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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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月が明ける頃に

今回はルナティナ多めかも知れません。

それで良ければどうぞ。


ルナティナはふと考えた。

リオンさんがこの屋敷に来ても、何も出来ずに、ずっと地下室にいるのことに。しかし、ハロウィンの時はこれでいけたから、常に解放しても良いのではないかと。

ルナティナは思いだったらすぐ行動に移した。


夜更け。

屋敷の灯りがすべて消えた頃、ルナティナは足音を忍ばせ、薄暗い廊下を進む。場所は分かってる。


廊下の隅には、夜番のフィシリアが控えているはずだが、

今夜は不在。――今しかない。


「リオンさん」


地下室の扉の前で、彼女は小さく呼んだ。

返事はない。代わりに、静寂だけが返ってくる。


ルナティナは懐から小箱を取り出す。

中には、白銀の腕輪――従属の腕輪。

それは、淡く、柔らかい光を反射していた。


「この制限を強めたからこれで大丈夫なはず」

自分に言い聞かせるように呟き、

彼女は扉の封印に手をかざした。


淡い魔法陣が回転し、カチリと音を立てて鎖が外れる。

扉の奥から、ゆっくりとした足音。

現れたのは、かつての危険と呼ばれた青年、リオンだった。


「……ルナティナさん?」

静かな声。けれど、目の奥には驚きと、どこか戸惑いがある。


「出してあげる。……今夜だけでも」

「許可は?」

「ない。でも、誰かが見てなくちゃ、貴方はずっと閉じ込められたままになる。それは嫌だ」


ルナティナの声は小さい。けれど確かな決意があった。

リオンは少しだけ目を細め、微かに笑った。


「あなたは、本当に、優しいですね」

「優しくないよ。自己満足だし」


そう言いながら、ルナティナは彼の手首に腕輪をはめた。

魔法陣が光を帯び、拘束の紋が静かに刻まれる。


「これで、屋敷の外には出られない。

でも、屋敷の近くなら――自由に歩いていいよ」

「……いいのですか?」

「うん。私が見てるから、だいじょうぶ」


その瞬間、リオンの胸の奥で、何かがかすかに軋んだ。

監視という言葉より、信頼が先に来たその声に。


彼は小さく頭を下げる。

「ありがとう、ルナティナさん」


そして二人は静かに階段を上った。

地上に戻ったとき、廊下の窓から月光が差し込み、

ルナティナの髪が淡く揺れた。


――この瞬間から、屋敷の空気が、少しだけ変わる。

まだ、それに気づく者はいない。


翌朝

朝の食堂。

いつも通り、僕がティーポットを持ち、エドガーさんが新聞を広げ、ロディさんがパンをつまんでいた。

だが――扉が開いた瞬間、その手が止まった。


「……おはようございます」

穏やかに現れたのは、リオンさん。


「――――――は?」

一番最初に声を出したのはロディさんだった。


「ルナティナ、お前、何やってんだよ!?」

「リオン様を……出したのですか?」

エドガーの声が硬い。

「うん、そうだけど?ちゃんと制限はかけてるし、危険なことはしないよ?」


フィシリアは静かにルナティナを見つめ、そしてリオンへ視線を移した。


「本当に、あなた自身で制御できますか?」

「はい。もう、あの頃のようにはなりません。ルナティナさんが抑えてくれていますから」


一瞬、空気が凍る。不安しかなかった。

しかし、主人が真っすぐに言った。

「私は、信じてるの!」


少しの沈黙のあと、エドガーがため息をつき、新聞をたたんだ。

「分かりました。ですが、目は離しません。いいですね、お嬢様」

「うん」


ロディはそっと呟いた。

「……ったく。面倒な妹だよ、お前は」

でも、その口元は少しだけ緩んでいた。


次の朝、誰も気づかなかった。こんなことが起こるなど。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


金曜日だー!

今週三連休です。頑張ります。

また、フィシリアが…。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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