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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
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囚われの神子その4

ここでの立ち話もなんですから…と案内されたのは奥の大広間のような場所。ガラス細工の施された繊細で美しい一室に通された。


傍に控えていた、侍女・・・服装からして巫女だろうか、その女性がお茶菓子を出してきた。ふんわり香る、紅茶には一輪小さな花が浮かべられている。鎮静の効果をもたらす花だ、先程のことがあった手前、落ち着いて話し合いたいという姿勢が伺える。



「改めて、ようこそお越しくださいました。6代当主に代わりまして、前代のソレイユ・コルデリアが貴女方を厚く歓迎いたします。」



ちなみに、ニーナ嬢は興奮が冷めやらない様子だったので、ソレイユさんが眠りの魔法をかけ、怪我の治療をするという理由で医務室へと連れていかれた。なんとなくだけど、彼女には暗示の魔法がかけられている気がする。



北国の、干渉の魔法にとてもよく似ている・・・どっちにしろ、あまり好まれる魔法ではないので相手は相当の悪意を持っているだろう。いまだ確信があるわけではないが、時の魔女に対する異常なまでの執着心は警戒するに越したことはない。



「アルファジュール帝国より、陛下の書簡を預かり代わって参じました。陛下直属部隊第四階級ミアと申すもの。隣は私付の女官リリーです。」


「ミア様付の女官、リリー・チェルファンと申します」


私の後に続いて、リリーも挨拶を交わす。先程とは打って変わって商売笑顔とでもいうべきか、にこにこしている。



「堅苦しい挨拶はここまでと致しましょう、何なりとお聞きください。流石に国を傾けるような質問にはお答えできかねますが、それなりのことならば全てお話しできるところまで話しましょう。」



そう言って微笑むソレイユさんは、本当にニコルさんにそっくりだった。笑顔の中に、スキのない・・・警戒を感じられる。相手を知るためにはまず自分から開示しなければならないようね。


「いいえ、きっと皆さんが疑問に思っていることを先に話してしまいましょう。既に隠すべき事柄ではないのですから――――ずっと、疑問に思われていたのでしょう、私の存在が」



そこまで言って、視線が集まる。やはり、気にしていた。当たり前だ、あの状況で確かに混乱はしたものの各々耳にしたはず。私が、分血か否かという話だ・・・



「6代目当主ニーナ様の仰る通り、私には時の魔女と同じ血が流れています。それ故、この度陛下は私に書簡を預け、ここへ行くよう指示されたのです」


(嘘は言っていない。私は確かに、時の魔女と同じ血が流れているのだから)



一気に静まる、部屋で最初に口を開いたのはソレイユさん。眼光を鋭くし、私を見定めるかのごとく、ゆっくりと言葉を発した。



「今になって、なぜとお聞きしても?」


静かに暮らしていればいいのに、なぜ今になって陛下に仕えるようなことをしているのかという意味だろう。答えはうっかり、だ。まさかアッシュの血を引く者と出会うなんて思いもよらなかった。あの一瞬で気が付くとも思わなかった、陛下がなぜか私の真名を知っていた・・・全てが誤解から生まれた必然としかいいようのない流れだ。


「私は、山の麓の小さな村に住んでおりましていつものように街へ商品を卸しに行った際、宰相様にこの力を見初められ陛下に仕えるに至ったのです。少しでも、村にいる人々に楽をさせてあげられるなら・・・と、今では自身でももったいないほどの地位を頂いていますが」



嘘八百とは、このことを言うのではないだろうかと独り言ちる。前半は真実も混ざっているのだから、いいだろう。


「どのような魔法を得意とされるのですか?」


「私は、風とみ――――」


ドンドンドン!!


途中、扉を勢いよく叩く音が私の言葉を遮った。かなり急いでいる様子で、扉の前に控えていた二人の騎士もソレイユさんに伺いの眼差しを送っている。


「騒がしくて、申し訳ありません。よろしいですか?」


「お気になさらず」



私の言葉に、扉の奥にいる人物に入室の許可を出すソレイユさん。扉があくと同時に、外から勢いよく一人の男性が入ってきた。


「ソ、ソレイユ様!!神子様のご様子が!!」


「落ち着きなさい、神子様がどうした」


「神子様が、お倒れになりました!」


目の前で広がる、わからない会話。とりあえず、急を要する話であることに違いはないだろう。ソレイユさんに行ってくださいと促し、彼女は深く頭を下げて部屋を後にした。


―――――――――――

――――


「南国には、いくつかの教会があります。その中でも、コルデリア家のある王都教会には神子と呼ばれる者が存在しているようです。神子と呼ばれるものは代々類稀なる力を持っているようですよ。今日こんにちの神子は先見の能力があるとか・・・」


扉の向こうに控えている騎士には聞こえないような声で私に説明をしてくれたリリー。先見の能力か…それは凄いなぁ。



魔法とは違った、突然変異の能力。大体は魔女に近しい人間に現れるものだ。神子と呼ばれるその者も、私たちに何らかの関係性があるような気がする・・・そこまで考えて、不意に体が軽くなった。


(これは・・・)


