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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
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囚われの神子その5

この話は、実は≪閑話≫と少しリンクしている部分があります。よろしければ読み返してみてください。

「その少女は・・・」


女性と呼ぶには些か幼い面持ちの、神子。ソレイユさんに大切に抱きかかえられてる、時折苦しいのか顔が歪む。


「貴女様が、いづれここに来るということはあの方よりお聞きしていました。具体的ではありませんでしたが、いつか必ず来る・・・と」


「あの方?」


その問いに、ソレイユさんはそれは優しい表情で私を見てきた


「コルデロ・ルゼラ様にございます」


「!?」


どういうことなのか、彼女は300年も昔に現世から姿を消している。どうやってソレイユさんに伝えられたのか。アネッサ姉さまのように残滓となりあり続けたのだろうか、それならば誰かを使って私を呼べばいい。


「既にお姿はございません。私は、夢にてあのお方にお会いしました。きっとこの呪いのせいでしょう。忌まわしき呪いであっても、あの方と一瞬でもつながりを持てたのですから感謝しなければなりませんね」


「夢?それに、呪いだなんて…」


「夢で、あの方がこの娘に何かったとき貴女様がここに来るとおっしゃいました。そして、その通りここへたどり着いた。大丈夫です、私は何も言いません。貴女様が、貴きお方であるということも。既に呪いは最終段階へ入っているでしょう、私の命はもう、後僅か」



そう言ってそっと、少女の頬を慈しむように撫でた。そして、その少女からゆっくりと手を放し、寝かせる。別れを惜しむように、ゆっくりと。手のひらを握りしめる、強く、強く。


「っ血が」


強く握りしめられた手のひら、指の間を伝い少女の服と同じ色をした液体が滴る。ソレイユさんは故意に血を流していた。その血は、下へ下へと流れ落ち、蒼白の少女の色のない唇に落ちた。蒼白に真っ赤に色づく唇は、幼い少女であるにもかかわらず嫌に扇情的に魅せた。―――瞬間、先程まで苦しそうに歪んでいた表情が一気に和らいでいく。



「この娘にも、呪いが施されておりました。貴女様の同属の血に反応して、この娘の中で呪いと血が反発を起こし倒れてしまった。ならば残り少ない私の命、この娘に使っても悔いはない。だって、この娘を守ってくださる方がいるのですから」


「何を言って・・・いいえ、そうじゃない。そういう問題ではないわ。みすみす、見殺しにしろと言うの?その呪いは何!」


見殺しなんて、あの二人で十分じゃないの。結果的に私は、フィアナという少女とオルダンテ殿下を悪から守ることすらできず、殺してしまった。目の前であの時と同じような呪いの人間が、死を前に恐怖すら浮かべることなく在る。それがどれほどおかしい光景なのか、呪いをかけたそいつはどこまで私を邪魔するのかと思った



「―――口に、できないのです。この呪いをかけた人物の名をいうことも、それに近しいことを言うことも・・・できないのです。ニーナは暗示をかけられ今では貴女様を畏れ多くも害そうと考えている。最後の最後で、貴女様のお力になれないこと、そしてニーナを救えなかったことだけが悔やまれる」



そこまで言って、ソレイユさんが崩れ落ちるように倒れた。残りの命を少女の呪いを解くために使った。それゆえに、死期が早まったのだ。ソレイユさんの元へ行き、のばされた手を取る。


「こんなことを、最期に願う私をどうかお許しください。―――ニーナを、助けてください・・・っ!」


力なく、涙を流し訴える人間を前に―――誰が、その願いを否と言えるだろうか。どう助けろというのだ、力もない、呪いをかけたそのものを廃することもできない、無力に等しい私が、この人のために、一体何ができる!


