再会
今回は本編と言っていいのか?本編に戻ります。
それで良ければどうぞ。
風が止まった。
木々のざわめきが遠のき、静寂の中に、聞き慣れた声が響いた。こいつは――
「おやぁ〜?これはこれは、お久しぶりじゃないですか!」
その声音に、ルナティナの指先がぴくりと動く。
あの日、逃がしたはずの男――トリス。
まるで何事もなかったように立っていた。
「……随分、余裕そうで。再会が早いね」
「いやぁ〜、お嬢さん。前回はちょーっとタイミングが悪かっただけでしてね?」
「そう」
いつもの調子だ。けれど――違う。
五度目の再会――それなのに、胸の奥がざわつく。
「ねぇ、ルナティナさん。奇遇ですねぇ、こんな場所でまた会うなんて」
いつも通りの、作り物みたいに柔らかい笑み。――ここだ。いつからだろう。初めて会った時からずっと感じていた、小さな穴。なんか合わない。
でも、四回目は流した。
違和感は、まだ形にならなかった。
けれど五度目……さすがに誤魔化しきれない。
「……奇遇、ね。あなたとは特に」
軽く笑い返しながら、観察する。
眉の動き、頬の引き上がり方、喉の動き。
こちらが笑うタイミングに合わせて、
完璧に“作られた“反応を返す。
……うん。やっぱ、変。
感情の種類が、少なすぎる。
笑う、驚く、喜ぶ、困る――それだけ。
あの時だって言葉だけ。言葉しかない。
深いところから湧き上がる揺らぎが、一度もない。
「ルナティナさん、今日もお変わりなく。安心しましたよ」
「うん。あなたこそ、変わらないね」
言った瞬間――小さく、ほんの一瞬。
彼の目が揺れた。今の……曖昧な返しができないの?
試したくなる発言。
私はこういう探りあいが多分、得意?かな?
「ねぇ、トリス。私のことどれくらい知ってるの?」
「もちろん、よく存じておりますとも。あなたのことは――」
「ダウト」
一言挟むと、彼の口元がピタリと止まった。
その間。その一瞬の気配の消失。
――決定的だった。
「嘘つくとき、呼吸が浅くなるんだね。今のしてたよ」
「……鋭いですねぇ」
完璧な笑み。
だけど、その笑みの奥は空っぽだった。
これは人の反応じゃない。背筋がよく冷えるなー。
「……ねぇ、あなたって、本当にトリスなの?」
問いかける私に、
彼は変わらない笑みのまま首を傾げる。
「もちろん、私ですよ。私以外に誰が?」
「――ダウト」
再び止まる呼吸。揺らがない表情。
でも確実に、反応が遅い。
間がいつもより三秒ぐらい遅いかな?確信した。
ずっと感じてた違和感の正体……これか。
五度会って、一度も生きる揺らぎを感じなかった。
だから気づけなかった。五度目でようやく見えた。
「君は……誰かに操られてるね」
ルナティナの声が静かに落ちる。
すると――男の顔から、笑みがすっと抜け落ちた。
「……やれやれ。やはり、あなたは面倒な御方だ」
声の温度が変わる。
五度目の再会で、ようやく真実に触れた。
「誰に操られてるの?」
静かに言ったその瞬間、
トリス――いや、それの肩がぴくりと揺れた。
あっ!ごめんそれ試しただけなんだんだけど?
本当になっちゃった〜。なんて、嘘だけど。気づいとるわ。
「操る?何の話です?」
余裕ぶる声。私は一歩近づく。逃げ道を封じるように。
「ねぇ、トリス。あなた、最初に会ったとき――」
私は指を立て、淡々と事実を突きつける。
「一度も瞬きしなかったわよね」
驚いたよ。一度も瞬きしないなんて。
トリスの肩が、わずかに沈む。動いた。
「観察しすぎですよ、あなたは」
「嘘をつくときは呼吸が浅くなるのも、五回目で確信した」
「……」
もはや誤魔化せないと悟ったのか、笑みが歪む。
「……君は、ずっと作られた優しさだった」
裏トリスの口元が、ぎり、と吊り上がる。
「観察しないでほしいですね。
私の仮面は……そんなに薄かったですか?」
「そうだね。あなたの核が空っぽだから」
――この時、一瞬で、空気が緊張に染まった。
暗闇。どのくらいいただろうか。
冷たい鉄の中で押し潰されるみたいな圧迫感。
そこから、必死に手を伸ばす。
ちがう。そんな言い方しねぇ!
気づいてくれ。頼む……!
オレは、そんなに……完璧じゃねぇ……!
笑うの下手だし、呼吸も荒い。
しかも嘘なんかつけねぇ……!
ルナティナ!ここにいる!頼む……見つけてくれ……!!
声は外に届かない。喉がない。腕がない。
目だけがある世界。
その意識が、初めて外へ向かって手を伸ばした――。
彼女の声だけが本物に響き続ける。
『落ち着いてね。あなたはそこで眠っていればいいの。
私が代わりに、動く』
オレの意識はそこまでだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
期末テストなんて関係ねぇ!
書きたければ書く!それでいいですよね!
そうはゆっても課題がー!終わるかな?
ここで宣伝しまーす。トリスが初登場の話は37話の胡散臭い人間です。タイトルでわかる人もいるかも知れませんね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




