前世で好きだった同僚をもっと好きになった話〜好き過ぎて、可愛いと見つめてたら本人にも気づかれてた件〜
『好きだ、大好きだ。ずっとずっと、大好きだ。彼女を心底好きなのは、私だけ。仮にライバルがいるとしても、誰にだって、渡さない。それは、現世も前世も、ずっとずっと、変わらない私だけの、宝もの。私だけの、愛しいひと。』
はぁ。今日も、可愛い。どうして、あんなに可愛いんだろう?
理由の説明が出来ないほど、その全てが大好きだ。
流れる長い髪。顔にかかる黒髪を耳にかけるその所作。私を見つめるその視線。私の話に耳を傾けるその仕草。それに、他の人へは冷めた表情をしているのに、私に向かってははにかんだ表情で微笑んで。少しの優越感とともに、全てが私を魅了する。
「どうかしたの?」
視線が交わる。あの子に、気づかれてしまった。真剣に仕事をして俯く彼女に、突然の焦燥感が襲ってきて、仕事を置いてぼんやり見つめていた。
「何でもありません。少し、ぼんやりしてしまっていただけです。」
眉をひそめるあの子。私の不真面目さに呆れているのだろう。言い訳をすると、今日のタスクは少なくて、心に余裕があったのだ。空ごとを考えてしまうのは、仕方ないではないか。そう、心の中で、呟いて。
「そう。お昼までもう少しだから、頑張りなさい。」
「はい。申し訳ありません。」
不機嫌になってしまったあの子に、叱られてしまった。仕方ない。所作が美しいのがいけないのだ。可愛いことが、いけないのだ。
全部、私に自信がないのが、いけないのだ。。。
あの子は、どこの職場にでも一人はいる、孤高の美しい同僚。
それが、私の愛しい女性。前世では上官と部下で、現世でも上司となった人。
前世から変わらず、冷めた印象が周りに敬遠されがちだけど、ホントはちゃんと話すと、思った以上に可愛らしい。それを知っているのは、前世も現世も、同僚でもあり、恋人でもある私だけ。
誰も知らない、私だけの特権。
あぁ、だけど。
気難しそうに仕事をして、問題は一切起こさないあの子だから。むしろ、仕事でのお客様からの評判は上々で。。。彼女に案件を担当して欲しいというクライアントが多いくらいで、その美人な顔と相まって、気難しそうなとこが良いのだと、嫌う人なんていないくらい、お客様に好かれている。それは、最近の職場でも同じな様で。
冷めた印象、なんて言ってしまったけど、それが周りには冷静に見える様で、信頼に繋がるみたい。
そんな様子で、皆んなから頼りにされる子。
本当は可愛いことを誰も知らないのに、その姿に周りは勝手に幻想を抱いて、お近づきになりたいと話しかける。それがまたきっと私を苛立たせるのだろう。
最近は特に、あの子ったら周りに淡く微笑むものだから、周りがいっそうファンになってしまった。
ほら、また。
「あの、課長。こちらの取引先からの依頼なんですが、どちらのプランを提示しましょうか?」
「ここは、いつも昔からの考えが強いところだから、あまり奇抜なものは好まないわ。これにしましょう。」
「なるほど。課長、ありがとうございます。」
最近、彼はあの子によく質問にくる。それに、頰を染めながら聞いているから、気があるのだろう。そう勘繰ってしまうくらい、苛立ちが募って。それに。
「いえ、貴方も、頑張りなさい。」
