悪戯‐SIDE陛下‐
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「―――まさか、意識を失うとは思わなかったな」
腕の中
ぐったりと意識を失っているのは先程自身を分血だと証明した少女がいる
呟いた言葉は咲き誇る白い世界の隅々まで響いた
この少女のおかげで散漫していた毒は解毒された
我ながら無謀なことをしたとは思ったが、どこかでこの少女を信じていたのも確かだ
最初にあった時、先代たちが残した日記に記載していた通り契約を交わした
それがいったいどんな意味を成しているかは俺では理解できなかった
"ミアン・レティシェフォード"その名は我が帝国の至宝であり、帝国の王のみが知ることのできる絶対的な内密事項である
そう記載されていた
だがその点については俺でも理解できる
その名こそ、この世界で唯一公表されていない魔女の名なのだと
魔女は強力な魔力を保有することから契約という縛りがある
そっと、眠る少女を見る
「こいつにも、縛りがあるのか」
そしてその縛りの元である契約を行ったのは自分だ
だが、国と自身の為に仕方がないと思う自分もいることに失笑した
一度彼女を華が咲く地へ横たえる
少女の身が白銀の花々の一部となる
その姿が、恐ろしく扇情的だと感じた
白銀と一体となったその少女は微かに頬を赤く染め、白く細い手首には薄ら血の色がついていた
それどころか華が....猛毒を持つ華が確かに喜ぶかの如く咲き乱れていることに驚いた
少女の手前
片膝をつき、そっとその顔に手を添える
この時の行動は多分
白銀の世界と少女との幻想に酔っていたからなのだと、思いたい
以前、この少女とロードが夫婦だと言ったとき俺の中で嫉妬という感情が蠢いた
何故彼女達に嫉妬したのか
多分それは、少なからずこの少女を庇護したいと思っているからだろう
「俺は父親か」
そう呟いて、後悔する
今自分がとてつもなく惨めに感じたのはなぜだ!
だがその感情を整理するとすればその考えが未だ適当だと言えるはずだ
(まだ若いと思っているつもりなんだがな)
少女の髪に俺が手折った華がささっていた
それを見て、驚いた表情を見せた少女のことを思い出した
さらりと少女の髪を撫でる
こんなこと、普段の生活でできる訳がない
(俺は、王だ)
庇護したいと思い始めた少女でさえ、時には残酷な命を下すだろう
この少女はまだ俺にとって唯一ではないのだから
もしかしたら、今後魔女が見つかったとして....この少女はお役御免となる
と言っても流石に王宮からは追い出すことは無いが...
魔女が見つかり次第、少女には魔女の侍女として働いてもらうつもりだ
少女は森の麓に住んでいたとロードが言っていた
だが実際は、森の向こうだったのだと村の人々が言っていたそうだ
何故ここで隠す必要があるのか
多分それは、この少女の母であり主でもある時の魔女に関係しているのだろう
「んっ...」
咄嗟に手を放す
しかし、少女は身をよじっただけで目を覚ますことは無かった
空中で止まった自分の手を暫し見て....無言で少女の髪へと戻した
数分後
扉が開く音がした
(ロードか....)
戻りが遅いと思ったのだろう
ロードがここに来るのは珍しいことだ
ロード曰く、この華を見ると変に彼の魔力がざわつくのだそうだ
俺には全くそんなことはないので気持ちはよくわからなかったが、あいつの何かに触れたのだろう
扉を開けて入ってきた途端
俺はロードに睨みつけられた
「へい「騒ぐな、起きる」――――何をしたのです」
今にも大声を出しそうだったので遮った
ジト目で少し足早にこちらへ近づいてくる
「何をそう怒っているんだ」
「私は怒っているのではありません陛下。ただ、なぜ彼女がそこに横たわっているのか疑問を問うたのです」
(いや、お前完全に目が据わってるぞ)
冷静な口調とは裏腹にロードの目が怒りを表していた
何故こいつがこうも感情的になるのか...
