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擬人化大戰 ――アマデウス・プリティ――  作者: ゆうきまる
エピソード 01 走り屋伝説☆
2/9

01

 どこまでも長く延びる一本道。

 道端には雑草が茂り始めている。人を乗せ、移動するためのモビリティはとうの昔に不要となった。道路は文明社会を最低限、維持するための物流インフラとして機能しているに過ぎない。

 ある時点から人類は自ら移動することができなくなった。人は生まれて以後、どこにも動かず、短い寿命をまっとうするまでの間、同じ場所で過ごすのが当然となってしまったからだ。

 対向車など一向に見当たらない真っ直ぐな道。そこを並走しながら疾駆する二台の軽自動車。

 一台は小振りなスポーツクーペを思わせるシルエットで、赤いボディーカラーの側面には【BORUTO IXV】のステッカーが貼り付けてある。

 そのフロントライトにはでかでかとデフォルメ調の目が描かれ、夜間の運転には明らかに支障がありそうだった。だが、実際にはなんの問題もない。もはや自分で車を運転する人間などはるか昔にいなくなり、それどころか車に乗って移動する人類そのものが絶滅しているのだから……。

「おい、ボルト。本当なのかよ、いまの話は?」

 並走するもう一台、白い車体で荷台の後部に【真金凸取工業】と筆書きされた軽トラックがまるで人間のような声を発し、仲間へ問いかける。

「間違いないさ、マック。おれは見たんだ。あの夜、神様がみんなの前に現れて、『モーターズ』の擬人化姫アマデウス・プリティが誕生するって言ってくれたんだよ!」

 ボルトと呼ばれたスポーツクーペは嬉しそうに語りながら、エンジンを軽く噴かした。

 彼らは発達したAIによって自律的な進化を遂げた車両型民族、【モーターズ】の一員である。その始祖は人間の足代わりとして開発された自動運転タイプのオートモービルだった。    

 フロントグリル付近に描かれている表情豊かなグラフィック。これも始まりは人に仕える存在として、できる限り親近感を持ってもらう必要があったからだ。

「それが例のスクラップ置き場なのかよ?」

「そうさ。だからおれたち二台がみんなを代表して、モーターズのプリンセスを迎えに行くんだ」

 嬉々として、自分たちの擬人化姫アマデウス・プリティを語るボルト。口笛代わりにクラクションで景気のいいメロディーを演奏する。

「で、彼女の名前は?」

 相方の浮かれ具合に若干、呆れた様子でマックが問いかけた。彼らの仲間は世界中に広がった無人の工場で日々、生み出されている。その数と種類の豊富さはとっくに人類など超越していた。それでもなお、モーターズの車体には運転席ドライバーズシートがあり、コックピットスペースにはハンドルが装備されていた。もはやそこに納まる人間など、皆無であるにも関わらずだ。

 それは飛べない鳥がいまなお翼を持ちながら地上を闊歩している姿にも似ている。

「V8! おれたちのお姫様の名前は、【プリンセス】V8(ブイエイト)だ!」

 擬人化姫の名前を大きな声で読み上げながら、ボルトは華麗なドーナツターンを三連続で成功させる。そしてスピードを落とすこともなく、さらに加速を付けながらロードを疾走していった。

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