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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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酷い

今回の話は不安しかないです。ロディ多めです。

それで良ければどうぞ!


「全く、屋敷内限定と自分で言った張本人が、真っ先に出ていくなんて」


静まり返った応接室。

中央には――椅子に座らされたルナティナ。

その前には、腕を組んだエドガー、無言で紅茶を注ぐフィシリア、肩を震わせて笑いを堪えるロディ、そして困ったように微笑むリオン。


「ごめん……猫がいたんだもん」

「言い訳が成立すると思っているのですか?」

エドガーの冷静な声。


「まぁまぁ、せっかく捕まったんだ。約束、忘れてないだろ?」

ロディがニヤリと笑う。

「捕まえたら何でもしてあげる……だったな?」

「……うん」

「よし。罰ゲームは全員分だ」


「えぇ!? 全員!?そっか、不平等になっちゃう」

「当然です」

フィシリアの声が冷ややかに響く。


ルナティナは内心で小さく悲鳴を上げながらも、観念して笑う。

「はぁい……誰から?」


「まずは僕からです」

フィシリアは静かに立ち上がり、机の上の紙束をトンと置いた。

「報告書の清書、三日分。筆跡の整え方も完璧に、です」


「……ハロウィンなのに仕事罰!?完璧に?」

「罰ゲームですから」

「マジかー」


小さく唇を尖らせるルナティナに、フィシリアは紅茶を一口含みながら微笑んだ。

「ですが、可愛げは評価します」

「なにその採点方式!」


「次は私ですね」

エドガーが優雅に一礼しながら近づく。


「お嬢様。今日の夕食後、紅茶の作法をもう一度学んでいただきます」

「またぁ?!」

「またという言葉が出る時点で、まだ身についていない証拠です」

「うぅ……」


ロディが肩を揺らして笑う。

「こりゃ長くなるぞ」

エドガーは淡く微笑み、さらに付け加えた。

「そして、おかわりのお願いを十回練習してもらいます。丁寧語で」

「そんな罰ゲームある!?」

「あります」


「んじゃ、次は俺の番だな」

ロディは椅子に腰かけ、にやりと笑う。


「お前さ、俺のことロディって呼ぶとき、絶対に照れてるだろ」

「全然、それで良いの?」

「嘘つけ。じゃあ、今日の罰は……ロディって100回言う」

「百???聞き間違い?

ムリムリムリ!百回?多いよ! 」

「捕まえたら何でもって言ったのはお前だぞ?」

「うわ……」


フィシリアが小さく咳払いし、エドガーは目を伏せて笑いを堪えた。


「最後は僕ですね」

リオンは穏やかに微笑みながら、少しだけ前に出た。


「僕の罰ゲームは――これです」


そう言って、懐から小さな仮面を取り出す。

それは白と金で飾られたハロウィン用の仮面だった。


「僕と一緒に、みんなのところを回ってください。お菓子を配る係、二人で」

「え、それ……罰っていうより優しい」

「罰です」


ルナティナははっとして顔を上げた。

リオンは微笑んでいるが、その瞳は少しだけ寂しそうだ。


「……わかりました。ちゃんと、一緒に行きます」

「はい。約束ですよ」


彼が差し出した仮面を受け取ると、ルナティナは小さく笑った。


数分後。

屋敷の中を、笑い声が満たしていた。

ルナティナは魔法で光るお菓子を配り、リオンはその隣で穏やかに微笑む。

遠くのテーブルではロディがマフィンを食べ、エドガーは頭を抱え、フィシリアはそれでも笑みを浮かべていた。



「来年もまた、こうやって過ごそう」


(来年あるか分からないけどな!その頃には完結してるかもだけど。私が満足するまで続ける!)


