答え
今回はー戦闘シーンです。何視点かは分かりません。長めです。それで良ければどうぞ。
ルナティナは鋭く息を吐き、魔力を解き放った。
窓から外へ飛び出す。空中戦だ。
「通常スキル――浮遊」
声が重なる。そして歩く度に足元に薔薇が散っていく。
「来ますね、ルナティナさん」
リオンの声が低く響く。彼の掌の上では、氷の結晶が宝石ののように輝いている。
「そうですね……準備はできてます」
ルナティナの髪の一部が紅色に染まり、瞳の奥に光と闇の光彩が交錯する。彼女の属性は月影。光と闇の両面を持ち、
夜と共に真価を発揮する――中間の力。
トリスが笑った。
「おやおやぁ〜珍しい組み合わせじゃないですか。氷と月影。冷たくて、儚い。美しいけど脆いんですよねぇ?」
「……リオンさん、支援を」
「了解です。無茶はしないでくださいね」
リオンの声が落ち着いて響く。
氷属性――青白い魔力が、呼吸のたびに薄い霧となって舞う。
その両手からは淡い光が零れ、周囲の魔力の流れを安定させる。彼の魔法は攻撃よりも調律。空間の波を整え、仲間の魔力を増幅させる。
対するトリスは、余裕の笑みを崩さない。
「おやぁ〜、息ぴったりですねぇ。いいですねぇ。まるで舞踏会のペアみたいだ」
「黙っとけ」
トリスはそんな二人を眺め、楽しげに微笑む。
「では、始めましょうか――契約の儀を」
彼の足元に鏡のような魔法陣が展開した。
そこには無数の光の欠片が浮かび、見る者の心を映し出す。
リオンが眉をひそめる。
「契約魔法?危険です、ルナティナさん、触れては――」
「分かってます」
ルナティナは短く返し、剣を構えた。
トリスの声が、詠唱と共に響く。
「――契約」
鏡面が震え、そこにもう一人のルナティナが現れる。
白ではなく、漆黒の髪をした彼女。
その瞳は闇を宿し、どこか悲しげに微笑んでいた。
「……私?」
「いいえ、あなたが隠しているあなたですよぉ」
トリスが軽く手を広げる。
「契約の条件は真実。偽りを否定し、
心の在り処を照らす――これが私の力ですよ」
ルナティナは剣を握りしめた。
「私の許可なく?」
「契約は対等です。私が映す代わりに、あなたは見られる。
ほら、きれいでしょう?あなた自身の闇ですよ」
黒いルナティナが動いた。
まるで本物のような速さで、紅い刃を受け止める。
その瞬間、紅と黒が激しくぶつかり合い、部屋中に光と氷の破片が散った。
「うわ」
「ルナティナさん!」
リオンがすかさず氷の障壁を展開する。衝撃波を和らげながら、冷気で鏡面を凍らせようとするが――
トリスが軽く笑った。
「おっと、氷では止まりません。鏡は真実を映す。冷やせば冷やすほど、鮮明になるんですよ」
鏡の中の闇のルナティナが囁くように言う。
「あなたが恐れているのは、力じゃない。自分を失うこと……でしょ?」
「そうだね、自分の道が見えなかったらね」
「契約が真実を映すなら、あなたが選ぶ真実を見せてください。闇ではなく――月影を」
「スキル――蕾」
その言葉に、ルナティナはゆっくりと息を吸い込む。
切り裂いた。そして、敵はすぐに塵となった。
「スキル――白薔薇」
ルナティナが空気を震わせた。
彼女の掌から放たれた光はまっすぐにミレイナの影を貫き、絡みついていた光の糸が一瞬だけ緩む。
「リオンさん、今」
ルナティナの叫びに応えるように、リオンが一歩前に出た。
「スキル――氷華連結」
彼の声は静かだった。だが、響いた瞬間、氷の花弁が幾重にも重なり、ミレイナを縛る光の糸を切る。
氷はまるで意思を持つように広がり、トリスの魔力を封じ込めていく。
「な……っ!?氷が、干渉を――!」
トリスの目が驚きに見開かれた。
その隙を逃さず、ミレイナを取りに行く。
「ミレイナ!戻って!」
その叫びに、ミレイナの瞳が微かに揺れる。
「……ルナ……ティナ……さま?」
掠れた声。
ミレイナの意識が、確かに戻っている。
「よし」
ルナティナが駆け寄り、抱きとめるようにその体を支える。
ミレイナの頬に温もりが戻るのを感じ、安堵の息が漏れた。
