表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
81/84

いいもの?

今回は〜前回の後書きで話した事が書かれています。

台詞が多めです。誰が誰だが、貴方は当てられますかね?それで良ければどうぞ。


夜。

屋敷の一室には、男五人だけが集まっていた。

暖炉の火は静かに揺れ、外では雪が降っている。

その静寂を壊しているのは、明らかに三人だった。


「ふぅ……あったまるな」


ロディは椅子に深く座り、どこか詩的な表情をしている。エドガーは姿勢を保とうとしているが、微妙に肩が揺れている。トリスはすでに笑いの沸点が壊れていた。


「なぁ、いいもの見つけたんだけどさ」


テーブルの上に置かれたのは、派手な包みの菓子箱。


「……それは」

フィシリアが一瞬だけ眉をひそめる。


「甘いやつ」


「冬限定」


「あと、面白そう」


説明になっていない。


「その箱、裏を見ましたか」


「見たぞ」


「ちゃんと読んだ?」


「読んだ」


「……酔うって書いてありますが」


沈黙。


「酒じゃない」


「菓子だ」


「だから大丈夫」


論理が崩壊している。


「……もう酔ってますよね」


「まだいける」


「むしろ、ここから」


「なにがですか」


箱は開けられた。

甘い香りが、暖炉の熱に溶けて広がる。


「一個だけなら」


最初に手を伸ばしたのはトリスだった。


「……うま」


次にロディ。

「これは……」


最後にエドガー。

「……想像以上に」


数分後。

空気が変わった。


「フィシリア」


「なんですか」


「お前、硬いな」


「通常運転です」


「もっと肩の力抜けよ」


「抜いています」


「嘘だな」


距離が近い。やたらと近い。


「……リオンさん」

フィシリアは静かに助けを求める。


「えっと……」

リオンは苦笑しつつも、菓子を一つ手に取っていた。


「これ、そんなに強くはなさそうですし」


「リオンさん????」


「少しくらいなら」


最悪の選択だった。


「……甘いですね」


「だろ?」


「……あ」

リオンの声が、ほんの少しだけ柔らかくなる。


「フィシリアくんも」


「いりません」


「ほら」

沈黙の末、フィシリアも受け取った。


「……」


数十秒後。

「フィシリア?」


「これは……予想以上ですね」

考えることが雪のように溶けていく。


暖炉の火が、ぱち、と音を立てた。

外の雪は音を吸い込んで、屋敷の中だけが妙に賑やかだ。


少し間があって、テーブルを指で叩く音。トリスが手を叩く。


「お題を出そう。三つ」


この時点で、誰も止めなかった。止められる雰囲気ではなかった。


「一つ目、ルナティナについて」


一瞬、空気が揺れた。だが誰も否定しない。


「二つ目、どうやって屋敷に来たか。過去込みな」


「三つ目、ルナティナって、結局どういう人か」


沈黙。

そして、なぜか全員が頷いた。


「……では」


咳払い。

「私からですかね」


姿勢を正そうとして、少し失敗する。


「最初の印象は」


少し考える。

「正直に言えば、危うい方だと思いました」


「ほう」


「無鉄砲で、真っ直ぐで、周囲を巻き込む力が強すぎる」


「ですが」

言葉が、少し柔らぐ。


「放っておけない。そういう方です」


「重いな」


「事実です」


次。


「俺か」

ロディは天井を見上げる。


「ルナはな」


「……いや」


「ルナティナは」


一瞬、言い直した。

「風みたいだ。突然吹いて、気づいたら景色が変わってる」


「怖いか?」

「怖い」


「でも、嫌じゃない」


誰も突っ込まない。

「次、どうやって屋敷に来たか」


トリスが笑う。

「オレはさ、気づいたらいた」


「説明になってません」

「でも、本当だ。声をかけられて、気づいたら扉が開いてた」


「選択肢なんてなかったな」


「……私も似たようなものです」


フィシリアが低く言う。

「合理的な理由があったはずなのに」


「今となっては、正確に説明できない。ただ、

来るべき場所だった。そんな感覚だけが残っています」


「感覚派だな」


「今だけです」


「僕は」

リオンが、少しだけ間を置く。


「誘われました。とても穏やかに」

「断る理由が見つからなかった……それだけです」


