回復
今回は!続きですー。それで良ければどうぞ。
ルナティナとミレイナが多めです。他のキャラは登場しません。
ミレイナの家は、森の外れにひっそりと建てたはず。
小さいけれど、丁寧に手入れされた庭。
──家全体を覆う結界は、やっぱり弱々しい。
触れれば壊れそうなくらい。脆い。
「……帰ってきた、んだけど……」
ミレイナは扉の前で立ち止まり、小さく深呼吸した。
胸元を握る手がまだ震えている。
私は横に立って、にっと笑う。
「大丈夫。ミレイナの家、ちゃんと守れるようにするから」
「……はい……」
扉を開けると、家族がぱっと振り向いた。
「ミレイナ!?」
「帰ってきたのね……!」
母親らしき女性が走り寄り、涙ぐみながら抱きしめる。
父親も安堵の息を吐き、肩を落としていた。
「ご心配を……おかけしました……」
少し離れて見守る。うん、帰るべき場所って感じ。
家族が落ち着いた頃、母親が私の方へ向き直った。
「ルナティナ様……娘を、本当に……ありがとうございます」
「いいや、ミレイナが強かったからだよ」
私は軽く手を振った。
「それより、結界。いい? 調整しちゃうね」
「えっ、いま……ですか?」
「もちろん。壊れかけのまま帰すの、私が嫌なんだよ」
私は家の周囲を歩き、指先で空気をなぞる。
結界は薄く、魔力のゆらぎがあちこちにひび割れを作っていた。このままじゃ、ちょっと強い魔物が通りかかっただけで破られる。
「これじゃ怖かったよね、ミレイナ」
「はい。夜になると外の音が全部敵に聞こえて……」
「もう大丈夫にするから」
私はゆっくり息を吸って、魔力を指先に集中させる。
淡い光が走り、結界の破れた部分がひとつずつ埋まっていく。ひびは消え、代わりにしっかりとした厚みが生まれる。
「……す、すご……」
ミレイナの母が思わず声を漏らす。
私は最後に結界全体へ魔力を流し込み、深く息を吐いた。
「はい、完成。前の結界の十倍くらい強くしたよ。
ミレイナを狙った奴がまた来ても……ここまでは入れない」
ミレイナは両手を胸に当てて、震えながら微笑んだ。
「こんなにありがとうございます」
「言ったでしょ。あんたの家が安心できる場所じゃなきゃ、意味ないんだって。後は自分でも強化してもいいよ」
しばらく家族との穏やかな空気が続いたあと──
ミレイナが私にそっと近づいてきた。
「ルナティナ様……」
「ん?」
「……また……会いに行ってもいいですか……?」
その瞳は、期待と不安で揺れていた。
「もちろん。ミレイナはもう、屋敷に出入り自由だよ」
ミレイナの頬がふっと赤く染まる。
「……帰ってきて……いいんですね……?」
「うん。帰ってくればいい」
その瞬間、ミレイナは安心したように息を吐いた。
肩が落ち、心からの笑みが浮かぶ。
「……好きです、ルナティナ様……」
「はいはい、分かってるよ」
私は手をひらひらと振りながら、ミレイナの頭を軽く撫でた。
「じゃ、私は一旦戻るね。トリスも見ないと」
「はい……気をつけてください」
ミレイナの家を出ようとして、私はふと足を止めた。
「……あ、そうだ」
「ルナティナ様?」
ミレイナが首をかしげる。
私はポケットを探り、小さな銀色のペンダントを取り出した。丸いプレートの中央に、屋敷の紋章が刻まれている。淡く魔力が脈打つように光っていた。
「これ、ミレイナに渡しとく」
「え……? これは……?」
「テレポート用の魔法道具。
私が作ったやつ。ミレイナ専用ー」
ミレイナは息を呑んで目を見開いた。
「えっ……そんな……高価な!」
「高価とかじゃないって」
「ミレイナが危ない時や、寂しくなった時、
私に会いたくなった時でもいい。
これを握って帰るって思えば、屋敷の玄関に飛べる」
ミレイナの手が震える。
「そんな……そんな特別なもの……私なんかが」
「ミレイナだからこそ」
私はそのペンダントをそっと彼女の手のひらに乗せた。
「だってさ、ミレイナがまた操られたり、困ったことがあっても……私が気づけない場所にいるの、嫌だ」
ミレイナの瞳が一気に潤む。
「……ルナティナ様……っ」
「もし使わないで済むならそれが一番。
でも、持っててほしいの」
ミレイナは胸にぎゅっと抱きしめるようにペンダントを握った。
「宝物にします……絶対に……大事にします……!」
私は苦笑しながら、軽く頭を撫でた。
「そんな大げさじゃなくていいよ。
帰りたい時に帰ってくればいいだけ」
顔を上げたミレイナは、嬉し涙をこぼしながら微笑んだ。
「……本当に……
ルナティナ様のこと……大好きです……」
「はいはい、分かってる」
結界の光が、背中を優しく見守るように揺れていた。
ルナティナは掌の上で小さなペンダントを揺らした。
淡い光が、ミレイナの瞳に反射してきらりと揺れる。
ミレイナはぎゅっとペンダントを握りしめた。
「これを持ってれば……
ルナティナ様が……そばにいるみたいで……」
「言い方可愛いんだけど???まぁ、そういうこと」
ふっと笑うと、ミレイナは頬を赤くしながら微笑んだ。
「……ルナティナ様……必ずまた会いに行きます」
「うん。来なよ。待ってる」
ミレイナは深く一礼し、胸に手を当てる。
「……本当に……大好きです」
「はいはい、分かったから。泣くなって」
軽く頭をぽん、と叩いて、私はくるりと踵を返す。
扉を出る直前、ほんの少しだけ振り返った。
ミレイナは――
胸にペンダントを抱きしめたまま、
まるで羽を崩さないように持ち、
大事そうに立っていた。
その姿を見て、私はほんのり笑った。
「……じゃ、行ってくる」
扉を閉める。
次は、トリス。そして屋敷のみんなが待っている。
でも心のどこかで――
ミレイナはもう大丈夫って確信があった。
――ミレイナは、もうひとりじゃない。
あの子は帰る場所を取り戻した。
帰ってきていい場所もできたのだから。
屋敷の方向へ歩き出した。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今日テストでした。明日でテストが終わるので頑張ります。
この話はですね、テスト前に書いてはあった話でした。
ちょっと迷ってました。投稿するか、しないか。
次の話もあるんですけど、うーん、という感じです。
投稿していないのにも関わらず、毎日読んでいただける方々、ありがとうございます。(毎日、一応チェックしています)
ここまで読んでくださりありがとうございました。




