酷い
今回の話は不安しかないです。ロディ多めです。
それで良ければどうぞ!
「全く、屋敷内限定と自分で言った張本人が、真っ先に出ていくなんて」
静まり返った応接室。
中央には――椅子に座らされたルナティナ。
その前には、腕を組んだエドガー、無言で紅茶を注ぐフィシリア、肩を震わせて笑いを堪えるロディ、そして困ったように微笑むリオン。
「ごめん……猫がいたんだもん」
「言い訳が成立すると思っているのですか?」
エドガーの冷静な声。
「まぁまぁ、せっかく捕まったんだ。約束、忘れてないだろ?」
ロディがニヤリと笑う。
「捕まえたら何でもしてあげる……だったな?」
「……うん」
「よし。罰ゲームは全員分だ」
「えぇ!? 全員!?そっか、不平等になっちゃう」
「当然です」
フィシリアの声が冷ややかに響く。
ルナティナは内心で小さく悲鳴を上げながらも、観念して笑う。
「はぁい……誰から?」
「まずは僕からです」
フィシリアは静かに立ち上がり、机の上の紙束をトンと置いた。
「報告書の清書、三日分。筆跡の整え方も完璧に、です」
「……ハロウィンなのに仕事罰!?完璧に?」
「罰ゲームですから」
「マジかー」
小さく唇を尖らせるルナティナに、フィシリアは紅茶を一口含みながら微笑んだ。
「ですが、可愛げは評価します」
「なにその採点方式!」
「次は私ですね」
エドガーが優雅に一礼しながら近づく。
「お嬢様。今日の夕食後、紅茶の作法をもう一度学んでいただきます」
「またぁ?!」
「またという言葉が出る時点で、まだ身についていない証拠です」
「うぅ……」
ロディが肩を揺らして笑う。
「こりゃ長くなるぞ」
エドガーは淡く微笑み、さらに付け加えた。
「そして、おかわりのお願いを十回練習してもらいます。丁寧語で」
「そんな罰ゲームある!?」
「あります」
「んじゃ、次は俺の番だな」
ロディは椅子に腰かけ、にやりと笑う。
「お前さ、俺のことロディって呼ぶとき、絶対に照れてるだろ」
「全然、それで良いの?」
「嘘つけ。じゃあ、今日の罰は……ロディって100回言う」
「百???聞き間違い?
ムリムリムリ!百回?多いよ! 」
「捕まえたら何でもって言ったのはお前だぞ?」
「うわ……」
フィシリアが小さく咳払いし、エドガーは目を伏せて笑いを堪えた。
「最後は僕ですね」
リオンは穏やかに微笑みながら、少しだけ前に出た。
「僕の罰ゲームは――これです」
そう言って、懐から小さな仮面を取り出す。
それは白と金で飾られたハロウィン用の仮面だった。
「僕と一緒に、みんなのところを回ってください。お菓子を配る係、二人で」
「え、それ……罰っていうより優しい」
「罰です」
ルナティナははっとして顔を上げた。
リオンは微笑んでいるが、その瞳は少しだけ寂しそうだ。
「……わかりました。ちゃんと、一緒に行きます」
「はい。約束ですよ」
彼が差し出した仮面を受け取ると、ルナティナは小さく笑った。
数分後。
屋敷の中を、笑い声が満たしていた。
ルナティナは魔法で光るお菓子を配り、リオンはその隣で穏やかに微笑む。
遠くのテーブルではロディがマフィンを食べ、エドガーは頭を抱え、フィシリアはそれでも笑みを浮かべていた。
「来年もまた、こうやって過ごそう」
(来年あるか分からないけどな!その頃には完結してるかもだけど。私が満足するまで続ける!)
