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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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不誠実に

今回は過去編の続きですよね。長めです。

それで良ければどうぞ。


月日が経ち、僕は18歳となった。

この世界が嫌になってくるほど結果は残酷だった。


情報屋はこう言う。

「お前が探してる娘の手がかりは、ローズ家にあるかもしれねぇ」

「情報はタダじゃねえ。代わりに、あの家の娘――ルナティナ・ローズの動向を探ってこい」


これがミレイナを見つける為の最善策だった。

ターゲットは昼に街を一人で歩くと、情報をもらった。

ところが、角を曲がった瞬間、ぶつかった。


――僕が動向を探る相手、ルナティナ・ローズだった。


「わわっ、ごめんなさい!」

「……ん?」


丁度良かった。

「すみません、大丈夫ですか?」

と言い、僕は手を差し伸べた。


「大丈夫です。ごめんなさい」


これが最初の接触。

ひとまずは収穫があったが、夜にも出会った。


「……君は、今日の?」

「そ、そうです!今日ぶつかって……」


ルナティナは後ろ手に隠していた包みを差し出した。


「これ……お詫びです。今日の分の」

「わざわざ……ありがとうございます。嬉しいです」


僕は包みを受け取りながら言った。自己紹介。


「……リオンさんは、いつもここに?」

「ええ。仕事が終わった後、よくこの通りを歩くんです。静かで、考え事ができるので」


「考え事……」

彼女は少し笑った。

「私もよく考え事をします。ちょっと抜け出して」


「抜け出して?」

探り出せるチャンスかもしれない。

「えっと、その……屋敷の人たちには内緒なんですけど」


彼女は後ろ髪を引かれるように振り向いた。

「また……会えますか?」


僕は微笑んで、

「ええ、もちろん。僕もしばらくこの街にいるので」

と答えた。


「……じゃあ、また」


その後、何度かルナティナさんと顔を合わせるたびに、僕は不思議な安心感を覚えた。

柔らかく、自然で、でもどこか芯のある

――そんな存在だった。


ある日の昼下がり、僕は情報屋の指示通りに取引き場の周囲をうろついていた。


街角で見かけた彼女に、思わず声をかけそうになった瞬間、角を曲がった。近くに居るらしい。

場所を変更してもらい、話す。


「……代金は?」

「品は確かだろう? こちらもリスクを背負っているんだ」


男が懐から取り出した小箱を、慎重に受け取る。

取引が終わった。もう関わることはない。契約だ。


これでもういいだろうと思っていたが、後ろに気配があった。

あれは、ルナティナさんだ。見られてしまった。

それならば…いっその事…


「…僕のこと、少し……怖くなりましたか?」


「そんなことない」

ポケットから銀色の小さな懐中時計を取り出した。

いざと言う時のために沢山ある。


「……いい子ですね」


廃屋に連れていこう。

屋根はかろうじて残っており、窓ガラスは割れている。

たが、月明かりが差し込んで幻想的な影を落としていた。


彼女と会話をしていると変なことを話し出した。

彼女は自覚なく、まっすぐに言う。


「リオンさん、ここの空気もいいです!部屋も広いですし、光も差して、ちょっとしたステージ感覚ですよ!」


意味がわからない。思わず少し笑ってしまった。

直ぐに僕は困惑した。


「何言ってるのですか」


その隙に、彼女の瞳が微かに潤み、震える声で呟いた。

「そんな顔、しないでください」


「…は?……え?」

「リオンさんの笑顔、好きなんです。

誰かを傷つけるための顔なんて、似合わない」


「……どうして、そんなことを言うんです」

「だって……リオンさんは、誰かを笑顔にできる人だから」


そんなこと言われたのは初めてだった。

「……やめてくださいよ」

「どうしてですか?」

「そんな風に言われたら……僕、壊れなくなる」


おもわず涙が出た。涙で視界がぼやける。震える声で返す。

涙が溢れて止まらない。情けない。呼吸が苦しい。

でも同時にどこかほっとしていて

――自分でも整理がつかない。



彼女の言葉が、胸の奥に突き刺さる。

もう、ずっとあなたのそばにいれたら救われるのだろう、

気づけば口にしていた。

「あなたのそばにいたい……」


彼女は躊躇せず、手を差し伸べた。

その何気ない言葉が、胸の奥に、小さな火を灯した。


「……本当に、あなたは変な人だ」

「よく言われます」


そう言って彼女は、ふっと微笑んだ。

その笑みが消える前に、まぶたがゆっくりと閉じていく。

穏やかな寝息が漏れた。眠った。

無理もない。今日の彼女は、ずっと無理をしていた。

