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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
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囚われの神子その3

「失礼ながらこれより、お二方には監視をつけさせてもらいます。よろしいですね?」



ニーナ嬢は、そういって警戒の眼差しで私たちを見てきた。特に私に対する目つきは以前と違ってあからさまな物言いではないが、内心穏やかではないのだろう、やはり軽蔑にもとれる目つきをしていた。口調もやや上からで、内容もこちらに決定権はないようにとれた。


そして何より、その監視役と思われる二人は・・・


「構いません。ですが念のため、確認しておきたい。なぜ私たちに監視が付くのでしょうか」


ちらりとその監視役二人を見る

一人は、明らかにさっき人を殺してきましたとでも言わんばかりの表情で、もう一人は薄ら寒い笑顔を顔に張り付けていて、胡散臭い。リリーも、考えるものがあるようで、若干顔が引きつっている。当たり前だろう


「先程、遠くの森でいざこざがありまして。いえ、些細な事柄なのですが、こちらも一応気に留めておりまして…ええ、別にお二方を疑っているわけでは毛頭ございませんが、他国からのお越しとのことでしたので護衛もかねて・・・ということですねぇ」


どこか砕けた口調の、胡散臭い笑顔のその男。そして、客人の前であるというのに鋭い眼光をこちらに向けてくる男。


(あちゃー・・・完全に当事者だね私たち)



先程の森で、私たちの後をすごい速さで追ってきて、西国の山賊にマッドナイトと呼ばれていた――――政府第四騎士団


コルデリア家の番人とは呼ばれていたけど、それにしてもここに来るのが早すぎではないか。あの戦いが、あの後どうなったのか、それはここにいる二人が証明している。双方互角にも見て取れたが、やはりこの男がいるのだから遅かれ早かれこちらが勝つことに変わりはないようだ。



上空から飛んできた私たち、王都で門を通る際少し時間はとられてしまったが数分だ。それにあの後私たちのあとを追ってきた気配はなかった。となると・・・この王都にあるコルデリア家と、あちらにあったコルデリア家が異空間魔法で繋がっているということになる。



(異空間魔法は、魔具を媒介に私が魔女だったころ作ったものだ。一つを護り人であるアッシュに、一つを国王に、そして二つを同胞の魔女に渡した。その一人がルゼラ姉さんだ)



異空間とは、時間の流れに干渉されない。それは私の、時の魔女としての力でのみ作り出すことのできる魔法の一つだ。リスクがあるとすれば、その異空間を通るとき、私が認めたという証のようなものがなければ永遠と彷徨うことになるというだけ。


私は、ルゼラ姉さんにRubyと呼ばれる宝石を証として渡した。姉さんによく似合う真っ赤な宝石。話は戻すが、つまりはその宝石をこの二人が所持しているということになる。


「護衛・・・ですか。ならば仕方がありません、失礼しました」


「ご理解がはやくていらっしゃる、くれぐれもよろしくお願いしますねぇ」


と、いうかこの男見覚えがあるという以前の問題でしょう。さっきは軽く流してしまったけれど、この男まさか気づいてないとも思わない。


外見は、全く異なるけれど魔力の気配はあの男のもの。なぜこんなところにいるのか・・・東国の王、カザエル・ダンジュール。私に会ったときは、エルダンと名乗って、堂々とアルファスの涙を奪っていった男。



だがあちらは、私に気づく気配すらない。おかしい、確かに気配は同じなのに、どこかズレが生じている。より一層気づかれないよう注視する。そこではたと気づく、彼はリーナ姉さまが守護した国の、国王だ。リーナ姉さまの象徴は水系統。人を惑わす幻影の魔法にも長けているはずだ。


(私の目の前にいるのは、カザエル・ダンジュール渾身の水の分身ってことか)


どのような経緯で、彼のもとに赤い宝石が渡ったのかはわからない。あの時ルゼラ姉さんに渡した宝石はかなり大粒のものだったから、砕かれたのは間違いないだろう。二人一緒に空間魔法を通ることができたのだから。その欠片を東国の王は持っている。


