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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第5章
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精霊と魔女その1



風の流れに乗って、辿りついたのは山奥...けれど、驚きの真実が私たちの目の前に広がっている



リュヴァーから降りてリリーがそっと私の前に立つ。目の前で彼女の背に流れる茶金の編み込んだ髪が揺れている



「魔女様、どうやら我々は誤認していたところがいくつかあったようです。これは、帝国に帰り次第すべて報告せねばなりませんね」



やや挑発的に笑うリリー

つられて私も少し笑ってしまった



(それにしても、暑いね)


もはや熱いと言ってもいい程の熱を感じる

それもそのはず...何故か知らないがここ一帯を護るように炎の精霊が集まっている



「どう見ても、コルデリア本家よね」



そう、目の前にはコルデリア本家が建っていた。城を護るように高い壁が並んでいるが、入口だろう門にはコルデリア家の紋章が刻まれていた



ルーゼ姉さんの焔を表す、紅蓮の蝶と白銀のユニコーンがモチーフになっている紋章



「でかしたフゥ君」


「フゥ....君、ですか?」



(あ、つい口にだしちゃった)



「き、気にしないで。独り言だから....それにしても、私達は図られていたということ?」



苦しい言い訳と思いながらも本題へ入る

時間は許されないのだ、少し整理をしたらあの子を助けに行かなければ。まあ、尤もこんなところに居たとは想像もしなかったけれど




「先代の王がまだご健在だったころ、南の魔女様の護り人の血を引いていると名乗る者が陛下への謁見を望まれ、そこで互いに過ちをさらけ出し双方の今後の友好を約束したそうです。そして現在に至るまで、互いに使者を出し細々と魔女を保護発見のために協力をしていたと言われています」



そんなことをしていたのか、それは知らなかった

リリーは少し微笑んで魔女様が知る由も無いくらい細々とした繋がりでしたからと言った


「しかし、この使者を出すというのも国同士のやり取りではなく一族と国というもの。今回の、というよりミアンさんが行先を変えたことでやはり一族は我々の国を信用はしていなかったのでしょうね。友好と言っても相手は国なわけですし、一族も騙すしかなかったとはいえ...」



「これほど咋なんじゃねぇ」




私達が陛下から事前に聞かされていたコルデリア本家は国の御膝下にあるとのことだった


国の中枢とあっては、侵入するのは困難を極めると思って私達も無理ならばすぐに帰還するよう命令はされていた



一族は万が一侵入を許したとしても、国の目が届くど真ん中ならどうにか防げると思ったのだろう



「それにしても、暑いですね」



リリーがそっと額から滴る汗を拭いていた

確かに暑い、この国はルーゼ姉さんの加護を強く受けていた国だったから気候が温暖


(まあ、この場所は温暖を通り越して熱を感じるほどだけど)



活発に周囲を転回する炎の精霊たち

これが居る以上、この城の中に侵入するのは無理だろう



ただ、ここで引き返すほどこの案件は簡単じゃない



「リリー準備はいい?」


私の前に立っている彼女を見て問う

私が何かをしようとしていると理解したのかリリーが私の前から避けた


「いつでも、心の準備はできております」


王宮の女官がするとは思えない表情

これはこれは、流石は帝国といったところか、女官もただの女官では務まらないのかと思った




「頼もしい一言だ。私の背に居なさい」



私の口調が、知らず知らずのうちに戻ってきているのには気づきはしなかった。そしてその時後ろにいたリリーが嬉しそうな顔をしていたことも、私は知らない




『声を、声を聴け炎の精霊。我に従え、我を敬え


――――――我はこの世の柱、時の魔女


声を聴き届し精霊よ、我の前に道を作れ』



その言葉と共に一斉に精霊が動く

動きが早いから、風が生まれ熱風となり時折私達を襲う



(予想外に動いてしまった...)



私達が通れるくらいの道を作って欲しかったのだけれど、どうにも気持ちいいくらいに精霊たちが言う事を聞いてくれたので城を取り囲むようにしていた精霊が空中に散った



「...絶句、です」



後ろからリリーの声が震えて聞こえてきた

振り向けば、汗を流しながら目を大きく見開き私と熱風を見ていた



「絶句って...もう少しいい表現なかったの」


「も、申し訳ありません。私には精霊といった類のものを見ることは出来ませんが、確かに精霊が動いた気配が分かりました。私でも感知できるということは想像以上の精霊がここ一帯にいたということ。――――恐れこそ抱けど、ここまで強かったとは...」



後半は完全に独り言が出てしまったらしい

それにしても、恐れを抱かせてしまったらしい



(あんな捻くれ者が集まる王宮で、リリーも捻くれていると思ったけれど案外素直なのかもしれない)



「魔女は強くて、当たり前だ...違う?」



脅しの意味でそう言ってやれば、リリーはいつものように微笑んだ


「ええ、それでこそ魔女様に御座います」



(チッ...油断のない女だね)



そう思っていたら何やら騒がしくなってきた

気付かれてしまったらしい、これは面倒が起る前に早く侵入しないとね



「早く行こう、時間が無い」


「御意」



私達は精霊たちが散ったことで出来た道を通り、そしてフゥ君の風を頼りに中へと入って行った



―――――――――――――――

―――――――



「カルヴァン様、城を護る熱が....」



鎧を身に纏った騎士が、一人の男性に近づいた....しかし、次の瞬間近づいたその騎士を問答無用でその男性は燃やし、灰へと変えた




それを見た他の騎士は、恐怖に慄く


騎士たちにも精霊は見えてない様で、先程の灰になった騎士も城を護る熱だと言い表していた



「カルヴァン様、どうか御心を御鎮め下さい。貴方様以外精霊は見えませぬ...もとより国の騎士など我々の前では無能でしかない。」



男性、もといいカルヴァンと呼ばれたその男性の前に臆することなく進み出た、赤褐色の髪色と韓紅の瞳をした男は騎士を見てそう言った



「なっ、我々は陛下に命ぜられし直属の部隊です。愚弄すれば陛下への――――」




「黙れ無能」


赤褐色の髪が揺れ、その騎士は跡形もなく炎に包まれ散った



「オズウェル、あまり騎士をそう強く言うな。お前の魔力が勿体ない」


カルヴァンはそう言って、赤褐色のオズウェルという男性を見て笑った。カルヴァンが手を振りかざすと再び炎の精霊が周囲に集まってきた




そして、再び精霊が活発に周囲を回転し始めた



「行くぞ」




そう言って、何事もなかったかのようにその場から....先程までミアンたちが居た場所を離れた



「ネズミが...迷い込んだようだ」


「駆除せねばなりませんねぇ」



ニヒルに笑ったカルヴァンに、賛同するようにオズウェルは残虐に笑った



一瞬の差、だが確かにミアンたちはその時という運命から逃れ、無事侵入することができた



運とはタイミング

カルヴァンと呼ばれる、屈強な戦士のような彼は大きな剣を一振りし、城へと戻って行った




登場人物整理

Newmember


カルヴァン(男)

屈強な肉体、浅黒い肌と紅色の瞳、髪は短髪で黒

年齢は大体30~40前半

見る者を目だけで殺せそうな風貌

補足:めっちゃ怖いです。←


オズウェル(男)

普段はニコニコ、つまり何を考えているかわからない。細身だが長身。肌は少し浅黒い程度で日焼けした感じ。髪は襟足を編み込んでいる韓紅色。瞳はスカーレット、つまり緋色。年齢は30代前半。

補足:この章では案外鍵を握っていたりする人物...かも?



ここまで読んでくださってありがとうございました

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