ルナティナの言葉に、四人はそれぞれ違う形で頷いた。

その笑顔を見て、リオンはふと呟く。


「君は向日葵みたいだ」


「え、何か言った?」

聞こえないって!もっとはっきり言ってよー。

「いいえ。――お菓子、こぼれてますよ」

「うっそ!?」


お菓子を配り終えた後、屋敷は再び穏やかな静けさを取り戻していた。フィシリアとエドガーは片付けへ、リオンは厨房の方へと向かう。



応接室には、ルナティナとロディだけが残った。

窓の外では、ランタンの灯りが金色に憧れている。


壁の影がふわりと動き、遠くではまだフィシリアたちの笑い声が微かに響いていた。


ここだけ、時間が止まったみたいに静かだった。

テーブルに残された紅茶の香り。

妹――ルナティナは、まだどこか浮かれた様子で笑っている。

その姿を見ながら、ロディはふっと息を吐いた。


「……よく頑張ったな、お前」


反射的に出た言葉だった。

別に特別な意味を込めたつもりはない。

けれど、ルナティナがこちらを見上げて、「え?」と首を傾げた瞬間、胸の奥が少し温かくなる。


ああ、本当に成長したな――と、そんな思いがよぎった。


かつて泣き虫で、よく俺の後をついて回っていた少女が、

今では屋敷をまとめ、誰よりも眩しい笑顔でみんなを動かしている。


「なんでもない。最後にもう一つ、罰をやってもいいか?」


「え、まだあるの?」

ルナティナは少し警戒したように目を細める。


ロディは笑った。

その反応が、なんだか懐かしい。

昔、悪戯を仕掛ける前も、彼女はよくこんな顔をしていた。


「すぐ終わるさ」


言いながら、ロディはそっとルナティナの前に立つ。

彼女の目が大きく見開かれ、わずかに身じろぎする。


「……動くなよ」

「え、な――」


その問いに、ロディは答えなかった。

代わりに、手を伸ばす。少しだけ身を屈めて、

柔らかな指先が彼女の髪を撫で、そっと額へと――。


一瞬、彼女の息が止まったのが分かった。

静かな空気。ロウソクの火がぱちりと弾ける音だけが響く。


ロディはわずかに目を伏せてから、口角を上げた。

「……罰ゲーム」


「な、なに今のっ!?なっ……!? なにそれ!!」

一瞬で時間が止まる。ルナティナの瞳がぱちぱちと瞬き、顔がみるみる赤くなる。


「お前が何でもしていいって言ったんだろ」

「そ、それはそうだけど!反則!」


「反則上等」

ロディは笑いを堪えきれず、肩を揺らした。

彼女の慌てぶりに、ロディは思わず吹き出した。


そして、妹の頭を軽くぽんと叩いた。

「兄としての罰だよ。――心配かけさせた罰」

「そ、そ、そんな罰ある!?」

「ある。今日だけ特別にな」


……ほんとは、罰なんかじゃない。

ただ、あの時の泣き虫な妹が、こんなにも立派になったことが嬉しかっただけだ。


ロディは口元を緩め、軽く彼女の頭を撫でた。

「全く、無茶ばっかりする。いいハロウィンだった」


ルナティナは顔が赤くなったまま、

「いいハロウィンじゃなくなった!ロディお兄ちゃんは頭がおかしい!酷い」

と強がるように言った。

「はい、今ので一回目。後99回な」

「数えなくてよろしい!」


ロディはそれに小さく笑って、窓の外を見た。

月がゆらめく光を放ち、まるで彼女の成長を祝福しているようだった。


屋敷の灯りはもうほとんど落ちていた。

静まり返った廊下を、ロディはゆっくり歩く。

窓の外には、遠くでまだ揺れているランタンの灯り。


さっきまで一緒にいたルナティナの姿を思い出す。

頬を染めて、何も言えずにいたあの表情。

あんな顔、昔は見たことなかった。


「……まったく、あいつももう……」


思わず笑って、けれどそのままため息に変わる。

自分の胸が少しだけ痛む。……心配だな


彼女の周りには、エドガーもフィシリアもリオンもいる。

それでも、どうしても離れたくないと思ってしまう。


窓から夜空を見上げる。

月が静かに光を落とし、風が髪を揺らした。


「――ずっと、ここにいるか」


誰に聞かせるでもなく呟いて、

ロディはゆっくりと背を向けた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


ロディがルナティナに何をしたのか、

ご想像にお任せします。直接書くと、ヤバそうだったので大部分は伏せました。これ大丈夫かな?

結構、話貯めてます。近々出るかな?

ハロウィン当日に投稿した方がいいのは分かりますが、

生憎、私は待ちきれなかったので、今日投稿しました。

後、数字が漢字だったりするのは、読みやすいかなと思ったからです。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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