私の、魔力を縛る血瓶と、ルゼラ姉さんの宝石の欠片。なるほど、厄介な相手に私は力を奪われたらしい。子孫だろうがなんだろうが、面倒なことになった。



だから、気が付かなかった。あまりに深く考え事をしていたせいで、ニーナ嬢が私に向かってきたことを。



ガキンッ


「突然にこのような行為、穏やかではありませんね。我々は帝国の使者としてここに正式に訪問をしているのですが…この方に刃を向けるとはなんと愚かな」


「っリリー!」


私に短剣を突きつけてきたのは目の前を歩くニーナ嬢、それを私の前に出てその剣を同じく短剣で素早く受け止めたのは、リリーだった。



「どいてください、貴女を殺す理由はない!私はその後ろの時の魔女の分血を葬りたいのです!」



ニーナ嬢のその台詞に、屋敷内にいたものが一斉にこちらを振り向くのが分かった。オズウェルという男と、分身の彼も驚いたように私を見る。だが、次の瞬間には、その視線が一気にリリーに向けられた。なぜか、それは・・・



「ふぅ・・・、南の魔女の護り人が住む神殿と伺い、いわば魔女の御前であるといっても過言ではない場所で、何より帝国からの使者という立場上こういった行為は許されないとは承知の上ではありますが―――その口から今、何を言った。このお方がどのような方か知った上での物言い。万事に値する、刃を向けた罪、その命をもって許しを乞うがいい!」


温和なリリーなどまるで幻だったかのような、変わりよう。そしてニーナ嬢に放たれる閃光、紛れもなくリリーは今魔法を使った


―――目にもとまらぬ速さで



ガッヒュッ、ドォォオン!!

ニーナ嬢が、壁に叩きつけられた音が、響き渡った


「貴様、我らが護り人に傷をつけたな!」


そういって今度は、オズウェルという男が剣を抜きリリーに向かって切りかかった。背後からの攻撃にもかかわらずリリーはそれを紙一重で躱し、振り下ろされた剣を持つ手を素早く掴んで、大地の魔法重力強化で下へと叩きつけた


ガンッ!カランカラン・・・

強く叩きつけられた鈍い音と、剣が手から離れ地面に落ちた音がした


「あちゃちゃー、これは弱った。どうしましょうかねぇ」


そう言いながら笑ってガスのようなものを発生させた。炎の魔法だろう、黒い煙が辺りを覆う。そのせいで、視界が一気に悪くなった



ヒュッ

どこからともなく、こちらに攻撃が仕掛けられる


『炎の眷属よ、示し者を灰塵となせ!』


ゴォオオオオ!!

どこからともなく聞こえてきた呪文は、炎の上級魔法。声の主は、先ほど壁に叩きつけられたニーナ嬢。腐っても護り人の家系。


『大地を揺るがせ、破壊せよ!オーバー・レイズ!!』


ドゴッガァアン!!

