月が明ける頃に
今回はルナティナ多めかも知れません。
それで良ければどうぞ。
ルナティナはふと考えた。
リオンさんがこの屋敷に来ても、何も出来ずに、ずっと地下室にいるのことに。しかし、ハロウィンの時はこれでいけたから、常に解放しても良いのではないかと。
ルナティナは思いだったらすぐ行動に移した。
夜更け。
屋敷の灯りがすべて消えた頃、ルナティナは足音を忍ばせ、薄暗い廊下を進む。場所は分かってる。
廊下の隅には、夜番のフィシリアが控えているはずだが、
今夜は不在。――今しかない。
「リオンさん」
地下室の扉の前で、彼女は小さく呼んだ。
返事はない。代わりに、静寂だけが返ってくる。
ルナティナは懐から小箱を取り出す。
中には、白銀の腕輪――従属の腕輪。
それは、淡く、柔らかい光を反射していた。
「この制限を強めたからこれで大丈夫なはず」
自分に言い聞かせるように呟き、
彼女は扉の封印に手をかざした。
淡い魔法陣が回転し、カチリと音を立てて鎖が外れる。
扉の奥から、ゆっくりとした足音。
現れたのは、かつての危険と呼ばれた青年、リオンだった。
「……ルナティナさん?」
静かな声。けれど、目の奥には驚きと、どこか戸惑いがある。
「出してあげる。……今夜だけでも」
「許可は?」
「ない。でも、誰かが見てなくちゃ、貴方はずっと閉じ込められたままになる。それは嫌だ」
ルナティナの声は小さい。けれど確かな決意があった。
リオンは少しだけ目を細め、微かに笑った。
「あなたは、本当に、優しいですね」
「優しくないよ。自己満足だし」
そう言いながら、ルナティナは彼の手首に腕輪をはめた。
魔法陣が光を帯び、拘束の紋が静かに刻まれる。
「これで、屋敷の外には出られない。
でも、屋敷の近くなら――自由に歩いていいよ」
「……いいのですか?」
「うん。私が見てるから、だいじょうぶ」
その瞬間、リオンの胸の奥で、何かがかすかに軋んだ。
監視という言葉より、信頼が先に来たその声に。
彼は小さく頭を下げる。
「ありがとう、ルナティナさん」
そして二人は静かに階段を上った。
地上に戻ったとき、廊下の窓から月光が差し込み、
ルナティナの髪が淡く揺れた。
――この瞬間から、屋敷の空気が、少しだけ変わる。
まだ、それに気づく者はいない。
翌朝
朝の食堂。
いつも通り、僕がティーポットを持ち、エドガーさんが新聞を広げ、ロディさんがパンをつまんでいた。
だが――扉が開いた瞬間、その手が止まった。
「……おはようございます」
穏やかに現れたのは、リオンさん。
「――――――は?」
一番最初に声を出したのはロディさんだった。
「ルナティナ、お前、何やってんだよ!?」
「リオン様を……出したのですか?」
エドガーの声が硬い。
「うん、そうだけど?ちゃんと制限はかけてるし、危険なことはしないよ?」
フィシリアは静かにルナティナを見つめ、そしてリオンへ視線を移した。
「本当に、あなた自身で制御できますか?」
「はい。もう、あの頃のようにはなりません。ルナティナさんが抑えてくれていますから」
一瞬、空気が凍る。不安しかなかった。
しかし、主人が真っすぐに言った。
「私は、信じてるの!」
少しの沈黙のあと、エドガーがため息をつき、新聞をたたんだ。
「分かりました。ですが、目は離しません。いいですね、お嬢様」
「うん」
ロディはそっと呟いた。
「……ったく。面倒な妹だよ、お前は」
でも、その口元は少しだけ緩んでいた。
次の朝、誰も気づかなかった。こんなことが起こるなど。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
金曜日だー!
今週三連休です。頑張ります。
また、フィシリアが…。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