白い髪が光に透けて、まるで壊れそうに綺麗だった。


「……どうして、あなたなんだろうな」


小さく呟いたそのとき、背後で空気が動いた。

風ではない。足音だ。



三つ。

音の主は、屋根の上にいた。

夜目に慣れた視界に、影が三つ、ゆらりと揺れる。

……来たか。


予想していたとはいえ、胸の奥がわずかにざわつく。

ルナティナさんの側の人間だろう。


一人は気配が静かすぎて、まるで雪のよう。

もう一人は、風を裂くような軽やかさを持つ。

そして最後の一人は、鉄のように重い存在感を放っていた。


屋根の上から降りてきた影が、砂を踏みしめる音を立てる。

その瞬間、僕はそっとルナティナさんを横にした。


「敵意はありません。彼女は、ただ眠っているだけです」


ゆっくりと両手を見える位置に上げる。

月明かりに照らされた三人が、静かに姿を現した。


一人目の男は、茶髪に細身の体。

冷静な瞳が僕を観察している――フィシリア。

情報屋が言っていた通り、理性的で、何より隙がない。


二人目は、赤い瞳を持つ青年。

柔らかい雰囲気の中に、何か決意のような光を宿していた。

あの眼差しには、彼女の兄と呼ばれる者の気配がある。

……ロディだろう。


そして三人目は――

一歩近づくだけで空気の密度が変わった。鋭いが、どこか哀しみを秘めた眼差し。その声が静かに響いた。


「……離れなさい」


「彼女に害を加えるつもりはありません」

「害を加えたかどうかは、我々が判断します」


重い声。

けれど怒りではなく、確かめようとする響きだった。

エドガー。これが、彼女の執事か。


僕は少し目を伏せた。

どう言い訳しても、僕の立場は誘拐者だ。

言葉など意味をなさない。


「……構いません。連れていくなら、どうぞ」


「……素直だな」

ロディが、わずかに目を細めた。

その目の奥には、警戒と、ほんの少しの憂いが混ざっている。


「情報屋の言葉通り。お前はあのときの男か」

「ええ。名前はリオンといいます。もしかして情報屋を枯らしましたか?」

「勿論。名前を隠さないのか」

「隠す理由も、もうありませんから」


フィシリアが近づき、手早く僕の手首を拘束した。冷たい金属の音が、夜に響く。彼は彼女を見て、こう呟いた。


「無事です」


エドガーがうなずき、ロディが小さく息を吐く。

僕はその光景を、どこか遠くから見ているような気持ちで眺めていた。


「……行こう。来い」

ロディの声に、僕は小さくうなずいた。


誰も言葉を発しないまま、夜の冷たい風が髪を撫でていった。月の下、廃屋の影が遠ざかっていく。


次の日。

ルナティナさんが目を覚まし、逢いに来てくれた。その時間は一瞬だった。

彼女が部屋を出た後、静寂に満ちた。


閉まった扉の向こうからは、まだ笑い声が聞こえていた。

――本当に、不思議な人だ。

怒られて、落ち込んで、それでも誰かの心を和ませる。



「お前の口から、真実を聞こうじゃないか」

その一言で空気が変わる。その言葉に、僕はわずかにうつむきながら答えた。


「……加護を、奪うことでした。月の加護は、あの国にとって脅威なんです。手に入れれば、どんな魔術も凌駕できる」


……違う。本当は、そんな大それた理由じゃない


――依頼だった。ミレイナの情報と引き換えに、

あの人に近づけと言われただけだ。


月の加護なんて言い訳だ。

自分の行動に意味を持たせるための言い訳。

彼女には加護など関係ない。


エドガーが静かに言う。

「つまり、彼女を利用するつもりだったと」


僕は、ただ小さくうなずいた。


足元で、フィシリアの魔法が淡く光った。

「心の奥に偽りがあれば、この光が反応します」


「構いません」


口ではそう言いながら、胸の奥では脈が跳ねた。

光は……静かに明滅して、そして消えた。


反応しなかった?一瞬、息が止まる。

僕は嘘をついたつもりだったのに――

心のどこかでは、あの人は人を惹きつける加護みたいなのがあって、そのぐらい国にも脅威なくらい。と思っていたのかもしれない。

……それが加護という言葉の、本当の意味だったのかもしれない。



その後、彼女は色々なことをやらかしてくれた。

泣かせて、笑わせて、全部を引っかき回した。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


過去の台詞を抜粋したら長くなりました。

まぁ、これは50話ら辺のリオン視点と言ってもいいですね。50話にも、リオン視点がありましたけど、わかりましたか?


後、まだ続きます。

後半実は面倒くさくなってきてます。誤字とかあるかもしれませんね。終わらせ方も雑です。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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