ルナティナの言葉に、四人はそれぞれ違う形で頷いた。
その笑顔を見て、リオンはふと呟く。
「君は向日葵みたいだ」
「え、何か言った?」
聞こえないって!もっとはっきり言ってよー。
「いいえ。――お菓子、こぼれてますよ」
「うっそ!?」
お菓子を配り終えた後、屋敷は再び穏やかな静けさを取り戻していた。フィシリアとエドガーは片付けへ、リオンは厨房の方へと向かう。
応接室には、ルナティナとロディだけが残った。
窓の外では、ランタンの灯りが金色に憧れている。
壁の影がふわりと動き、遠くではまだフィシリアたちの笑い声が微かに響いていた。
ここだけ、時間が止まったみたいに静かだった。
テーブルに残された紅茶の香り。
妹――ルナティナは、まだどこか浮かれた様子で笑っている。
その姿を見ながら、ロディはふっと息を吐いた。
「……よく頑張ったな、お前」
反射的に出た言葉だった。
別に特別な意味を込めたつもりはない。
けれど、ルナティナがこちらを見上げて、「え?」と首を傾げた瞬間、胸の奥が少し温かくなる。
ああ、本当に成長したな――と、そんな思いがよぎった。
かつて泣き虫で、よく俺の後をついて回っていた少女が、
今では屋敷をまとめ、誰よりも眩しい笑顔でみんなを動かしている。
「なんでもない。最後にもう一つ、罰をやってもいいか?」
「え、まだあるの?」
ルナティナは少し警戒したように目を細める。
ロディは笑った。
その反応が、なんだか懐かしい。
昔、悪戯を仕掛ける前も、彼女はよくこんな顔をしていた。
「すぐ終わるさ」
言いながら、ロディはそっとルナティナの前に立つ。
彼女の目が大きく見開かれ、わずかに身じろぎする。
「……動くなよ」
「え、な――」
その問いに、ロディは答えなかった。
代わりに、手を伸ばす。少しだけ身を屈めて、
柔らかな指先が彼女の髪を撫で、そっと額へと――。
一瞬、彼女の息が止まったのが分かった。
静かな空気。ロウソクの火がぱちりと弾ける音だけが響く。
ロディはわずかに目を伏せてから、口角を上げた。
「……罰ゲーム」
「な、なに今のっ!?なっ……!? なにそれ!!」
一瞬で時間が止まる。ルナティナの瞳がぱちぱちと瞬き、顔がみるみる赤くなる。
「お前が何でもしていいって言ったんだろ」
「そ、それはそうだけど!反則!」
「反則上等」
ロディは笑いを堪えきれず、肩を揺らした。
彼女の慌てぶりに、ロディは思わず吹き出した。
そして、妹の頭を軽くぽんと叩いた。
「兄としての罰だよ。――心配かけさせた罰」
「そ、そ、そんな罰ある!?」
「ある。今日だけ特別にな」
……ほんとは、罰なんかじゃない。
ただ、あの時の泣き虫な妹が、こんなにも立派になったことが嬉しかっただけだ。
ロディは口元を緩め、軽く彼女の頭を撫でた。
「全く、無茶ばっかりする。いいハロウィンだった」
ルナティナは顔が赤くなったまま、
「いいハロウィンじゃなくなった!ロディお兄ちゃんは頭がおかしい!酷い」
と強がるように言った。
「はい、今ので一回目。後99回な」
「数えなくてよろしい!」
ロディはそれに小さく笑って、窓の外を見た。
月がゆらめく光を放ち、まるで彼女の成長を祝福しているようだった。
屋敷の灯りはもうほとんど落ちていた。
静まり返った廊下を、ロディはゆっくり歩く。
窓の外には、遠くでまだ揺れているランタンの灯り。
さっきまで一緒にいたルナティナの姿を思い出す。
頬を染めて、何も言えずにいたあの表情。
あんな顔、昔は見たことなかった。
「……まったく、あいつももう……」
思わず笑って、けれどそのままため息に変わる。
自分の胸が少しだけ痛む。……心配だな
彼女の周りには、エドガーもフィシリアもリオンもいる。
それでも、どうしても離れたくないと思ってしまう。
窓から夜空を見上げる。
月が静かに光を落とし、風が髪を揺らした。
「――ずっと、ここにいるか」
誰に聞かせるでもなく呟いて、
ロディはゆっくりと背を向けた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
ロディがルナティナに何をしたのか、
ご想像にお任せします。直接書くと、ヤバそうだったので大部分は伏せました。これ大丈夫かな?
結構、話貯めてます。近々出るかな?
ハロウィン当日に投稿した方がいいのは分かりますが、
生憎、私は待ちきれなかったので、今日投稿しました。
後、数字が漢字だったりするのは、読みやすいかなと思ったからです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




