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三話

不定期最新一歩前進。

 まず、目に映ったのは薄暗さと操作盤や床を埋め尽くす様に積もった埃と砂にくっきりと残る彼女の足跡。

 それだけの光景の筈なのに違和感が在った。

 そりゃそうだろう? 僕が依頼を見つけたのは二日前で依頼が発注されたのは一週間前、ココまでの移動に費やした日数は六日程。どう考えても目の前のあり様はざっと見積もって数年前から放置されてますよって風体だ。

 ここに目的のモノはないと脳が答えを打ち出すが、手掛かりがない。その事実に否応なく調べるしか道はない。背後には彼女―――戦人の女が付いてくる。

「ねぇ。」

 背後の彼女へ声と視線を投げる。巨乳で小柄でいい感じだが、大型のゴーグルに類似した仮面を付けているせいで顔は判別できないのが――――美人だと思う。ってそんな思考はココで想っていても意味はないか……。

「何でしょうか?」

「変だと……あぁ―――君には意味のない質問か」

 言葉を切る。呼んで置いて失礼かもしれないが、彼女は戦人で俺は渡り鳥の運送業。

 仕事内容がまるで違うから、考え方も異なるよって彼女にココの違和感を問うても意味はない。

 闘うモノと探すモノの溝だろうな―――――。

 再び彼女へと視線を向けるとなんか悶えてる。身をもじもじさせながらブツブツ小さな声で何かを呟いている。

「ハァ……ハァ、モット!!」

「変態……。」

「も、もっっと激しく、ビッチとか雌豚でお願いします。」

 妄想に耽っていたと思えば、ちゃんと聞いていたらしい。

「初対面で名前も知らない人にその呼び方はひどいだろう。」

 完全に足を止めて背後の女へと振り返る。

「名前も知らない他人にビッチとか雌豚とか呼ばれてヤラレルから興奮しちゃうんですよ。」

 うっとりと甘美に酔いしれる様な表情を浮かべて変態は発現する目の前の女。

 こんな女が、よくこの世界で生き残ってこれたなと素直に感心しつつ、とりあえず彼女の変態加減は適度に流してないと話も成立しないと判断し、前へと向きなおり調査を続行する。

 やはり、見当違いだったのか? 砲台の内部を調べると明らかに数週間前のモノではなく、数年前に廃棄されたとしか想えない。

 腕を組み考える。渡り鳥の一団は次の<箱>へ渡る際に予定航路や到着予定日を人類守護連合に提出しなければ、出向する事ができない。到着予定日を一~二週間過ぎると行方不明扱いになり、一か月経過すると死亡扱いとされる。行方不明の段階で仕事として依頼される場合も少なく、大体は死亡扱いの一か月のモノが依頼として渡り鳥系列の仕事として発注される。

 元々古い依頼だったとか? いや、ソレはない。大凡一つの依頼の期限は二週間であり、期限を過ぎると自動的に依頼から抹消される。

 やはり、見当違いなのか? いや、この大型砲台は生きている。世界を渡るのに武装を途中で捨てる自殺行為をする筈がない。だが、この砲台が今回の依頼に関わっているなら、事の始まりは数年前の事に成ってしまう。

「見当違いと考えて潔く砲台の事は忘れて地道に探した方がいいのか?」

ただ口から洩れた思考の欠片は独り言として消えていく。

「いえ、この砲台はきっとお探しのモノと関係ありますよ。すぐ稼働する様な生きた砲台がココにあるという事は誰かが最近までメンテナンスを行っていた証拠ですし」

 独り言の筈がはっきりと言葉になっていたせいもあり彼女が応答する。

「たしかに……でもコントロール室に積もった埃や砂の説明は?」

 組んだ両腕を解き、左手で返答を促す様にどうぞといった感じで手を差し出す。

 彼女はじっと俺の顔を数秒見つめた後、ポンと両掌を叩く。

「あなた、渡り鳥さんですもんね。そっか、そっか、ならしょうがないか……」

 一人納得した様に何度もうなずく彼女。

「……?」

「えっとね、この砲台は旧世代の半自立自動型砲台なんです。操作盤を弄らなくても初期設定ファーストオーダーさせ、しっかり打ち込んであれば、電脳が勝手に命令を実行し続けるタイプなんです。あとは弾を定期的に交換するだけでOKなんですよ。補足ですが電脳なので内部メンテは勝手にしてますね。」

「なるほど。ってきり隠れやすい廃墟の中と踏んでいたけど……ここを中心に捜索したほうが速いかもな。ありがとう」

 情報も得た事だし、砲台のコントロール室を出て、半壊した鋼鉄の扉をくぐり外にでる。

 砂漠の砂を含んだ荒い風と灼熱の太陽が肌を刺す。

「さてと」

 軽く屈伸と運動をして兜の面を下す。生の風景から映像を通した機械的な風景が視界に広がる。

 機械を通した視界映像をコントロールして熱源探知視点へ切り替える。

「先ずは北から攻めるか」

 一歩踏み出す……彼女も俺と同じく一歩、歩を進める同じ方向にだ。振り向いて彼女を確認。

 不思議そうに首を傾げる。俺についてくるのが当たり前といった風体で……。

「ついてくる気?」

「はい、ご主人様。」

 語尾の最後にハートマークが付きそうなくらいに甘ったるく高い声で彼女は応える。

「ご主人様になった覚えはない。」

 彼女の呼吸に興奮の色が混ざり、二呼吸。

「あぁ……」

 歓喜に震えてるし、M気質を震わせる程に冷たい攻撃的な声が出ていたのか? ここで断っても付いて来るのは明白だろう。怒っても、威嚇しても、駄目だ余計に喜ばせる……優しくすれば幻滅して諦めるかな?

 「しかたない……付いてくるといいよ」

 出来るだけ優しい声で彼女へ答える。

 ところが、明らかに嬉しそうな、太陽の様に眩い笑顔で

「はい!」

 と彼女は答える。……アレ?

 


読んでいただき誠にありがとうございます。

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