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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第6章
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囚われの神子その1

途中、視点が変わります

「フゥ君、私を皆のいるところまで運んでくれない?どうにもこうにも、全身に力が入らなくてねぇ…」


≪心身ともにババアってことか。仕方ない、優しいから運んでやるよ≫


生意気な口をききながらも私を支え風を纏い空へ上る。ティウォールがフゥ君の魔力に反応して、無意識に魔力を吸収しようとしている。実態を保てないほど弱り切っているティウォールを知っているからだろうか、フゥ君も私を運ぶための魔力は維持しながら時折魔力を放出している。


どれほど弱り切っているのか、ティウォールの強さを私は正直言ってわからない。フゥ君が同じように弱り切っていたとしたら復活するまでに必要な魔力の総量はリュヴァー100体分と考えていい。総量は強くなるごとに大きくなる。強ければ強いほど魔力を無尽蔵に貯めることができるけれど、その分使い過ぎればまた満たされるまで沢山の魔力と時間がかかる。



アネッサ姉さまをはじめとする、他3人の魔女もその姿を現世に留めることができずに魔女の核、御霊となって眠りについている。しかし眠りについていたからと言って魔女の魔力がそうそう満たされることはない。魔力を持っている人間や動物、生きとし生けるものが御霊のそばにあったなら、無意識に魔力を吸収してしまう。それを防ぐために、御霊の周辺には特殊な結界が施されるのだ。核を傷つけられないようにするためでもあるけれど。


「あれから300年・・・目覚める気配は皆無」


≪まだ大丈夫なのか≫


長期間の眠りは、消滅を意味する。核となっても魔力の放出はある。放出される魔力以上に吸収しなければ、核の魔力は枯渇していしまう。核が消滅すれば然るべき時にかわりの魔女が誕生する。ならば他4人の魔女は早々に現世から去るべきだと思われがちだが、代わりの魔女が誕生するまでにかなりの時間がかかる。そして――――


4人の魔女を作るために膨大な魔力が必要となる。それこそ世界の半分を消滅させてしまう。魔女が創造主というのはその力で消滅した半分を創り直すということ。


私は、代わりの魔女が生まれてくるまでこの世界を一人で支える自信はないし、仮に核が消滅したとして世界の半分が消滅してしまうところもみたくはない。だからこそ私は、私の力が戻ることを切に願う。



(私の力さえ戻れば、他4人の魔力を完全に満たすことはできずとも、ある程度、現世に実態を保てるほどになら回復させることができるのだから…)



フゥ君の暖かさを感じながら静かに口にする


「あと4回、季節が廻れば…わからない」


そろそろ、この邪魔な封印を解いてもらおう。東国に行けばきっとどうにかなる。まだ大丈夫だろうと悠長にとらえていたが、実際二つの御霊を目にして現状は芳しくないということを知ってしまった。


流石に自分の行動の鈍さに驚いたものだ。陛下との一件がなければ私はあの森から出ることなく、魔女の消滅をただ目の前で見ることしかできなかっただろう。



「早くこの国での仕事を終わらせて・・・私も動こう。その時は手伝ってね」


≪当たり前だろ≫


―――――――――――

――――――





「神子様、本日のお言葉を賜りたく存じます」


簡素な一室

しかし、ところどころに贅を尽くした品を散りばめた、部屋で恭しく扱われる一人の少女が、見知らぬ誰かから神子の言葉を聞きたいといわれたのが私だ。


真っ赤な神子服を着せられて、真っ赤な花を一輪手に持ち一日を通してさして動くことなく訪れる誰かの為に言葉を贈る。今日もいつも通りの言葉を発そうとした。


「現状は変わらず皆今日を終え――――」



そこで、突然全身に衝撃が走った。頭の中で今までにないくらい物語が大きくうねりをあげて動く。私の言葉が途中で途切れたのを不審に思ったのか誰かは私に何か声をかけているがそれどころではない。


なにが、何が起こっているのかわからない。こんなこと、神子になってから初めてだ・・・でも、一つだけわかることがある



「――――世界の、変革が始まろうとしている」



命の脈動、尽きる生命、芽吹く自然――――魔女の、降臨


私の意識は、そこで途切れた。



――――――――――

――――




私が神子になったのは、6歳になった時。王都から少し離れた、少し栄えた少し大きな街。魔女の加護を受けた存在は神子して魔女に、そして世界に仕える義務がある。私は南の魔女様と供にあったという真紅のリュヴァーの羽をもって生まれたそうだ。



だから6歳までは家族で普通より少し特殊な子供として不自由なく過ごすことができた。6歳からは神殿に入らなければいけないので、家族とともに過ごすことはできなくなったが、引き離されるわけでもなく時折家族の住む家に帰ることもできた。



しかしいつからか、ふとした瞬間に自分の知らない何かを見ることができるようになった。そしてあの真紅の羽がいつしか一輪の花となった。その花は枯れることなく、凛と咲き誇っている。私以外のだれかが持つとその花は羽に戻る。不思議な現象は王にまで伝わった。



「お主が見たその何か・・・余に一つ教えてはくれないか」


そう陛下が仰ったので、つい最近見たことを話した


「山で沢山の足音が聞こえます。誰かが笑っていて、泣いている人もいます。空が茜色で半月の月が見え隠れしています」



陛下は私に、ありがとうと言葉を下さりそしてなぜか神妙な面持ちのまま部屋を出て行かれた。他の神官も不思議そうな顔をしてその日はほかに何事もなく夜を迎えた。なんとなく、窓の外空を見上げれば・・・


(明日は半月かなぁ)


そう思いながら眠りについた。事が動いたのはそれから数日後・・・


西と南の国境付近にある山で山賊が出たそうだ。南から西へ行く商人と山賊数名が死んでしまったが、駆け付けた南の騎士によって商人は全滅を免れた。


私が見たのは、未来。沢山の足音は山賊が商人を殺そうと走る音。笑っているのは商人を殺し、手に入れた商品を見て喜ぶ山賊。泣いている人は仲間の死と己に降りかかるであろう残酷な末路を憂いている商人だった。



再び陛下が現れて、私は王都の神殿に連れていかれた。そして、見た。私の未来。もう家族にも会えないことを。私が今後この神殿でどうしていかなければいけないかも。


幸いにして、花さえ手に持っていなければむやみやたらに未来を見ることはないらしい。毎日訪れる王宮の使いの人にその日一日起こるであろうことを伝える。そう、今日もそうだろうと思っていた



目の前にいるのは―――――誰?

一か月ぶりの更新。

それでも読んでくださった方、画面の向こうから愛を叫びます。


ここまで読んでくださってありがとうございました

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