試しに眠る少女の髪を撫でてみる
すると、ロードが眉を上下に一瞬動かした
もう一度撫でる
ピクリと肩が動いた
それを数回繰り返し、こいつも分かり易い反応をすると思ったところで遊ばれていることに気付いたのか咳払いを一つ、話の方向性を無理矢理捻じ曲げてきた
「―――――ごほん、それにしてもここの華以前より増えましたか?」
「増えたのではない、以前より華が開いただけだ。思い出してみろ、今までここにあった華は脇役としてしか役割を果たさないような六分咲き程度の外見だったが今は満開だ。主役として堂々と咲く見事な華だとは思わないか....魔女の存在がここまで国の華を変えるんだ」
そこまで言って俺は華に埋もれた少女を抱き上げた
何かを言おうとして、結局口を噤んだロード
「護衛が、護衛対象に抱えられるなど本末転倒ですね」
「こいつに護衛が務まるのかすら些か不安だ」
ロードが普段のように皮肉に口を開く
だが、今までとロードの雰囲気が違うのは長年の彼を見ていてすぐにわかった
(ここへ来たのもこの少女を心配してきたのだろう、そして俺が今抱えている状況もこいつにとっては思わしくないということか)
だが、俺は無視し言葉を返しそのまま扉へ向かう
≪嗚呼、懐かしき≫
出る間際
白銀の世界に住まう大地の精霊がそんなことを言っていたのが聞こえた
――――懐かしい?
「陛下、どうされました」
「....いや、なんでもない」
ロードに諭され気のせいだと頭の片隅に追いやった
抱えている少女の体温が、妙に心地よい
揺れる茶色の髪を見て、ふと思い出す
そういえばこいつ...猫の姿の時は白だったな
(色彩の魔法、こいつら猫の毛色まで変えるとは随分と凝った変装をしたんだな)
チラリと隣を歩くロードを見て再び前を向き歩き出す
途中何人かの女官が壁に沿い深く頭を下げてきた
そのおかげで、俺が腕に誰かを抱きかかえているのは分かっただろうが誰かまでは判別できなかったに違いない
「魔女様!?」
「静かにしろ、ただ気を失っているだけだ」
少女を部屋に送り届ける手前
少女付の女官が現れた
流石に女性に任せるのは男として流石にどうかと思うので、まあこの女官に男女の垣根など無い気もするが....
扉を開けるよう指示し、少女をベッドへと寝かせた
そういえばこの行為、今回で2度目だな
「一日休めば元通りになるだろう、造血作用のあるものを食すよう配慮しておけ」
「畏まりました」
ロードは扉の前で待っているようだ
これ以上の長居は無用
「ああそうだ、俺だけではあの馬鹿の手綱離してしまいそうになる。しっかり教育しておけ、リリー・チェルファン」
あの馬鹿と言った途端目の前の女官の表情が険しくなった
普段は見せないような極悪人の面だな
「ふふ...あの馬鹿また何かやらかしたのですか?陛下の手を煩わせてしまって申し訳ありません、しっかりお灸を据えておきます」
―――――――――
――――
「ナギを一番上手に操れるのは、彼女だけでしょうね」
「アレにナギがなぜそこまで恐怖視するのか俺にはわからんがな」
「.....きっと、知らないのは陛下とミアさんだけですよ」
ロードが軽く表情を曇らせそんなことを言った
どこまで危険なんだ、リリー・チェルファン
「先程南国に使者と間諜が入った模様です、そろそろ我々も動き始めましょう陛下」
東の国の王には直々に手紙を出そう
素直に答えてくれるとは限らないがな
「そうだな、こちらも解毒薬はある。そのうち南へ赴く、即急に事を済ませるぞ」
「御意」
実際、進まなかったね(反省)
いや...ミアンが気絶しているのがいけないんだ←
次こそは、進めるぞー
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