リオンも一歩近づき、優しく微笑む。
「大丈夫です、もう干渉は途切れました。よく頑張りました」
ミレイナは小さく頷き、震える手でルナティナの服を掴む。
「……怖かった……ずっと、暗いところで……でも、声が聞こえた。ルナティナ様の……」
「うん、呼んだんだよ。ミレイナを助けたいって」
ルナティナは穏やかに笑い、髪の紅が静かに揺れる。
しかし、その安堵の瞬間を打ち砕くように、乾いた拍手の音が響いた。
「いやぁ……素晴らしいですね。さすがは月影の娘。感動しましたよ」
トリスが皮肉な笑みを浮かべながら、氷に覆われた腕を軽く持ち上げた。リオンの表情がわずかに険しくなる。
「……まだ動けるのですか」
「当然ですとも。氷の魔力、実に見事でしたが――私は光の魔法使い。光の本質は照らすこと、つまり、影すら焼き払えるのです」
眩い閃光が迸る。氷が砕け、光の破片が空を舞った。
ルナティナはミレイナを庇いながら、すぐに体制を取る。
「リオンさん、彼女を守って」
「了解しました」
リオンは即座にミレイナの周囲に氷壁を展開し、穏やかな声で告げた。
「ここから先は、あなたが照らす番ですよ
――ルナティナさん」
ルナティナの瞳が鋭く光る。
再び光が交錯した。眩しい閃光と、鋭い音。
ルナティナは一気に距離を詰め、剣先をトリスの喉元に突きつける。
「……目的は?」
低く、しかし明確な声。
一瞬の沈黙。
トリスは喉元に触れる冷気を感じながら、笑みを崩さない。
「……そんな顔も、するんですねぇ。ああ、綺麗だ」
「答えろ」
鋭い声。ルナティナの瞳が、まるで金属のように冷えていた。
風が止まる。トリスは動かないまま、ただ薄く笑った。
「目的?そんなもの、あなたが一番知っているでしょうに」
ルナティナの眉がわずかに動く。リオンが静かに声を落とす。
「……どういう意味ですか」
「ふふ……じゃあ、教えましょうか? 私の目的は――
世界はね、均衡で成り立ってるんですよ」
トリスはゆっくりと、剣先を押し返さぬまま言葉を続けた。
「光が強くなりすぎれば、闇が飢える。
だから私は――境界を見極めに来ただけです」
「……それが、ミレイナを利用する理由?」
ルナティナの声は冷たかった。
「利用?違いますよ。契約です。彼女は自分の意志で、願ったんですよ。“もう一度、会いたい”と」
ルナティナの瞳が揺れる。トリスはにやりと笑った。
彼の背後の鏡が、再び淡く光り出す。
「捕らえろ」
その瞬間、空気が凍りついた。
足音ひとつなく、影が動く。
黒いコートの裾がふわりと揺れ、トリスの背に刃が突きつけられた。
「お嬢様のご命令とあらば」
低く、確かな声。
いつの間にか背後を取っていたエドガーが、
静かに剣を構えていた。
トリスの笑みが引きつる。
「……はは、冗談きついなぁ。まさか二人がかりとは」
「冗談で済むなら、まだ幸せですね」
エドガーの声は冷ややかで、慈悲すら感じさせなかった。
「おっとぉ〜、さすがですねぇ。そりゃミレイナちゃんも信じますよぉ」
トリスの声に、ルナティナの瞳が鋭く光った。
「……その名前を、軽々しく言わないで」
「おや、怖い怖い。けどねぇ、感情っていいスパイスなんですよ。私の魔法、感情が強ければ強いほど――輝くんです」
「……ねぇ、ルナティナさん。あなた、本当に“人間”ですか?」
その瞬間、空気が凍った。
低く落ちた声が響くと同時に、風が巻いた。
リオンが反応するより早く、ルナティナの剣が閃く。
けれど、刃が触れる寸前、トリスの姿は光の粒となって掻き消えた。
「――また会いましょう、月影の主」
声だけが残響のように響く。
ルナティナは一歩踏み出し、剣を下ろす。
紅い光がゆっくりと消え、彼女の髪が元の色へ戻っていく。
「……逃がした」
ここまで読んでくださりありがとうございます。
まーた、どっかの設定使いました。
よし!今日、全話、修正しよう!(予定)トリス怪しいなー。これは、設定をまとめないとか?
ここまで読んでくださりありがとうございました。




