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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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風邪の日

今回はルナティナが風邪をひいた話です。

貴方が風邪をひいたら、この話を思い出して欲しいですね。


最悪だ。なんで私がこんな目に合わないとなんだ。

喉が焼けるように痛くて、動きたくない。話したくても話したくはない。でもさ、こんなんで休んじゃダメだよね。

精神は少しネガティブ気味。どっからうつったかな。


「……お嬢様、失礼いたします」


静かにドアが開いて、

銀のトレーを持ったエドガーが姿を現した。

湯気の立つポタージュスープと、蜂蜜を溶かしたハーブティー。香りだけでも喉が少し楽になりそう。


「喉に優しいものをご用意いたしました。少しでも召し上がってください」


ルナティナがゆっくり体を起こそうとすると、

すかさず背中に腕を回して支える。


「ご無理はなさらず」


その声はいつもの厳しさを潜め、

まるで壊れ物を扱うようにやさしい。


「……喉が痛いのですね。

昔、風邪をひかれたときもこうして差し上げました」


エドガーの目が少しだけ遠くを見た。

そのまま、レンゲをすくってスープをふう、と冷ます。


そして――

「……口を、開けてくださいませ」

と、まるで昔に戻ったような声で言った。


ルナティナが恥ずかしそうに目をそらすと、

「お嬢様、私の手を煩わせるのはお嫌ですか?」

と冗談めかして微笑む。


それが珍しくて、ルナティナも思わず小さく笑った。


「……ええ、その笑顔ですよ。お嬢様が笑ってくださるなら、私は何度でも看病します」


言葉は穏やかでも、

その手つきには長年仕えてきた者だけの迷いのなさと、どうしようもないほどの深い愛情がにじんでいた。


最後に、エドガーは額に手を当て、少しだけ眉を緩める。


「……ほんの少し下がりましたね。

おやすみなさいませ。夢の中でも、私はお傍におります」


灯りを落としたあとも、

彼はしばらくルナティナの寝息を聞いていた。

それが昔も今も変わらない――彼の「安心」だった。



これが一日目の出来事で、これが二日目の朝。

今度は――フィシリアが看病。


私の熱は少し下がったけど、まだ喉が痛くて寝たり起きたり。そんなときに部屋の扉をノックする音がした。


「……主人。起きてますか?」


低く静かな声が、ドア越しに響いた。

ルナティナが小さく咳をすると、すぐに扉が開く。


「……熱は、まだ下がってませんね」


冷たい手が額に触れる。

そのまま、温度を確かめるように少し長く触れていた。


「水、飲みましたか?喉、痛いでしょう」


そう言ってフィシリアは、

魔法でほんのり温めた水を差し出した。

その指先が、コップを支えるルナティナの手に重なる。


一瞬、視線が交わって――

フィシリアの表情がほんの少しだけやわらぐ。


「……僕がそばにいます。安心してください」


彼は椅子を引き寄せ、ベッドのすぐ横に座る。

距離は手を伸ばせば届くほど。ルナティナが寝返りを打つたびに、毛布がずれないよう静かに整えてくれる。


「……ほんとに、寝ないと怒りますよ。僕は主人の命令なら、従いますから」


口調はいつも通り冷静だけど、どこか優しい皮肉のような響き。最初と出会った時より変わって、成長したな。


そのままフィシリアは、


「……おやすみなさい。僕が見てますから」


その言葉は、魔法よりもあたたかくて、

熱に浮かされた意識の中でも、

ルナティナの心に深く染みこんでいった。



――三日目。

熱はほとんど下がったけれど、まだ喉が痛くて、体もだるい。

だけどもやわらかくノックする音がした。


「……入ってもいいか?」


いつもより低い声。

振り返ると、ドアの隙間からそっと顔をのぞかせたのはお兄ちゃんだった。

ルナティナが軽くうなずくと、

彼は入ってきて、手にしていたマグカップを机に置く。


「蜂蜜入りのミルク。喉、痛いんだろ?昔、ルナ、これ好きだったろ」


淡い湯気の向こうで、

ロディがいつもの優しい笑みを浮かべる。

あたたかな匂いと一緒に、どこか懐かしい空気が流れた。


ルナティナが手を伸ばそうとすると、

「無理すんな」

と、そっとその手を取って支える。


大きな掌の感触に、心臓がほんの少し跳ねた。


「子どもの頃さ、よく熱出して泣いてたじゃん。

そのたびにロディ兄様、隣にいてって言って……」


首を横に振る。


「言ってたぞ?」

ロディはおかしそうに笑い、

毛布を整えながらその額に軽く触れる。


「まだ少し熱いな。……おとなしく寝とけ」


「なんでそんなに優しいの」


「お前が、無茶ばっかするからだよ」

その声は穏やかで、どこか寂しげでもあった。


少しの沈黙のあと、

ロディはルナティナの髪に手を伸ばし、

指先で一房をすくって――

「ほんと、白いな」

と呟いた。


「小さい頃と同じ色。……でも今は、綺麗だな」


ルナティナが小さく息をのむ。

けれどロディはそのまま立ち上がり、


「寝とけ。夢でもうるさいくらい構ってやるよ」

と、照れ隠しのように背を向けた。


扉が閉まる直前、

「……おやすみ、ルナティナ。」

その声だけがやわらかく残った。



――四日目、少し熱も下がって、声も戻りはじめた頃。痛みは少しあるけど、だいぶマシなった方。喋れるようになったかも?


部屋に来たのは、静かな足音とともにリオンだった。


「……入ってもいいですか?」


扉の向こうから、柔らかい声。

ルナティナが「どうぞ」と答えると、

リオンがトレイを片手に静かに入ってきた。

その上には、湯気の立つ紅茶と、焼き色のついたビスケット。


「もうだいぶ元気そうですね。安心しました」


「喉は少ししか痛くないし……。それ、手作りですか?」


「ええ。少しでも食べやすいようにと思って」


彼は微笑みながら、そっと紅茶を差し出す。

受け取ったルナティナの指が彼の指先に触れた瞬間、

微かに、静電気のような熱が走った。


「……まだ少し熱がありますね。」

そう言って、リオンは距離を詰め、

ルナティナの額に手を当てた。


指先が静かに髪をかき分ける。近い。

息が触れるほどの距離で、彼の穏やかな瞳が映り込む。


「リ、リオン、近い……」


「そうですか?」


まるでわざと気づかないふりをしながら、

彼はほんの少しだけ顔を傾けた。


「僕の方が、うつされてしまうかもしれませんね。」


「……なら離れた方がいい」


「うつるなら――仕方ありません。優しい風邪でしょうから」


ふっと笑うその表情が、

部屋の明かりよりも柔らかくて、ルナティナの胸が少し鳴った。


「ほんと……もう優しすぎ」


「そうでしょうか?

ただ、あなたがまた笑ってくれたら、それで十分ですよ」


紅茶の香りと共に、

ほんのりとした甘さが、部屋に満ちていた。



――五日目

多分治った?痛くはないけど、まだ寝てたーい、

こんなテンションなら大丈夫だね。

まだ一応寝とくけどさ。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


今日、学校休みました。完全にイがつくやつにかかったかも知れません。熱計ったら三十九度ありました。

数日間こりゃあ家ですね。

ですけど、小説書きたいので体調不良でも書きます。

早くこの話みたいに治らないかな。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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