ほら、優しく彼に微笑みかけて。そんな、気もないくせに、昔なら絶対にしなかった笑顔をみせて。私に見せない表情をして。。。彼が耳を染めているのだ。
大丈夫。彼女を1番愛しているのは、私。愛されているのだって。。。そう言い聞かせて彼女がモテることに、平静でいようと努めているけれど。
気が気でない自分では、焦燥感が押し寄せる。
だけど至って本人は、自分の仕事しか興味がないから、そんな話も気にしてなんていなかった。
だからということはないけど、あの子が周りに愛されることが、不安で仕方なくて。
「ねぇ、お昼ご飯、どうする??」
あの子の方から聞いてきた。私以外の人とお昼をすることのない彼女。
これすらも、私を優遇しているのだろうと愉悦に浸れる要素だけれど、ここは職場で、私たちのことを周りは知らない。以前に食堂で食べさせ合いをしてしまったけど、周りから特に質問を受けることもなかったから、思ったより、私たちの関係に気づいている人は少ないのだろう。
「ええ。そうですね。私今日、この後外回りなので、外で取ってそのまま行こうと思います。」
オシャレな喫茶店を選んで、彼女と一緒にご飯を食べて、元気をもらってから営業に行きたいから、職場の食堂を選択しない。
混むかもしれなくても、オフィス街のカフェを狙う。彼女の好きな、クリームソーダが飲めるところ。コーヒー片手に仕事をするあの子は、実は甘いものも好き。私といれば、必ず頼むそのドリンク。
これは私にしか見せない顔。だから、それを見せてくれることが嬉しくて、その姿を見たくて、ワザと選んだ。
ガヤガヤガヤ………ガヤ……ガヤガヤ…
「ねえ、今日どうしたの??」
「え?何が??」
「何だか気もそぞろで仕事に集中できてないわよ?もしも、悩みがあるなら言ってみて?」
「悩みなんて、特にないわ。ただ、ちょっと今日は、気が散っているだけよ?ごめんなさい。迷惑をかけて。」
「迷惑なんて、掛かってないわ。貴女が私に掛ける迷惑なら、大歓迎なんだから。ホントに、今日だけなら、良いんだけど。。貴女が苦しくなる前に、何でも私に話して?仕事のこと??プライベート?」
こんな、あの子に上目遣いで聞かれたら、言いたくなくとも答えてしまう。嘘なんて、吐きたくないから。
「…プライベートよ。」
「プライベート??気が散るほどって、、」
あの子が眉をひそめて私に問い質す。
「プライベートは、私との時間よね?私、何かしたの??それなら、ちゃんと考えるから、教えて?」
あの子が然も当然というように、プライベートはあの子との時間しかないのだと言ってくるのだ。そんなところだ。そんなところが、嬉しいのだ。私しか眼中にない、そう言っているみたいで。
だけど、彼女が可愛すぎるから、勝手に不安になるのだ。こんなに幸せな時間は、ずっと続くのかと、不安になるのだ。それを本人に言うことなんて、何だか癪ではないか。私だけ、嫉妬をしてるみたいで。心が狭いと思われてしまいかねない。でも。
「……。貴女が、周りに親切にするなんて、昔なら考えられなかったから。驚いただけ。私にしか、笑わなかったのに。。。」
「………?!か、、」
「…?か??」
「可愛い!」ガタッ!机を揺らしながら、私に抱きつく彼女。こんなとこで、恥ずかしい!
