。襟首をつかまれ膝蹴りを何発も受けた。時折鳩尾に入り胃液と一緒に吐血する。足に血が付いたと、血を払うかのように振り下ろし、そのつま先が肉に食い込んだ。


それを何度か繰り返し、漸く私が動かなくなったので、あの捨て台詞を言い出て行ったのだ。ソレイユさんの約束は守る、だがやはり今のままではダメなようだ。


知っていた、フレインが私を守ろうと出てこようとしたことを。わかっていた、ノヴァが私を隠そうと必死になっていたことを。気づいていた、ティウォールが、吸収した魔力を私のために使おうとしていたことを。だから余計に、彼らを伏せたのだ―――――


どうせ、時間の無駄だ。その中で、どうせ私は死にはしない。けれどこの子たちは傷つきとても苦しむ。その原因が私だとしたら、我が子を守るのが親だ、出せるはずがない。


(けれど、どうにも世界が暗転しそう・・・流石に、ここにいるのは危険だし、ああ意識が・・・)


「フレイン、私を安全な場所へ運んで」


≪っんの、馬鹿野郎!!≫


遠くで、フレインが泣いたように叫んでいた気がした・・・

と、いうことで何の手出しもなくミアンやられるシーン。

え活躍しないの?と思われる方、ごめんなさいじらします。←

だって、今のミアンはカス同然(自他ともに認める)ですから…。


大丈夫、もうすぐ戻ってくる的なことをルーゼ姉さんも言っていたし、たがらくそったれ、と思わず読んでやってください。


ここまで読んでくださってありがとうございました

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