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陛下の専属様  作者: 月詠 桔梗鑾
第5章
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蒼き旅人その2

こちらは後編



それでは、どうぞ



『嗚呼、勘違いしないで。お前たちは罪から生まれたけれど、罪の子ではない』



その人はとても悲しそうな顔をして言った


だが、俺も隣のフレインもその人の言った違いがわからない



『無数に咲く華はね、お前たちの仲間であり敵だった者達だ。そういえば、お前たちの関係があまりよくないのも、もしかしたら以前は敵同士だったからなのかもね』



そこまで言って、突然雰囲気が変わった


――――残念だ



その人は、足元に咲く華を見つめ呟いた。俺達もその視線を追う、するとどうだろう...華が枯れ始めた




(なんで?俺達みたいなのが沢山生まれてくるんじゃないのか)



時折、淡い光がその華から生まれ大気に溶け込んでいくのが分かったが大半はそのまま枯れて散ってしまった




『私はチャンスを与えた。過去の清算という、チャンス』



スッと目を細め、俺達を見つめるその人


『許せなかった。だが、嫌いじゃない。私の矛盾した心はある一つの賭けとなり答えを導き出した。それが清算させ、新しい存在となり世を支える一部に育てるという事。そんな私の願いを受け取ったのがお前たち二人だ』




新しい存在、やはり少し俺には難しい内容だ


そんな俺の表情をくみ取ったかのように、その人はまた優しい微笑して口を開く



『何、簡単な事。お前たち二人は私の特別な願いを持って生まれた存在。私の子だ、新しい存在となりこの世を支えてくれればいいの。お前たちはこれから沢山選択して生きていく。その中でお前たちが決して間違う事のないように一つの条件をだそう』




私の子、その言葉がとてもうれしかった


俺はこの人の願いから生まれたのだと、決して罪の子ではないのだとわかったからかもしれない



≪さっき言った、過去の清算はどうすればいい≫



『それは、今後お前たちが条件の元生きていけば自ずと清算される。心配はいらない、元々お前たちが目覚めたのだって過去の自らの行いに悔いて死んだという強い念が残っていたからだ。枯れていった華は、何の疑問も持つことのない、私の一番嫌いな存在であったにすぎなかったということ。お前たちが生まれてきた瞬間から、過去への清算は始まっている』




全てを話し終えたようにゆっくりとした動作でその枯れた華が散らばる地面に手を合わせた




『魔女はね、そんな救いようのない馬鹿な奴らも...嫌いにはなれないんだ』



失笑、その言葉が合うだろうか

次の瞬間には、またその場所に綺麗な...今度は淡い光を放つ白い華が咲き乱れた



思わず手を伸ばす。すると隣に居たフレインが俺の手を掴んだ



≪触んな、この華は妙に危険だ≫



一見みたところ、何も危険な感じなどしないのだが...しかしフレインの行動は正しかったらしい。その人も、触らない方がいいと言ってきた



『この華は....そうだ、ティウォール。何を想像する?』



唐突な問い、何を想像するか。その小さな華を咲かせた白い華を見て....あ、と気づく


(花弁が、不思議な形をしている)


そしてその形と、俺の一部を合わせたいと思った


だがら...


≪雫、水が滴り落ちる寸前の...涙みたいな形を想像する≫


『雫...涙か。うん、なかなかいい感性の持ち主だ。お前はどうだフレイン』



褒めてもらえた、そのことに酷く舞い上がる自分が居た


嬉しい、と同時に問うたのは俺だけではないんだと言う少し残念な気持ちにもなった


≪俺達の名前は古代語からできてるんだろ?それだったら"罪"ってなんて言うんだ?≫



そう、俺の名はティウォール...流水を表す名前だと教えてもらった


彼、フレインもまた古代語から取られたものなのだろう


『罪、アルファスと言う....どうしてそれを?』



その人の初めて見る不思議そうな顔


口調はやや雑なのに、その仕草に可愛らしいと思うのは仕方がないことだと思いたい


≪ならこの華はアルファスの涙だ。この華は、罪の涙。そう思った≫



くしゃりと笑うその顔を俺は忘れないだろう


『そうだな、罪の涙...この華はな、手折ってしまえば猛毒を放つ毒華だ。大輪の華を咲かせることができず枯れてしまい、そのなれの果て。アルファスの涙、相応しい名だ。この華は、アルファスの涙と名付けようか』



猛毒、だからさっき触れようとする俺の手をフレインは掴んだのか


立ち上がり両手で汚れを払う素振りをし、あの蒼銀の瞳がこちらを向いた




『さて、華の名前も決まったところで、そろそろ条件を言おうか。自由に選択していい。その条件は――――――』





(その、条件は)



だから選んだ、言われた通り自分が思った選択をした


フレインはその人を護り共にあることを選んだ。本当は俺もそうしたかったけれど、フレインと一緒なら自分の目で見て、多くの条件を満たすだけの存在になりたいと思った。だから俺は、その条件の元、離れることに決めた



俺の選んだ答えに、その人は優しく笑うだけだった


そして目覚めた時のように言う


『行っておいで、私の子』



―――――――――――――――――――

―――――――


ピチャン

その音が聞こえて、はっと目を覚ます


だが辺りは暗くじめじめとしていた


(なんだ...懐かしい夢を見たな)


そして思った

そろそろ、限界だなー。しょうがないけど、腕なんてまた数十年もすれば再生されるだろうし、ちぎってしまおう



そう考えて手首に力を入れた瞬間


≪っつ――≫


暗かったのに、急に一筋の光が差し込んできた


余りの眩しさに咄嗟に目を瞑る



(フレインが来たなんて、そんなバカな話だけは...やめてくれよ)


なんて思いながら、暇で暗くて退屈でじめじめしたところから出られるかもしれないという、まさに希望の光のような眩しさの原因となる場所をゆっくりと目を開けながら思う



カツン

それは、確かに足音だった



「生きてる?」


その声は、凛としていて...艶やかな声をしていた



うーん、少し難しかったかもしれません。アルファスの涙とは罪の涙ということ。穢れの残った枯れた華は、白い華、猛毒のある華として蘇りました。つまり大輪から生まれたフレイン達(過去を悔いし者達)とは別に、穢れ罪深き者達としてこの世の一部となったということです。上手く説明できませんね、文才の無さです、申し訳ありません



以前、OPでミアンが華を咲かせるシーン。そこからフレインとティウォールは誕生しました。そして互いの相性が良い筈なのに、仲が悪いのは、フレインが前世ミアンに対し助けを乞うた中央の戦士で、ティウォールが化け物と罵った東の戦士だったからといういらない裏設定があります←


これにて別視点、つまり新キャラティウォールの視点は終了。彼が、なぜミアンに連絡できなかったのか、それはこの変な場所に監禁されていたからでした。


それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました

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