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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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問い

今回も、ルナティナ視点です。それで良ければどうぞ。




……あれから、どれだけの季節が過ぎたのだろう。

ミレイナの旅立った背中を、私はまだ、あの夕焼けの色と一緒に覚えている。


ルナティナは窓辺に座り、過去に救ったミレイナのことを思い返していた。その時、背後から穏やかな声が響く。


「……ルナティナさん、ミレイナという少女のことをご存知ですか?」


振り返ると、リオンが静かに立っていた。落ち着いた表情のまま、でも瞳には確かな優しさが宿っている。


ルナティナは少し驚き、目を丸くする。

「えっ?どうして知っているのですか、リオンさん……」


リオンはゆっくりと歩み寄り、肩の力を抜いて言った。

「彼女のことを知っているのは、君のおかげです。ですから、もしよろしければ、詳しくお話を聞かせてもらえますか?」


ルナティナは小さく息をつき、微笑む。

「ふふ……そっか。じゃあ、リオンさん、知りたいのですね? なら、教えますよ」


リオンはそのまま穏やかに頷く。

「はい……もし差し支えなければ。ですが、無理に話していただく必要はありません」


ルナティナは少し首をかしげ、興味津々の瞳でリオンを見た。

「無理なんてしませんよ、リオンさん。知りたいのは、あなたのためでしょ?だったら、聞いてくれて当然です!」


リオンは微笑むように、静かに答える。

「……そうですね。ありがとうございます、ルナティナさん」


ルナティナは少し考え込み、指先で窓枠を撫でながら言った。

「じゃあ、リオンさん、ミレイナに逢いたいのですか? 後、この屋敷からも去りますか?」


リオンは一瞬だけ目を伏せ、そして柔らかく笑った。

「……そうですね。逢いたいと思っています。そして、この屋敷は」


小さく間を置いて、穏やかに続けた。

「――冗談ですよ。そんな簡単に、ルナティナさんのそばを離れたりしません」


ルナティナは驚いたように目を見開き、すぐに頬を膨らませる。

「もうっ……びっくりさせないでください!本気(マジ)かと思いましたよ!」


リオンは苦笑を浮かべながら、穏やかに首を振る。

「申し訳ありません。少しだけ、あなたの反応が見たくなりまして」


「そういう冗談は心臓に悪いです!」


「気をつけますね……ですが、そうやって怒ってくれるのは、少し嬉しいですよ」


ルナティナは呆れたようにため息をつき、それでも口元に笑みを戻した。


「……ほんと、リオンさんって人は。なら、もう少しそばにいてくださいね」


リオンは静かに頷き、優しく微笑む。

「もちろんです。どれだけ季節が過ぎても、あなたの隣に」


二人の間に、沈黙が落ちる。

それはまるで、向日葵のようであたたかく、やさしく心を包んでいた。


――その時だった。


「……あれ?」


ルナティナが眉をひそめる。

部屋の中の空気が、微かにざらつく。光の粒子のようなものが漂い、次第にそれが形を持ち始めた。


「ルナティナさん?」

リオンが静かに問いかける。


「魔力の流れが、変わった。外から――誰かが干渉してる」


立ち上がり、窓の外へと視線を向ける。

「まさか」

ルナティナの声が低くなる。


次の瞬間、空気が弾けた。

光の粒が舞い、誰かの笑い声がその中に混じる。


「おやぁ?やはり気づかれましたか。さすがはお得意様」


胡散臭く、特徴的で耳に残る声。

現れたのは――トリス。

いつものように胡散臭い笑みを浮かべていた。


「……トリス」

ルナティナの声が低く響く。


「おやおや、その目。怒ってます?怖いですねぇ。私はただ、真実を見せに来ただけなのに」


リオンがそっと一歩前に出る。

「彼女に、何をしたのですか?」


トリスは口元に笑みを浮かべ、指先で空をなぞる。

光が揺らぎ、そこに小さな影が浮かんだ。


その姿を見た瞬間――ルナティナの心臓が跳ねた。


「……ミレイナ?」


彼女がいた。

瞳は虚ろで、光の糸がその手足を絡め取っている。


「……彼女をどうする気?」


「どうもこうも。借りてるだけですよ、心をね。少しばかり、世界の裏側を覗いてもらってるだけです」


トリスの声は穏やかで、けれど確かに冷たい。


ルナティナの瞳が鋭く光る。

「最低だね……あんた、暗闇に落ちたいの?」


トリスは笑った。

「暗闇?私は光の魔法使いですよ。むしろ

――あなたの影を照らして差し上げましょうか」


彼が手をかざす。

詠唱が静かに、しかし、ぞっとするほど美しく響いた。


「真実よ、虚ろを映せ。飾るは鏡の眼――」


ルナティナとリオンの足元に、見覚えのない光の紋章が広がった。


「リオンさん、離れて」

「いいえ。僕はあなたの傍にいます」


急いで詠唱を始まる。

「影よ、舞い散れ。光よ、刃となれ。

闇と月の狭間に咲く花よ──夜蓮」


リオンもつられて詠唱を始める。

「氷よ、静かに舞え。透き通る刃となり、

仲間を包め──氷冴」


――真実と幻が交わる、始まりの光がそこにあった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


たった二言、言います。誤字ありそー。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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