「ちょ、、、!ここ、外!!」
「わかってる!!わかってるけど、私に嫉妬したの??」
「?!!嫉妬して、悪い??」
プイとそっぽを向いてしまう。
「可愛い。。。。」蕩けるような笑みを私に向けてきて。その顔は、とても艶やかで。。。
「貴女が、可愛すぎるから、貴女が笑うと、周りが勘違いして、頬を染めるから、、、私だけの、貴女なのに。。。」
「ええ。知ってるわ。私は、貴女だけのもの。貴女も、私だけの、もの。。。誰にも、渡さないわ。」
「……嬉しい。だけど、貴女の笑顔が綺麗だから、皆んな、勘違い、してるのよ??」そう、言ってみると。
「ええ、そうよね。。。貴女が可愛すぎて、心配だわ。。。」
「え、今の話、聞いてた??」
「聞いてた、聞いてたわ。だから、今週末、指輪買いに行きましょう??」
「えっ!??ゆ、指輪?!急すぎない??!」
「急じゃないわ。前に言ってたでしょう??エンゲージリング、買いに行こうって。」
「いっ、言っていたけど、、、こんなに早く?!」
「早くないわよ。むしろ、遅いくらい。ああ、早く今週末にならないかしら。」
「もう!また、勝手に話を進めて!」
「でも、行くでしょう??」ニヤリ、彼女、私のことはお見通しだから、わかってるのだ。私が心配してること。だから、こんなに優しく言うのだ。
「……ありがとう。」
「ふふ。どういたしまして。それに、私こそありがとう。一緒に、買いに行ってくれて。」
「そ、そんなこと。。。私、貴女が誰かのものにならないか、心配で。。。いつも見てしまうのよ?それくらい、嫉妬深いわ??」
「知ってるわよ??だって、仕事中よく目が合うでしょ??」
「え、、?えぇ。そういえば、、、」
「ふふふ。私のこと、好きすぎて見つめてくれてるのよね??私も、貴女が愛しすぎて、見つめてしまってるもの、気づくわ?」
「……あ?!は、、、恥ずかしい、、、」
「ふふ。だけど、周りにバレてしまうから、もう少し自重し合わないと、危ないわね。まぁ、仕事はしっかりしてるから、いいかもしれないわ?」
「うぅ、、、!!フォローになってないわよ。。。」
恥ずかしい!恥ずかしすぎて、この後の仕事、何とかこなせるかしら?なんて、また気もそぞろになっていくのだ、、、、
だけど、私の愛しい人は、目の前のクリームソーダのように甘く蕩ける表情をして、私しか見ていなかった。パチパチと弾けるみたいに、私の心を跳ねさせて、それがとても、嬉しかった、、、
彼女は気づいてないと思っていたのか。ホントに愛らしい。私と目が合うのだ、気づくだろうに。ホント、そういうところ、前世から変わることないのだ。自分のことを二の次にする性格。だから、自分のことに気づかない。いや、気付けないのだろう。
自身の感情には疎くて、周りを最優先する。困った人を、助けてしまうのだ。その気遣いに、周りがいつも助けられていて。。。
そんな彼女だから、周りにも愛されて。
私の周りを顧みない態度と違いすぎて、、、何故だろうと疑問だった。
それどころか、自分と違う、その気の利く性格が気に入らなくて、目に入れないようにしていたくらいだ。
何故こんなに、万人受けする性格を演じられるのだろうと、ホントは気になるくらいだったけど、自分にとっては影響がない存在だから、、そう言い聞かせて、気にしてなぞいられなかった。
だって私は、彼の国に絶望していたから。私の力を搾取するそのあいつらに。だから、偽善者なぞは、私の眼になど映らせなかった。
だというのに、そんな私に構うあの子に、話しかけたあの子に、気が散って。。。
守りたいと宣う彼女に、嫌気がさして。
あの国に奪われる彼女に、余計に腹が立って。。。逃げもしない彼女に、焦燥が募って。。。
いつの間にか絆されて。勝手に笑みが溢れていて。
ああ、そうだ。私があの子を守ることこそ、何よりもしなければならない使命だと、想ってしまった。
だから、全てを賭けて、彼女を守り抜くと、自分自身に誓ったのだ。彼女が、愛しすぎるから。この世界に、誓ったのだ。
前世も、現世も、ずっとずっと、私があの子を守るのだ。他の誰でもない、私が。。。
あの子を1番に想うのは、私だけ。見つめていいのも、この世界で私だけ、、、
「あの2人、いつも見つめ合ってますよね。あれだけベッタリで、暑くないんですかね??てか、職場恋愛隠す気あります??」
