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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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再会

今回は本編と言っていいのか?本編に戻ります。

それで良ければどうぞ。



風が止まった。

木々のざわめきが遠のき、静寂の中に、聞き慣れた声が響いた。こいつは――


「おやぁ〜?これはこれは、お久しぶりじゃないですか!」


その声音に、ルナティナの指先がぴくりと動く。

あの日、逃がしたはずの男――トリス。

まるで何事もなかったように立っていた。


「……随分、余裕そうで。再会が早いね」


「いやぁ〜、お嬢さん。前回はちょーっとタイミングが悪かっただけでしてね?」

「そう」


いつもの調子だ。けれど――違う。

五度目の再会――それなのに、胸の奥がざわつく。


「ねぇ、ルナティナさん。奇遇ですねぇ、こんな場所でまた会うなんて」


いつも通りの、作り物みたいに柔らかい笑み。――ここだ。いつからだろう。初めて会った時からずっと感じていた、小さな穴。なんか合わない。


でも、四回目は流した。

違和感は、まだ形にならなかった。

けれど五度目……さすがに誤魔化しきれない。



「……奇遇、ね。あなたとは特に」


軽く笑い返しながら、観察する。

眉の動き、頬の引き上がり方、喉の動き。

こちらが笑うタイミングに合わせて、

完璧に“作られた“反応を返す。

……うん。やっぱ、変。


感情の種類が、少なすぎる。

笑う、驚く、喜ぶ、困る――それだけ。

あの時だって言葉だけ。言葉しかない。

深いところから湧き上がる揺らぎが、一度もない。


「ルナティナさん、今日もお変わりなく。安心しましたよ」


「うん。あなたこそ、変わらないね」


言った瞬間――小さく、ほんの一瞬。

彼の目が揺れた。今の……曖昧な返しができないの?


試したくなる発言。

私はこういう探りあいが多分、得意?かな?


「ねぇ、トリス。私のことどれくらい知ってるの?」

「もちろん、よく存じておりますとも。あなたのことは――」


「ダウト」


一言挟むと、彼の口元がピタリと止まった。

その間。その一瞬の気配の消失。


――決定的だった。


「嘘つくとき、呼吸が浅くなるんだね。今のしてたよ」


「……鋭いですねぇ」


完璧な笑み。

だけど、その笑みの奥は空っぽだった。

これは人の反応じゃない。背筋がよく冷えるなー。


「……ねぇ、あなたって、本当にトリスなの?」


問いかける私に、

彼は変わらない笑みのまま首を傾げる。


「もちろん、私ですよ。私以外に誰が?」


「――ダウト」


再び止まる呼吸。揺らがない表情。

でも確実に、反応が遅い。

間がいつもより三秒ぐらい遅いかな?確信した。


ずっと感じてた違和感の正体……これか。


五度会って、一度も生きる揺らぎを感じなかった。

だから気づけなかった。五度目でようやく見えた。


「君は……誰かに操られてるね」


ルナティナの声が静かに落ちる。

すると――男の顔から、笑みがすっと抜け落ちた。


「……やれやれ。やはり、あなたは面倒な御方だ」


声の温度が変わる。

五度目の再会で、ようやく真実に触れた。


「誰に操られてるの?」


静かに言ったその瞬間、

トリス――いや、それの肩がぴくりと揺れた。

あっ!ごめんそれ試しただけなんだんだけど?

本当になっちゃった〜。なんて、嘘だけど。気づいとるわ。


「操る?何の話です?」


余裕ぶる声。私は一歩近づく。逃げ道を封じるように。


「ねぇ、トリス。あなた、最初に会ったとき――」

私は指を立て、淡々と事実を突きつける。


「一度も瞬きしなかったわよね」


驚いたよ。一度も瞬きしないなんて。

トリスの肩が、わずかに沈む。動いた。


「観察しすぎですよ、あなたは」


「嘘をつくときは呼吸が浅くなるのも、五回目で確信した」


「……」


もはや誤魔化せないと悟ったのか、笑みが歪む。


「……君は、ずっと作られた優しさだった」


裏トリスの口元が、ぎり、と吊り上がる。


「観察しないでほしいですね。

私の仮面は……そんなに薄かったですか?」


「そうだね。あなたの核が空っぽだから」


――この時、一瞬で、空気が緊張に染まった。


暗闇。どのくらいいただろうか。

冷たい鉄の中で押し潰されるみたいな圧迫感。

そこから、必死に手を伸ばす。


ちがう。そんな言い方しねぇ!

気づいてくれ。頼む……!


オレは、そんなに……完璧じゃねぇ……!

笑うの下手だし、呼吸も荒い。

しかも嘘なんかつけねぇ……!


ルナティナ!ここにいる!頼む……見つけてくれ……!!


声は外に届かない。喉がない。腕がない。

目だけがある世界。

その意識が、初めて外へ向かって手を伸ばした――。


彼女の声だけが本物に響き続ける。


『落ち着いてね。あなたはそこで眠っていればいいの。

私が代わりに、動く』


オレの意識はそこまでだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


期末テストなんて関係ねぇ!

書きたければ書く!それでいいですよね!

そうはゆっても課題がー!終わるかな?


ここで宣伝しまーす。トリスが初登場の話は37話の胡散臭い人間です。タイトルでわかる人もいるかも知れませんね。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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