バイクの一夜干しなら青森がおススメ
バイクで青森に行ったときの話。
私は旅行が好きで、特に車やバイクを使って遠くへ行くのが好きだ。
学生時代に『キノの旅』を読んだりアニメを見たりした影響だろう。
バイクに荷物を積んで、トコトコと旅をすることにずっと憧れていた。
社会人になって色々と余裕が出てきた頃、愛知県にある自宅から無謀にも青森県の本州最北端を目指した。
本州最北端は大間崎。マグロで有名な場所で、青森県をクワガタのハサミに例えると右側の先端である。
有料道路を使わないという自分ルールと、ふらふらと観光したせいで、到着までに三日を要した。
なかなかの達成感であった。
しかし、旅行計画時の私は何を考えていたのだろうか。
その日の宿は、龍飛崎に取っていたのである。
どういうことかというと、目的地はクワガタのハサミの右角の先端なのに、宿は左角の先端に設定していたのだ。
旅程自体もなかなか狂っており、具体的に言うと「三日目の宿だけちょっと高めのところを予約し、それ以外はその日に寝られる場所を探す」というもの。
こうすることで「三日目までに絶対にそこへ行かなければならない」という気持ちにさせる、背水の陣作戦である。
そんないかれた旅程のおかげで、宿に着いたのは夕飯の時間をとうに過ぎた頃だった。
事前に遅れる旨を連絡していたものの、夕食は半ば諦めていた。だが宿のご厚意で温め直していただき、美味しい料理を味わうことができた。
食中酒には『じょっぱり』という地酒を頼んだのを覚えている。
温泉もあり、実にいい宿だった。
岬の崖の上という立地のため風が非常に強く、ゴーゴーと唸る音が少し怖かったが、それが余計に「建物の中にいる」という安心感を強めていた。
愛車からは荷物を外し、風で倒されないようギヤを一速に入れ、フロントブレーキのレバーを紐で縛ってブレーキをかけっぱなしにする。入念な対策をしてから床に就いた。
翌朝、風にちょっかいを出されて倒れていないか不安になりながらチェックアウトした。
様子を見に行くと、よかった、無事に昨日のままの姿勢を維持していた。
しかし、なんだか様子がおかしい。
出発前に洗車をしてワックスをかけたとはいえ、やけにキラキラと輝いているのだ。
指でスーッとなぞってみると、白い結晶状の物質がつく。
寝ぼけた頭を必死に回転させた。
岬。崖の上。強風。海が近い……。
私にかかれば、この程度の推理は容易い。
指に付着した物質を口に放り込む。
──しょっぱい。
やはり塩だ。
強烈な潮風のおかげで、たった一晩で「バイクの一夜干し」が出来上がっていたのである。
数時間後、強烈な土砂降りに見舞われ、大部分の塩が綺麗に洗い流されたのは、また別のお話。
学生時代に触れた作品
『キノの旅 -the Beautiful World-』(著:時雨沢恵一)
言葉を話す二輪車・エルメスとともに旅をする少女キノの物語。
旅先の宿で飲んだお酒
清酒『じょっぱり』(六花酒造/青森県)
「じょっぱり」とは、津軽弁で「頑固者」「意地っぱり」を意味する言葉らしい。
ちなみに龍飛崎は「風の岬」と呼ばれているらしく、所々に看板が立っていた。
RPGの世界に迷い込んだ感じがあり、レックウザとかと出会えないかちょっとだけわくわくしたりした。