「しっっ!2人とも、周りにバレてないと思ってるんだ。気づいてないようにしてやらないと。それと、職場に私情も挟んどらん。仕事は完璧な2人だ。そこは認めてやれ。。。」
「あ、すみません。。。けど、あれで気づかれてないと思ってるんですかね??2人とも分かりやすすぎじゃないですか??あ、でもあいつ、気づいてないのか?よくあんなに見つめ合ってる2人に気づかずに課長にアタック出来ますよね??」
「……。いや。アイツも気づいててやってるんだ。優しい課長なら、拒絶はしないだろうって。たかを括ってる。」
「ははぁ。性格悪いっすね。仲を裂こうって魂胆ですか??」
「あの子もバカよね?あの2人の仲なんて、裂けっこないわよ??ねぇ?」
「そうだよな、絶対的に無理だよな。アイツも知らないのか??」
「あ、転職組だから、知らないのかしら??」
「え、自分も知らないですよ。何でですか?」
「お前は一昨年入社だもんな。知るはずないか。」
「えぇ。だから。何でです??」
「そう、ムキにならなくても。教えるわよ。あの課長って、昔はもっと冷たい顔してたのよ?というか、仕事は自分でするものだから、助け舟なんて、絶対に出さなかった。」
「え、課長がですか??確かに、クールビューティーな雰囲気ありますけど、あんなに優しく指導してくれて、フォローも入れてくれるのに??」
「それが、彼女なのよね。」
「うん、そうだ。あの人だ。」
「え、だから。何が?」
「課長って、あの人と同期なんだよ。総合職と事務職だから、差が出ちまったが、元々、一緒に案件とってタッグ組んでた。」
「へぇ。そうだったんですか。で、それが課長とあの人の仲を裂けないのとどう関係するんです??」
「あの人に出会って、変わったのよ。。。」
「え??何がですか??」
「性格が、だ。さっきも言ったみたいに、絶対周りに助け舟を出さないし、助けも求めなかった。けど。」
「あの人と一緒にいる様になって、変わった。助けてくれるし、助けも求めるようになった。だから、そんな2人の関係に割って入るなんて、馬に蹴られるわよ??」
「えー。ホントですか??そんな、人の性格って変わるもんですか??」
「変わった、変わった。だから、俺たちも驚いてるし。飲み会なんて誘っても来なかったやつが、あの人と一緒にいる様になってくる様になるし、なんなら、仕切る様になってくれた。」
「ホント。驚いたわ。人って、本当に変わるのね。」
「えーーー、、、眉唾もんですね。そんな人が変わるとは思えないんすけどね。。。」
「見せたかったぞ。少しずつ人が変わる様になった課長と、あの人の関係性。最初は周りも騒ついたよな。」
「ええ。本当よ。急に中身が変わったのかと言うくらい、2人の性格が、変わったんだから。あの人だって。。。」
「え。あの人もですか??」
「ええ。昔は、もっとオドオドしてて、周りに意見なんてしなかったわ。それが、今では課長の右腕くらいに意見もするし、仕事もするし、、、人が変わったって、こんな時使う言葉だって、学んだわ。」
「俺もだよ。だから、2人の仲は裂けないし、裂こうとも思わない。裂こうもんなら、天罰が下りそうなくらいだ。」
「そんなにですか、、、」
「ああ、そんなにだ。」
「ええ、そんなによ。。。2人とも、いまだに気づかれてないと思ってるんだから、すごいものよね。」
「こないだは、食べさせ合いっこしてたもんなー。」
「あー!それ、噂で聞きました!!でも、噂なのに全然周りがザワつかないから、嘘だって思ってたんですよ!!」
「まぁ、周りが勝手に配慮をして、なかったことにしてたからな。。。。」
「うん。そうね。ほんと、あの2人って、わかりやすい。大切すぎるのかしらね。いつも見つめ合ってるわよね、、、」
「はー。そんな見つめ合ってて周りも何も言わないとか、この職場、優しすぎますね、、、」
「当たり前だ。俺たちは、あの2人に助けられた。だから、俺たちも、見守るんだよ。」
「ええ、私たちも、もらった恩は、返さないとね。」
「なるほど。それが、恩返しですか、、、」
思っよりも世界は優しく回っている。。。
この世界が捨てたものじゃないと思えることが、この先に待っていると知るのは、もう少し、先のこと。。
実は、本人だけじゃなくて、周りの人にも気づかれていたよ、というオチ。
※少し、表現を追加しました。同僚の心情表現をかえました。何度も、すみません。。。




