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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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回復

今回は!続きですー。それで良ければどうぞ。

ルナティナとミレイナが多めです。他のキャラは登場しません。


ミレイナの家は、森の外れにひっそりと建てたはず。

小さいけれど、丁寧に手入れされた庭。


──家全体を覆う結界は、やっぱり弱々しい。

触れれば壊れそうなくらい。脆い。


「……帰ってきた、んだけど……」

ミレイナは扉の前で立ち止まり、小さく深呼吸した。

胸元を握る手がまだ震えている。


私は横に立って、にっと笑う。

「大丈夫。ミレイナの家、ちゃんと守れるようにするから」


「……はい……」


扉を開けると、家族がぱっと振り向いた。


「ミレイナ!?」

「帰ってきたのね……!」


母親らしき女性が走り寄り、涙ぐみながら抱きしめる。

父親も安堵の息を吐き、肩を落としていた。


「ご心配を……おかけしました……」


少し離れて見守る。うん、帰るべき場所って感じ。


家族が落ち着いた頃、母親が私の方へ向き直った。

「ルナティナ様……娘を、本当に……ありがとうございます」


「いいや、ミレイナが強かったからだよ」


私は軽く手を振った。

「それより、結界。いい? 調整しちゃうね」


「えっ、いま……ですか?」

「もちろん。壊れかけのまま帰すの、私が嫌なんだよ」


私は家の周囲を歩き、指先で空気をなぞる。

結界は薄く、魔力のゆらぎがあちこちにひび割れを作っていた。このままじゃ、ちょっと強い魔物が通りかかっただけで破られる。


「これじゃ怖かったよね、ミレイナ」


「はい。夜になると外の音が全部敵に聞こえて……」


「もう大丈夫にするから」


私はゆっくり息を吸って、魔力を指先に集中させる。

淡い光が走り、結界の破れた部分がひとつずつ埋まっていく。ひびは消え、代わりにしっかりとした厚みが生まれる。


「……す、すご……」

ミレイナの母が思わず声を漏らす。


私は最後に結界全体へ魔力を流し込み、深く息を吐いた。


「はい、完成。前の結界の十倍くらい強くしたよ。

 ミレイナを狙った奴がまた来ても……ここまでは入れない」


ミレイナは両手を胸に当てて、震えながら微笑んだ。


「こんなにありがとうございます」



「言ったでしょ。あんたの家が安心できる場所じゃなきゃ、意味ないんだって。後は自分でも強化してもいいよ」


しばらく家族との穏やかな空気が続いたあと──

ミレイナが私にそっと近づいてきた。


「ルナティナ様……」

「ん?」


「……また……会いに行ってもいいですか……?」

その瞳は、期待と不安で揺れていた。


「もちろん。ミレイナはもう、屋敷に出入り自由だよ」


ミレイナの頬がふっと赤く染まる。


「……帰ってきて……いいんですね……?」

「うん。帰ってくればいい」


その瞬間、ミレイナは安心したように息を吐いた。

肩が落ち、心からの笑みが浮かぶ。


「……好きです、ルナティナ様……」


「はいはい、分かってるよ」


私は手をひらひらと振りながら、ミレイナの頭を軽く撫でた。


「じゃ、私は一旦戻るね。トリスも見ないと」


「はい……気をつけてください」


ミレイナの家を出ようとして、私はふと足を止めた。


「……あ、そうだ」


「ルナティナ様?」

ミレイナが首をかしげる。


私はポケットを探り、小さな銀色のペンダントを取り出した。丸いプレートの中央に、屋敷の紋章が刻まれている。淡く魔力が脈打つように光っていた。


「これ、ミレイナに渡しとく」


「え……?  これは……?」


「テレポート用の魔法道具。

私が作ったやつ。ミレイナ専用ー」


ミレイナは息を呑んで目を見開いた。


「えっ……そんな……高価な!」


「高価とかじゃないって」


「ミレイナが危ない時や、寂しくなった時、

 私に会いたくなった時でもいい。

 これを握って帰るって思えば、屋敷の玄関に飛べる」


ミレイナの手が震える。


「そんな……そんな特別なもの……私なんかが」


「ミレイナだからこそ」


私はそのペンダントをそっと彼女の手のひらに乗せた。


「だってさ、ミレイナがまた操られたり、困ったことがあっても……私が気づけない場所にいるの、嫌だ」


ミレイナの瞳が一気に潤む。


「……ルナティナ様……っ」


「もし使わないで済むならそれが一番。

でも、持っててほしいの」


ミレイナは胸にぎゅっと抱きしめるようにペンダントを握った。


「宝物にします……絶対に……大事にします……!」



私は苦笑しながら、軽く頭を撫でた。


「そんな大げさじゃなくていいよ。

帰りたい時に帰ってくればいいだけ」


顔を上げたミレイナは、嬉し涙をこぼしながら微笑んだ。


「……本当に……

 ルナティナ様のこと……大好きです……」


「はいはい、分かってる」


結界の光が、背中を優しく見守るように揺れていた。


ルナティナは掌の上で小さなペンダントを揺らした。

淡い光が、ミレイナの瞳に反射してきらりと揺れる。

ミレイナはぎゅっとペンダントを握りしめた。


「これを持ってれば……

 ルナティナ様が……そばにいるみたいで……」


「言い方可愛いんだけど???まぁ、そういうこと」


ふっと笑うと、ミレイナは頬を赤くしながら微笑んだ。


「……ルナティナ様……必ずまた会いに行きます」


「うん。来なよ。待ってる」


ミレイナは深く一礼し、胸に手を当てる。


「……本当に……大好きです」


「はいはい、分かったから。泣くなって」


軽く頭をぽん、と叩いて、私はくるりと踵を返す。

扉を出る直前、ほんの少しだけ振り返った。


ミレイナは――

胸にペンダントを抱きしめたまま、

まるで羽を崩さないように持ち、

大事そうに立っていた。



その姿を見て、私はほんのり笑った。


「……じゃ、行ってくる」


扉を閉める。


次は、トリス。そして屋敷のみんなが待っている。


でも心のどこかで――

ミレイナはもう大丈夫って確信があった。

――ミレイナは、もうひとりじゃない。


あの子は帰る場所を取り戻した。

帰ってきていい場所もできたのだから。

屋敷の方向へ歩き出した。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


今日テストでした。明日でテストが終わるので頑張ります。


この話はですね、テスト前に書いてはあった話でした。

ちょっと迷ってました。投稿するか、しないか。

次の話もあるんですけど、うーん、という感じです。

投稿していないのにも関わらず、毎日読んでいただける方々、ありがとうございます。(毎日、一応チェックしています)


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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