表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第5章
123/151

蒼き精霊

リニューアル!!!

いらしゃい、私のパソコン!


何を言っているの?と思われる方申し訳ございません。ようやく新しいパソコンが買えたのです。では、お待たせしましたどうぞ


≪で、どーするの?≫


ノヴァの少し気の抜けた声が、この切羽詰った緊張感を台無しにする。確かに攻撃が当たるのだから早くこの場から立ち去るのが一番だろう。気配も存在もノヴァのおかげで消えている、そして双方がお互いのことしか眼中にない今がチャンスだ。



(でもこの女性の後ろにはきっと、あの子がいる)



三人組の、妖艶な美女と思われる女性が引き連れる集団の背後にある道。かすかに水の気配を感じるのだから間違いなくあの子、ティウォールがいる




(ごめんなさいねリリー、もう少しだけ付き合って)



心の中で謝罪をしてノヴァへと意識を向ける




『ノヴァ、この先に感じる気配はある?』


≪―――うーん、なんとなく?弱いけど、確かに僕に近い存在を感じるよ、どうして?≫


『うん、ノヴァ…そこまで行けそう?』


≪あは、姫様ったらそんな冗談いらな――『行ける?』…えー、嘘でしょ逃げようよ怖いよー≫



尻尾が完全に後ろ足の間に隠れてしまっている。本気で怖いのねこの子…どうしよう。せめてこの子に触れていなくても姿が消せれば私一人でも行けるのに



『ノヴァ、あなたから手を放してしまえばこの闇は拡散してしまうの?』


≪姫様なら問題ないよ、僕と契約した時点で僕の能力は姫様と共有される。でも今の姫様魔力が感じられないから相当の負担がかかってしまう。だから僕に触れていてほしいんだ≫



―――能力の、共有?

ノヴァから発せられた内容に、驚く私。確かに今まで私は魔力が無いからと、生まれ持っての性質しか今はないのだと思い込んでいたけれど…実は私も魔法を使える?



色彩の魔法と自然の恩恵以外に、フレインの風と、ティウォールの水、更にノヴァの闇…今のままだと私の体に相当の負担がかかるというリスクはあるが半不死身な私にはどうってことない。



(これなら、いける)



『ノヴァ、よく聞きなさい』



私は真剣な目をまだ生まれたばかりのノヴァに向け、そして一つの頼みごとを口にした



――――――――――――

――――――



「んふふ、もっと血を!ほらほらほらー、泣いて跪きなさい!」


ガッ―――ゴォオ


「下品な女性は嫌われますよぉ」



ドンッ、ガッガッ―――パンッ


背後で魔法と、何か武器のようなものがぶつかり合う音が聞こえる。既に戦いは始まっていた、しかし双方の攻撃が当たることなく私はその先の道を走る…暫くすると背後の喧騒が聞こえなくなるほどまで道を進んだ




そう、今私は一人だ

リリーとノヴァは先にここから出るよう指示をした



『いい、ノヴァは彼女を連れてここを出なさい。私は用事を済ませてからすぐ行くから。私が戻るまで外でリリーを守りなさい』


その言葉を聞いてノヴァが嫌だと吠えた

私たちの会話が聞こえないリリーも、急に雰囲気が変わったことに心配そうな表情を向けてきた



≪嫌だ、なんで姫様を置いていかないといけないの?僕、強いよ!本当だよ、信じて。僕も行く、怖いけど行く!まだ生まれたばかりだけどちゃんとした思考回路ができて、いてちゃんと考えられ、てちゃんと、ちゃんと!≫


今にも泣きだしそうな眼をした


そして――――


≪もう、あの光景は見たくないんだ≫


(―――この精霊)



〔―――では…が、――――務め…アネ―――さん〕

〔しっかり――――て…さい〕


不意に思い出す過去

そうか、この子は私の記憶も共有してしまったのね



懐かしきあの日の記憶

全ての歯車が、音を立て軋みをあげたあの日…そう、300と少し前まで遡る



『大丈夫、すぐ目の前にわが子がいるの。助けない親がいる?ノヴァ、行きなさい。これは命令よ、これ以上私を煩わせないで』



≪姫様≫


『信じているわ、リリーを守って』


これ以上の会話は無用と意識を全体へ向ける

もうノヴァの声は私には届いていない



リリーを見て、簡潔に言葉を紡ぐ


『ノヴァと一緒にここを出よう、私は用事が残っているからすぐにはいけないけれど、帰るまでノヴァと待っていて』


『魔女様、それは――――いいえ、これ以上何を言っても無駄のようですね。わかりました、先に行ってお待ちしております、早くお戻りになってくださいね。陛下にばれてしまいます』



何かを口にしようとして、開きかけた口を笑顔に変えた。察するのが上手い女官だと、出来たものだと感心する



『すぐに行って、帰ってくるね』


その言葉とともに私は自らの意志でノヴァから手を離し、闇を纏うような感覚を意識してティウォールのいる場所へと足を進めた



――――――

―――




どんどん水の気配が高まってきてる

どこから、南の国らしい暖かな空気が流れ込んできている



奥に来ているはずなのに徐々に明るくなっているのを考えると、先ほどの急な光と関係していることが分かった



両側が、先ほどまで壁だったのに対し今は歪んだ鉄格子が並んでいた

ほとんどがボロボロで錆びついているが、壊れている様子もなくつい最近まで使われていただろうと思われた。



―――鉄格子の向こう側には簡易ベッドがあり気持ちばかりの布きれのような布団があった。そこには、既に人ではない形をした何かが、苦痛の中でこの世の終わりを見ただろう存在が多く放置された状態だったからだ




