陛下の騎士その3
渋々私はその椅子に座った
座り心地は素晴らしいものでした
いつも木にばっかり座ってるからこういうふわふわした椅子が凄く懐かしい気分だわ
この状況であれだけど気分は少し揚々
え、能天気とか言わないでね
「色気がないな」
第一声がそれですか
私が椅子に座るとすぐに言われた言葉は色気....
色気がなくてすいませんね
そんなことこの場で貴方みたいなイケメンには言われたくなかったわよ!
「...はぁ、それは失礼致しました。陛下からのお召し物を着こなすことができず申し訳なく思っております」
なんで私が謝らなければいけないんだ
とは、心の中で囁いておいて
私は大人ですから穏便に済ませたいのです
「よい、別にお前に期待などしてはいなかったからな」
一々神経逆撫する人だなー
どんな辱めだっつーの!!
しかも鼻で笑うとか性質が悪い
まぁイケメンだから何も言えませんがねー
「それより食事だ食事、とりあえず食事をしてから話をしよう」
それより...私は食事以下ですか陛下
心が折れそうなのを必死に奮い起こした
陛下の一言で傍にいた女官達が動き始めた
ものの数秒で私と陛下の目の前には豪華な食事が出された
(うわー凄い。1年後また始まる森の暮らしで満足できるかしら)
そのくらい目の前に広がる食事は豪華だった
帝国の主食はビュグレって名前のパン
単品ではあまり味がしないけど何かにつけて食べたり何かを乗せて食べると凄くおいしい
出された食事の中に私の大好きなバラナの実があった
でも丸ごとじゃなくてケーキになっていて凄く美味しそう
食事の仕方?
そのくらいわかるよ
だってハゲに再三言われてきたもん
別に表に出ることは無かったけどねー、なんでだろ
「街に出たことのない娘がよくナイフの使い方を知っているな」
いつの間にか食事をしながら陛下は私を見ていた
その目は疑っていて
いつかの誰かの目と同じじゃないのー
馬車でもそんなことがあったわよ
私は連れてこられた立場なのに常に疑われるのか
こんなんで1年持つのか私
「祖母が...昔西の王宮で働いていて厳しく躾けられたのです」
架空のおばあちゃんに助けてもらうことにしようと思う!
西かー
言いながら思ったけどあの森に軟禁されて以来全然行ってないな
話によれば今の西は武力国なんだよね
厳つい人とか沢山いるのかな
「そうか」
私の必死の言い訳は短くバッサリと綺麗に流された
聞いたの陛下じゃん!
そんなんで一人むかむかしながらも静かに食事を終えた私たちは漸く本題に入ることに...
「お前にはいくつか言って置かなければいけない事がある」
目の前でその長い脚を組み話す様は風格のあるまさに王
あのハゲよりは幾分ましなのかなー
ま、あのハゲの血を引くんだから私は嫌いだけど
「一つ、お前は私の専属騎士として傍にいてもらう。魔女だと云う事は公表はしない、お前はあくまで本物が見つかるまでの人形でしかないことを忘れるな」
人形ですか
酷い言い方だー横暴だー
でも反対できない
だって目が反対したら殺すって言ってるんだもん
大人しく首を縦に振る
「一つ、お前は最初の通りミアと名乗っても構わない。契約の時に使ったのは建前だ。理由は検索するな」
お、それは助かるね
この言葉にも盾に首を振る
「一つ、お前には本物の魔女を探してもらう。以前この王宮にも一人魔女が居た、最初は全く分からなかったが予想外の出来事で見つかった...が、保護する前にそいつはここから逃げた。流石にこの帝国中を探せとは言わない。帝国は俺の信用に足りる臣下が目下捜索中だ。お前にはこの王宮内を探してもらいたい」
「奇跡があると?」
あえて魔女が王宮にいたことは触れなかった
その魔女はきっと12年前一度だけ私に会いに来た魔女だろう
東の...リーナ姉さんの血をもらった元人間だと思う
私を見つけ私に会いに来た最初で最後の魔女
彼女はリーナ姉さんが血を分けるに値する意志の強い人間だった
リーナ姉さんは意志の強いモノを好んでいた
「奇跡か、それを望んでいるのかもしれんな」
(なんて寂しそうな目をするんだろう)
どこか遠くを見つめ何か思いふけるようなそんな表情
思わず声を掛けようとしたところで陛下はまた元の感情の読み取れない表情に戻った
「これを守れ。そして出過ぎた真似はするな、従順でいればいい」
私はその言葉に是とまたも首を縦に振った
人形だってー
陛下酷い酷い