「あら、魔女様。瞳の色が・・・蒼くなっている気がします。どうかなさいましたか」


「―――なんで突然」


ティウォールが急激に魔力を回復し始めている。だからだろう、体にかかる負担が一気に減って、体が軽く感じられたのだ。そして、私の瞳が蒼くなったのも、奥で眠っていたティウォールが徐々に表に出始めている証拠だ。



カシャン・・・

小さな音を立てて、テーブルに置かれていたガラス細工の花が砂のようにさらさらと崩れた。その音を皮切りに、あちらこちらでガラス細工が砂のように消えてゆく。―――まさか


≪ううー、一気に魔力を吸い過ぎて・・・酔いそう≫


ティウォールがそう呟いた。まさか、ここにある多くのガラス細工は魔石からできていたのか。身近にあった魔力を無意識に吸い上げていたティウォールはここに散らばる魔石にも反応して吸い取った。そして、ここにある魔石のほとんどが加工されてはいるものの純度の高い魔力を秘めていた。


「後で弁償とか・・・絶対無理だからね。どうにかしなさいよティウォール」


≪漸く、ちゃんとした再会なのだからつれないことを言わないで。お元気そうで何よりです。貴女と話せるまでに回復したのは大変うれしいのですが…一刻も早く彼女の元へ行ってほしいのです≫



そこまで言って、リリーが聞きなれない私の言葉に反応した


「ティウォール?」


「ああ、気にしないでリリー。この瞳も、もうじき収まるから。ちょっと待ってて」


さっきまでの弱弱しいティウォールはどこへ行ったのか、滑らかな口調になって軽快に話始めた。しかし内容は、あまりいいものではないようだ。



『どういうこと?彼女って・・・』


≪彼女は、貴女にとってもとても大切な存在に違いありません。このままだと貴女の純粋な力に気圧され彼女の力が暴走してしまいます。彼女はここに留まるべき存在ではない、自由になりこの世界を見る必要があります≫


神子は、どうやら女性のようでいつになく心配している。それに、私にとっても大切な存在だなんて…やはり私たちに近しい存在なのかもしれない。


『ノヴァ』


≪ヒメサマ、何時でも僕の能力を解放するよ。力になる≫


急に勇ましくなったものだと思いながら、成長が早いなと少し寂しい気持ちになった。どうやら、ここで大人しくソレイユさんの帰りを待つ事はできなくなったらしい。堂々とここを出ていくことは、残念ながら扉の前にいる騎士がそうはさせてくれないだろう。



「リリー・・・少し、この部屋を出てもいいかしら」


「―――また何か、あったのですね?危険と判断したら、強制的に戻りますよ。そして、30分以内に戻ることが条件です」


「察しのいい、本当に怖いにキレる女官ね。リリーは。決して干渉せず後押しをするその姿勢は私でも感服するわ。ありがとう、30分でちゃんと戻ってくるわ」


――――――――――

―――――


ノヴァの能力を使い、姿をして部屋を後にする。30分以内にソレイユさんが戻ってきてしまえば大変な事態は免れないだろうが、それ以外のことならリリーがどうにかしてくれるだろう。



『ティウォール、本当にこっちであっているの?』


≪ええ…もう少し先です≫


ティウォールの案内のもと、奥へ奥へと進む。綺麗な庭園を横目に、豪華な一室を通り過ぎ奥へと進んでいく。この先に神子と呼ばれる女性がいるのだろうか、進んでいくうちに離宮のような入口の前にたどり着いた


(結界が、張ってある)


でも、この結界は何者もはじくような結界ではなく、悪意があるかないかで判断する結界のようだ。この結界を通り過ぎても何事もなく通り過ぎることができれば相手には感知されないタイプの魔法。



≪この先に、彼女がいます。急いで、衰弱している≫


――――――――――

――――


「――――この先だっていうの?」


というか、ここへ来てから誰にも会わない。正しくは、この結界の中に入ってから、だけれど。それまでは白い礼服を着た神官と思われる者たちがわらわらと結界の前にいた。つまり、この結界は神子と呼ばれる女性が張ったものなのだろう。


目の前に聳え立つ嫌に白い扉

絡まるように、伸びる黄金の蔓

そしてその扉で、大きく羽ばたく巨大な赤い鳥


(扉の奥から、微かだけれど人の気配がする)


ノヴァの能力を限界まで引き出して、私はそっとその扉を押した・・・そして、その先にいた



真っ白な空間の中央

真っ赤な神子服を着た少女が、ソレイユさんに抱えられて――――まるで死んでるかのように、ぐったりとしてた


思わず、ノヴァの能力を解いてその少女の元へ近づいて行った。ソレイユさんがこちらを見るも、なぜか落ち着いた眼差しで再び少女の方へ視線を戻した


「この少女はね・・・本来はここにいるべきではないのですよ。貴女様が、ここに来た、それは―――コルデロ・ルゼラ様のお導き。貴女様は、ただの分血ではございませんでしょう?」


そういって、ソレイユさんはそっと涙を流した


急展開?いつものことです←

頑張って、更新します。はい。あきらめないで読んでくだされば幸いです


拙い文章ではありますが、ここまで読んでくださってありがとうございました。

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