(惨いことをする、いまだに恐怖と復讐の怨念がびっしり染みついて離れていないじゃないか)




早く連れ出してあげたい

ティウォールだって、自由と規律を何よりも尊ぶ。水はそういうものだから…



「どこにいるの、私の子」




ポツリとまるで水が一滴落ちるような、小さな声がこの空間に広がり反射することなく、しみこんでいった―――はずだった



ザッザザ


≪―――ミアン!≫


ノイズとともに、はっきりとフレインの声がした

訴えかけるような、早く気づけと言わんばかりの声



ハッとする

その場で立ち止まり、フレインの声を探すがもう声は届かない



ふと、目の前にある同じように変哲のない鉄格子が目に入った

だがかすかに…その一帯は水のようなものの跡があった



(まさか)


そっと鉄格子に触れる、ボロボロで錆びついていて、赤銅が手につくのも構わずその先にあるただの壁を凝視した



「ティウォール…聞こえている?」



ゆらりと、空気が揺らいだ気がした

あっているのならば、ともう一度声を発する



「ティウォール、あなたはまだ消えてはいない?」



更に空気が揺れる

水の、気配がした



(姿も表せないほど、ずいぶんと弱り切ってしまったのね)



鉄格子を見て、フレインの能力を共有する

あの子の力は、風。でも、今ほしいのはより鋭く、研ぎ澄まされた風



シュッと切れのいい音がした

次の瞬間には、目の前にあった鉄格子が斜めから何かで切られたかのように線が走り、ガシャンと音を立てて崩れた




そのままあたりさわりのない壁へ向かう

すると、ポチャンと水の落ちる音がした



空気が揺れる

水の気配が感じられる



「そう、ここに居たの」


私はそう呟き、何もない場所にしゃがんで、揺れる空気を抱きしめた




≪―――嗚呼っ…漸く、会え、た≫



細い声が耳にかかる、弱弱しい声だ。しかしその声が聞こえた瞬間、何かをしっかり抱きしめる感触が手に伝わってきた



「探したわ――――ティウォール」



さらりと露に濡れたようなしっとりとした彼の蒼色の髪が私の肩にかかる。流れるような長く美しい髪


私の周囲に群がる精霊の力を無意識に吸い取り、弱り切った体に力を注ぎ込んでいた



「さあ、久しぶりに顔をよく見せて」



冷たい顔をつかんで目を合わせる

以前と変わらない、澄み切った藍色の瞳は美しかった



どこか疲れた表情をしているのは、ずっとこの場に留まっていたからだろう



≪つ、かれて、しまいまし…た。ははっ、連絡も、でき、ませんでした、ね≫


耳朶に響くテノールの声。フレインと違って落ち着いた声音は、安らぎを与えてくれる



「話はここを出たらゆっくり聞きましょう。今は私の中で暫く休んでいなさい」


≪―――お話、しなければいけないのです…でも、少し、だけ…≫


「ええ、お休みティウォール」




そして、ゆっくりと再び姿が消え蜃気楼のように、霧が拡散するように散った。しかし、ティウォールは疲れ果てた状態で私の中で眠っている。その証に、きっと私の瞳は藍色がかっているだろう



(なぜこのような場所にティウォールがいたのか。この子にとってあまり暑い場所は得意ではないのに…しかも、こんな日の当たらない場所だなんて。―――私の子よ、やってくれるわ)



立ち上がり、風が入り込んでくる場所まで進むと、天井から光が差していた

誰かが上から穴をあけたのだろうか?


「とりあえず、出ないとね」



思わず見つけた出口、もうこれ以上ノヴァの力を使わなくてよかったと安堵した


意外と、体に負担がかかるらしい

瓦礫を足場に上へと上がる



登りきったところで、南の国特有の暖かな風が体を包んだ



≪ミアン!≫


突風とともに、新緑の髪が揺れた

焦燥にかられたような表情をした、フレインだった



「あら、お出迎え?」


≪途中から声が届かなくて焦った。大丈夫か?≫


「大丈夫よ、そうそうフゥ君に紹介したい子がいたのだけれど…意外とふらふら、ちょっと肩を貸して」



存外、私もあの状況で緊張していたらしい

フゥ君を見た瞬間気が抜けてしまった、早く戻らないとリリーもノヴァもいるのだから


≪あいつは…?≫


「私の中にいるわ、今は疲れて眠っている」



私を支えながら、嫌な気配がババアからすると思ったと、つぶやいた



(ババアは余計だと、言っているでしょ)



――――嫌な気配と言いつつ、あの時ティウォールを見つけられたのはフゥ君の声のおかげ

二体一対のこの子たちだからこそ反響しあった何かがあったのだと、喜ばずにはいられないのだ



「さて、用も済んだし…次はうちの子を巻き込んでくれたコルデリア家の謎に迫るとしますか」



〔今回の南への訪問、お前には単独で動いて欲しい案件がある〕

〔コルデリア家の現状を探れるか〕



漸く、陛下からの任を実行に移せそうです



さーて、とりあえずここで5章終了。何言ってんのって思いましたか?ごめんなさい;つД`)


次回から南の国編

実は、どうでもいい知識ですが1章は中央の国序章、2章は中央の国閑話兼東の国序章、3章は閑話(もといい布石)、4章は北の国編、5章は閑話(これまた布石)というくくり。拙い文章だからわかりにくいですよね、申し訳ございません。


6章は南の国編、ここでは南の魔女コルデロ・ルゼラの死と各章のOPの布石をちょっとだけ入れていきます。


お待たせしました、ここまで読んでくださってありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