耳を劈く様な、激しい音が鳴り響いた


あの時とは違う、大規模なオーバー・レイズだ。穏便に内部を探る?どうにもこうにもあちらから仕掛けてきたんだ、穏便になんて済むはずがない。


リリーの魔法で、視界が晴れ土煙が舞う。痛む視界の中で見えるリリーの背中、佇まいが明らかに女官の域を超えているわ。



「チッ・・・フレイン、風を」


訳の分からない展開になるのは十分だ、フレインに風を熾させ一気に視界を良好にする。風によって舞い上がる残火と灰と粒子の砂


パン――――パンパンパンッ


「実にいいものを見させてもらいましたよ。帝国からの使者殿、いやはやお強いですね」


聞いたことのない声が、リリーに賛美の言葉を贈った。この状況で、突如現れ酔狂に拍手までして賛美する。どこまでいかれた連中なんだと心の中でそう思う。


新たに表れたのは、深紅の髪と韓紅の瞳を持つニーナ嬢をあと20ばかり年を重ねたかのような容姿の女性が現れた。


誰だろうか、愚問だ。

この状況で、動じない姿とその容姿。彼女は、先代護り人であるソレイユ・コルデリアだ。


「我が娘の愚行、代わりに私が謝罪します。どうか、寛大なお心でお許しください、帝国の使いの皆様」


すっと頭を下げた。洗練された無駄のない動き、それでいて年に似合わず騎士と同じようなスキのない仕草。リリーも頭が冷えたのか、私の背後に戻り静かに頭を下げた。


「頭を挙げてください、こちらこそ・・・魔女の御前で愚かな行いをしたことに変わりありません。」


私の言葉に、静かに頭をあげるソレイユ・コルデリア。彼女の後ろで庇われるように床にうずくまるニーナ嬢と、オズウェルという男。ソレイユの隣で薄ら笑いをする東国の王の分身。


(大層、混沌とした、あまりに急な展開で・・・あらまあ吃驚。感情が追いつかないわ)


「帝国からの使者が来たと連絡があり、急いで駆け付けたのですが…偶然聞こえてしまったのです。本当に貴女が時の魔女の分血で?」


御淑やかな微笑み、だがしかし瞳の奥で揺らめく――――私を品定めしているな、この女・・・。言葉に圧力をかけてくる、この部屋一帯がこの女の鋭い気配に気圧される



ニーナ嬢とはまるで違う、本質的に純度の高い、完成された護り人。ニコルさんに近い雰囲気だ、参ったな。こちらも本気であいさつをしなければいけないらしい


「此度は、陛下より書簡を預かり正式にこの神殿への許可が下ったはず。我々もこの展開には大層驚いているところ。まずもって、この行為は帝国への宣戦布告と、とってよろしいか。急いで駆け付けた割に、両手を合わせて音を鳴らす余裕があるとは、そして何より・・・護り人が分血であるかないかも見分けられないとは言いますまい?最後の問は些か愚問でしょうに」


キッ――――――――ン

糸が張り詰めたような、心臓を鷲掴みにされたかのような重く静かな空気が漂った


私の返答に、静かに目を閉じゆっくりと瞼を持ち上げたソレイユ・コルデリア


「ご無礼を、お許しください。寛大なお心で、貴女様の慈悲を賜りたく存じます。帝国より参られし御方々よ。此度の無礼、コルデリア家5代目当主ソレイユ・コルデリアの命をもってお許しくだされ」



「「ソレイユ様!!」」


頭を下げるその姿に動揺する、ニーナ嬢と騎士。事の発端はニーナ嬢なのだから、とは思うが彼女も6代目護り人。互いの体裁もある、ソレイユ・コルデリアの行動は賢明だといえる。



「どういたします」


リリーが小声で問うてきた。あくまでもここに来たのはコルデリア家の現状を探ること。今の段階で分かったことは、ニーナ嬢が明らかにおかしいということと、それを知りつつ前当主が庇うように存在するということだ。


「ならば、いくつかの質問に答えていただきたい。――――――陛下の書簡にもある通り、本日こちらにお邪魔したのは互いの友好を深めるものであってこのような行為はだれも望んではいなかったのですから。穏便に、話し合いをしようじゃありませんか」


内心、毒づいた


(漸く、話の場を設けることができそうだわ。陛下は、本当に厄介なことしか頼まないのね。ニーナ嬢の行動も訳が分からないし、あの騎士はおいておいて、東国の王は本当に目障りだわ。―――面倒ね、本当に人間は)


何か、長くなりました。

東国の王は以前ミアンがミアとして接触していますね。彼の能力の一つ分身は一度作り出し、そして分身に行動してもらい再びその分身を吸収したときに記憶も取り込みます。なので、分身はミアと会った記憶がないのでわからない・・・という設定です。これ、超複雑な設定だと思いますが、拙い文章からうまく拾ってください←え( ;∀;)


そして現れたミアンの魔女としての能力の一つ!漸く出せたー、ここまで読んでくださってありがとうございました

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