「最後。三つ目だな、ルナティナって、結局どういう人か」


全員が、少し黙る。


「面倒な人」


「危険な人」


「優しい人」


「強い人」


「弱い人」


言葉が、ばらばらに落ちる。


「全部だろ」


誰かが言う。

「一言で言えるわけない」


「それなのに」


「中心にいる」


「不思議だよな〜」


暖炉の火が、また鳴った。


「……酔ってるな」

フィシリアが呟く。


「今さらだろ」


「ここまで来たら」


「最後までだ」


夜はまだ長い。雪は静かに降り続け、

男五人の男子会は、思った以上に深いところまで潜っていった。そして、この男子会は確実に、ろくな方向へ進まない。



翌朝。

屋敷の廊下に、いつもより遅い朝日が差し込んでいた。


……静かすぎる。


その理由はすぐに判明する。

応接室の扉を開けた瞬間、ルナティナは固まった。


ソファ。

床。

ラグ。

とにかく、転がる男五人。


「……なにこれ」


まず目に入ったのは、ロディ。

ソファの背もたれに半分身体を預け、片手で額を押さえている。


「……頭が割れる」


次。エドガー。

椅子にきちんと座っているのに、姿勢が崩れているという異常事態。


「……申し訳……ございません……」


声に力がない。


床にはトリス。完全に行き倒れ。


「……水……」


さらに。

フィシリアとリオンは並んでテーブルに突っ伏している。


「……気分が悪いです」


「……胃が……」


ルナティナは、しばらく無言だった。

数秒。いや、十秒。


「どうしたら」


一歩踏み出す。

「こうなるのよっ!」


ツッコミが炸裂した。

「ちょっと!飲めない人いたよね!?なんで全滅してるの!?」


「……菓子」


「は?」


「……酔う菓子でした……」


フィシリアが弱々しく告げる。


「誰が持ってきたの!」


沈黙。

その中で、トリスが親指を立てた。


「……ノリ」


「ノリで持ってくるな!」


「しかも食べるな!」


「全員食べるな!」


ルナティナは額を押さえる。


「エドガー!」


「はい……」


「あなたが止める側でしょ!」


「……面目……ございません……」


頭を下げようとして、途中で諦める。


「ロディ!」


「……妹よ……」


「語りかけないで!」


「今なら……世界の真理が……」

「聞きたくない!」


リオンがゆっくり顔を上げる。


「……ルナティナさん……」


「なに?」


「笑わないでください……」


「笑ってない!怒ってる!」


「……でも……」


視線が合って、ルナティナは少し息を詰まらせた。


「……いや、いいや」


深呼吸。


「はい、全員!水!布!窓開ける!」

バタバタと動きながら、なおも口は止まらない。


「男子会って何話したらこうなるの!」


「夜にお菓子で酔うって何!しかも五人揃って!」


「……楽しかったです……」

フィシリアの一言に、全員が頷いた。


「楽しいで済む問題じゃない!」

そう言いながら、ルナティナはロディの額に冷たい布を置いて、フィシリアの前に水を置いた。


「……ありがとう」

「主人ありがとうございます」


「はいはい」


エドガーにも、水を差し出す。


「……ご迷惑を……」

「迷惑って自覚あるなら次から止めて!」


トリスには、毛布をかける。


「……優しい……」


「ノーコメント。……今だけだよ」


最後にリオン。


「……大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないのはあなた達でしょ!」


言い切ってから、ふっと息を吐く。


部屋を見渡す。情けなくて、面倒で。それでも。

小さく笑ってしまった。ほんと、手のかかる人達!


外では、雪がきらきらと光っている。

この朝だけは、妙に賑やかだった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


そういえば、前回で80話目、だったらしいですね!

なんてこった〜。これは第二回目の男子会、かもしれませんね〜お楽しみいただけたでしょうか?

それと、長期休みに入ったので投稿頻度が増えますよ。

書くことがありません!


ここまで読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