手を、強く握りかえす。口角を上げ、優しく語りかけた



「必ず、助けるわ。――――大丈夫よ、ニコルの子孫は、必ず救う」


「――――――嗚呼、時の・・・魔女様に幸、多からんことを」


―――――――――――

――――


「・・・あれ?」


「目が覚めたのね」



ソレイユさんが眠るように息を引き取った後、数分もしないうちにその少女は目を覚ました。まだ意識がはっきりしないのか、ゆっくりとした動きで声がした私の方を見た



「!!あ、ああ・・・」


一気に覚醒したのか、目を見開く。そして、私のそばで横たわるソレイユさんを見つけ何かを理解したかのように口を開いた


「命の脈動、尽きる命、芽吹く自然―――魔女の、降臨」


己の、呪いから解放された命

隣で横たわる燃え尽きた命

私の中で覚醒を始めた水の精霊

そして、私の存在


凛とした姿で、私に深く礼をする。先見の能力は、いつかソレイユさんが死することも分かっていたようだ。頭をあげると、少女の背後に気配を感じた


その姿は徐々に鮮明になっていき、ゆらゆらと揺らめきながら存在が明らかになった。この少女の力を媒介に、現れたようだ



≪随分と、姿が変わったんじゃない?昔はあんなに綺麗な銀髪だったのに≫


「―――ほんと、馬鹿っ」


≪ミアンは知らないんだな、馬鹿といった方が、馬鹿なんだ≫



ルゼラ姉さん、いいえ・・・そういえば彼女のことは皆こういってたっけ。ルーゼ姉さん、貴女は時が流れても、紅色の髪と焔の瞳は紅蓮と呼ぶに相応しい美しさ


いつかのやり取り、ずいぶんと昔にもこんなやり取りがあったなぁと、ルーゼ姉さんを前に緩慢に動いた



≪大きくなったわね、貴女は何を見てきたのかしら≫


強い眼差しの奥、情熱的な存在は全ての負を燃やし尽くして私に安らぎを与えてくれる


「全てを話すのに、半年はかかるわ。――帝国にリーナ姉さまの御霊があったわ、北国でアネッサ姉さまにも会った。そして、南国で、ルーゼ姉さんに今会ってるわ」


≪あらら、私は三番目かー。でもユシュカより先に会えたからビリじゃないわね―――沢山、辛いことがあったでしょう?貴女の苦しみを私がすべて燃やし尽くしてあげる。だから、前に・・・進みなさい≫


立ち止まることを許さない、ルーゼ姉さんの力強い言葉は私をこれからの不安から守ってくれた。たぶん全てを理解しているのだろう、彼女にも先見の能力がある。だからこそ、私を案じてくれた


「まだ、困難が待ち受けているのね」


≪乗り越えられる、困難よ。ぶつかっていきなさい、大丈夫・・・みんなが貴女を守っている≫


ルーゼ姉さんは、少女を見て私に一言


≪いいミアン、私はこの子の力とニコルの子孫であるその女性の最期の力を媒介に顕現しているからもうあなたの前には現れることはできない。だからよく聞いて、一度しか言わないわ≫



そうか、ソレイユさんは私のためにもその命を使ってくれたらしい。最初の印象はおかしな人だと思ったけれど、もっと早くから出会いたかったな。ルーゼ姉さんと会わせてくれてありがとうと、そばに横たわるソレイユさんに心の中で礼をした


≪一つ、この少女を守って。何れこの少女がミアンの役にきっと立つ。二つ、決して諦めないで。貴女の力は遠くない未来で戻ってくる。ああ、時間がないわね、もう消えかかっている。愛しているわ、可愛い子。≫


ルーゼ姉さんが私に近寄ってくる

泣いている姉さんを見たのは、これが、初めてだ


私のことをぎゅっと抱きしめる。実際には触れることはできないのだけれど力いっぱい抱きしめようとしていることがちゃんと伝わってきた。


≪貴女を置いて去ってしまってごめんなさい、貴女の成長を見守れなくでごめんなさい、みんな貴女を愛しているわ。――――最後に≫


突然、声色が変わった

激しく燃える焔のように、感情をあらわにした彼女は私を見つめ、言葉にする



≪――――三つ、いい・・・決して、王妃を、許してはいけない≫


そう言って、ルーゼ姉さんは姿を消した。何故最期に言う必要があったのか、それは、その内容が何よりも大切だったからだ



王妃を、許すな

その内容が、どれほど核心に迫っていたのか・・・私は、このときはまだ気づいていない

今回は、割と短め。

そして本日も急展開・・・ご、ごめんなさい。


連投しているおかげで徐々に、軌道修正かけられるようになってきました。恋愛要素今のところ薄いですが、もうそろそろ出てくるかなー、というかわりかしシリアス要素強いかなと、苦手な方すみません。一応HappyEnd目指していますので(;´・ω・)


ここまで読んでくださってありがとうございました

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