風邪の日
今回はルナティナが風邪をひいた話です。
貴方が風邪をひいたら、この話を思い出して欲しいですね。
最悪だ。なんで私がこんな目に合わないとなんだ。
喉が焼けるように痛くて、動きたくない。話したくても話したくはない。でもさ、こんなんで休んじゃダメだよね。
精神は少しネガティブ気味。どっからうつったかな。
「……お嬢様、失礼いたします」
静かにドアが開いて、
銀のトレーを持ったエドガーが姿を現した。
湯気の立つポタージュスープと、蜂蜜を溶かしたハーブティー。香りだけでも喉が少し楽になりそう。
「喉に優しいものをご用意いたしました。少しでも召し上がってください」
ルナティナがゆっくり体を起こそうとすると、
すかさず背中に腕を回して支える。
「ご無理はなさらず」
その声はいつもの厳しさを潜め、
まるで壊れ物を扱うようにやさしい。
「……喉が痛いのですね。
昔、風邪をひかれたときもこうして差し上げました」
エドガーの目が少しだけ遠くを見た。
そのまま、レンゲをすくってスープをふう、と冷ます。
そして――
「……口を、開けてくださいませ」
と、まるで昔に戻ったような声で言った。
ルナティナが恥ずかしそうに目をそらすと、
「お嬢様、私の手を煩わせるのはお嫌ですか?」
と冗談めかして微笑む。
それが珍しくて、ルナティナも思わず小さく笑った。
「……ええ、その笑顔ですよ。お嬢様が笑ってくださるなら、私は何度でも看病します」
言葉は穏やかでも、
その手つきには長年仕えてきた者だけの迷いのなさと、どうしようもないほどの深い愛情がにじんでいた。
最後に、エドガーは額に手を当て、少しだけ眉を緩める。
「……ほんの少し下がりましたね。
おやすみなさいませ。夢の中でも、私はお傍におります」
灯りを落としたあとも、
彼はしばらくルナティナの寝息を聞いていた。
それが昔も今も変わらない――彼の「安心」だった。
これが一日目の出来事で、これが二日目の朝。
今度は――フィシリアが看病。
私の熱は少し下がったけど、まだ喉が痛くて寝たり起きたり。そんなときに部屋の扉をノックする音がした。
「……主人。起きてますか?」
低く静かな声が、ドア越しに響いた。
ルナティナが小さく咳をすると、すぐに扉が開く。
「……熱は、まだ下がってませんね」
冷たい手が額に触れる。
そのまま、温度を確かめるように少し長く触れていた。
「水、飲みましたか?喉、痛いでしょう」
そう言ってフィシリアは、
魔法でほんのり温めた水を差し出した。
その指先が、コップを支えるルナティナの手に重なる。
一瞬、視線が交わって――
フィシリアの表情がほんの少しだけやわらぐ。
「……僕がそばにいます。安心してください」
彼は椅子を引き寄せ、ベッドのすぐ横に座る。
距離は手を伸ばせば届くほど。ルナティナが寝返りを打つたびに、毛布がずれないよう静かに整えてくれる。
「……ほんとに、寝ないと怒りますよ。僕は主人の命令なら、従いますから」
口調はいつも通り冷静だけど、どこか優しい皮肉のような響き。最初と出会った時より変わって、成長したな。
そのままフィシリアは、
「……おやすみなさい。僕が見てますから」
その言葉は、魔法よりもあたたかくて、
熱に浮かされた意識の中でも、
ルナティナの心に深く染みこんでいった。
――三日目。
熱はほとんど下がったけれど、まだ喉が痛くて、体もだるい。
だけどもやわらかくノックする音がした。
「……入ってもいいか?」
いつもより低い声。
振り返ると、ドアの隙間からそっと顔をのぞかせたのはお兄ちゃんだった。
ルナティナが軽くうなずくと、
彼は入ってきて、手にしていたマグカップを机に置く。
「蜂蜜入りのミルク。喉、痛いんだろ?昔、ルナ、これ好きだったろ」
淡い湯気の向こうで、
ロディがいつもの優しい笑みを浮かべる。
あたたかな匂いと一緒に、どこか懐かしい空気が流れた。
ルナティナが手を伸ばそうとすると、
「無理すんな」
と、そっとその手を取って支える。
大きな掌の感触に、心臓がほんの少し跳ねた。
「子どもの頃さ、よく熱出して泣いてたじゃん。
そのたびにロディ兄様、隣にいてって言って……」
首を横に振る。
「言ってたぞ?」
ロディはおかしそうに笑い、
毛布を整えながらその額に軽く触れる。
「まだ少し熱いな。……おとなしく寝とけ」
「なんでそんなに優しいの」
「お前が、無茶ばっかするからだよ」
その声は穏やかで、どこか寂しげでもあった。
少しの沈黙のあと、
ロディはルナティナの髪に手を伸ばし、
指先で一房をすくって――
「ほんと、白いな」
と呟いた。
「小さい頃と同じ色。……でも今は、綺麗だな」
ルナティナが小さく息をのむ。
けれどロディはそのまま立ち上がり、
「寝とけ。夢でもうるさいくらい構ってやるよ」
と、照れ隠しのように背を向けた。
扉が閉まる直前、
「……おやすみ、ルナティナ。」
その声だけがやわらかく残った。
――四日目、少し熱も下がって、声も戻りはじめた頃。痛みは少しあるけど、だいぶマシなった方。喋れるようになったかも?
部屋に来たのは、静かな足音とともにリオンだった。
「……入ってもいいですか?」
扉の向こうから、柔らかい声。
ルナティナが「どうぞ」と答えると、
リオンがトレイを片手に静かに入ってきた。
その上には、湯気の立つ紅茶と、焼き色のついたビスケット。
「もうだいぶ元気そうですね。安心しました」
「喉は少ししか痛くないし……。それ、手作りですか?」
「ええ。少しでも食べやすいようにと思って」
彼は微笑みながら、そっと紅茶を差し出す。
受け取ったルナティナの指が彼の指先に触れた瞬間、
微かに、静電気のような熱が走った。
「……まだ少し熱がありますね。」
そう言って、リオンは距離を詰め、
ルナティナの額に手を当てた。
指先が静かに髪をかき分ける。近い。
息が触れるほどの距離で、彼の穏やかな瞳が映り込む。
「リ、リオン、近い……」
「そうですか?」
まるでわざと気づかないふりをしながら、
彼はほんの少しだけ顔を傾けた。
「僕の方が、うつされてしまうかもしれませんね。」
「……なら離れた方がいい」
「うつるなら――仕方ありません。優しい風邪でしょうから」
ふっと笑うその表情が、
部屋の明かりよりも柔らかくて、ルナティナの胸が少し鳴った。
「ほんと……もう優しすぎ」
「そうでしょうか?
ただ、あなたがまた笑ってくれたら、それで十分ですよ」
紅茶の香りと共に、
ほんのりとした甘さが、部屋に満ちていた。
――五日目
多分治った?痛くはないけど、まだ寝てたーい、
こんなテンションなら大丈夫だね。
まだ一応寝とくけどさ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今日、学校休みました。完全にイがつくやつにかかったかも知れません。熱計ったら三十九度ありました。
数日間こりゃあ家ですね。
ですけど、小説書きたいので体調不良でも書きます。
早くこの話みたいに治らないかな。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




