表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
48/84

一目

今回の内容は秘密で。ちょっと不安です。長いです。


昼に街を一人で歩いていたルナティナ。

「ふぅ……今日も平和だな」


ところが、角を曲がった瞬間、ぶつかった。

「わわっ、ごめんなさい!」


相手は見知らぬ青年。ルナティナは思わず目を見開いた。

「……ん?」


一瞬で心がざわつく。なんだろう、この感覚――

……か、可愛い顔……!


ルナティナは自分でも驚くほど、心臓が跳ねるのを感じた。一目惚れ……?


「すみません、大丈夫ですか?」

と言い、彼は手を差し伸べた。


「大丈夫です。ごめんなさい」

ルナティナは表情に出さないが、ドキドキしていた。


その後屋敷に帰ってもルナティナはその事しか考えられなくなっていた。


「こんな時はお菓子作ろう」

調理室にて。

「あった、まだ材料あった」


粉を入れ、牛乳を大さじ一杯に、小さじ三杯。

卵を入れ、バターも入れる。混ぜて、カップに生地を入れる。トッピングをして、20分ぐらいオーブンに入れた。


…待ってる間何しよう。

これ、あの人にあげたら…。あの人と趣味が同じだったら…。


色んな妄想が飛び交う。

もう一度あの人に逢いたい。



夜の街角。

人通りはまばらで、石畳にランプの光が柔らかく揺れていた。

ルナティナは通りを歩きながら、昨日ぶつかった場所を何度も見回した。


「……いない、か」


胸の奥がきゅっと締めつけられる。

昨日の出来事が、まるで夢みたいに感じていた。


「やっぱり、偶然だったのかな……」

そう呟いて俯いたとき。

「――あっ」


視界の先、露店の木箱を運んでいる青年の姿が見えた。

あの顔、あの横顔――間違いない。


ルナティナは思わず駆け出していた。

「ま、待ってください!」


青年が驚いたように振り向く。

「……君は、今日の?」


「そ、そうです!今日ぶつかって……」

恥ずかしさを誤魔化すように、ルナティナは後ろ手に隠していた包みを差し出した。


「これ……お詫びです。今日の分の」


青年は驚いた顔をして、それから柔らかく笑った。

「わざわざ……ありがとうございます。嬉しいです」


ルナティナの心臓がまた跳ねた。

やばい、笑顔まで反則……!


青年は包みを受け取りながら言った。

「僕は、リオン・セフィルです。旅の途中でこの街に寄ってるんです。貴方の名前は?」


「……ルナティナ・ローズです」

少し照れながらも、私は名乗った。


「こんな時間にお出かけとは、珍しいですね」

青年は穏やかに笑いながら言った。

「え、えっと……星が綺麗だから、つい散歩を……」

「ふふ、夜風に誘われたんですね」


「リオンさん、甘いもの好きですか?」

「え?ああ、好きですよ。特に……マフィンとか」


「……!」

まさかの一致!?


ルナティナの目がぱっと輝く。

「それ、マフィンなんです!」


リオンは少し笑いながら、包みを開いて一口食べた。

「そうなんですね。……おいしい。優しい味ですね」


優しい声に、また胸が跳ねた。気付かないふりをして。

「……リオンさんは、いつもここに?」

「ええ。仕事が終わった後、よくこの通りを歩くんです。静かで、考え事ができるので」


「考え事……」

ルナティナは少し笑った。

「私もよく考え事をします。ちょっと抜け出して」


「抜け出して?」

「えっと、その……屋敷の人たちには内緒なんですけど」


青年は少し驚いたように眉を上げ、そしてやがて微笑んだ。

「秘密、ですね」

「秘密です」


二人の間に、少し照れたような沈黙が流れた。

ルナティナは後ろ髪を引かれるように振り向いた。

「また……会えますか?」


リオは微笑んで、

「ええ、もちろん。僕もしばらくこの街にいるので」


その言葉に、ルナティナの胸がまた跳ねた。


「……じゃあ、また」


また……会えるんだ

胸の奥がふわっと温かくなり、彼女は思わず微笑んだ。



夜中の屋敷。

静まり返った廊下に、足音がひとつ。

ルナティナはそっと玄関の扉を開け、忍び足で中に入った。


よし、バレてない……!

――と思った瞬間。


「遅かったな」


背筋が凍る。

声のした方向を向くと、薄暗い廊下の端にロディが立っていた。腕を組み、冷たい視線を向けている。


「……お兄ちゃん、起きてたんだ」

「起きてたんだじゃない」

 ロディの声が低く響く。

「夜中に一人で外に出るなんて、何考えてんだ」


「ちょっとだけ散歩しただけ……」

「散歩ねぇ。じゃあ聞くけど、どこまで行った?」

「街の……端っこ、まで」

「端っこ!?」

ロディの声が一瞬大きくなり、ルナティナはびくっと肩をすくめた。


「ルナ、お前……。自分が誰か、分かってるか?」

「えっと……お嬢様?」

「そう。屋敷の主が夜中にふらふら出歩くなんて、誘拐してくださいって言ってるようなもんだ」


「でも、平気だったし」

「平気だった、じゃない!」

ロディは頭を押さえ、深く息を吐いた。

「お前は昔からそうだ。危なっかしくて、こっちは心臓がもたねぇ」


「……心配してくれてるの?」

「当然だろ」

ロディは眉をしかめ、少しトーンを落とした。

「ルナ、お前は小さい頃から、ろくでもない奴に懐かれる。だから、夜に街なんか出るな」


「ろくでもないって、何それ!」

「知らねぇ男にぶつかって惚れるような奴のことだ」

「な、なんで知ってるの!?」

「顔見りゃ分かる」

ロディは少し苦笑した。

「……で、どこの誰だ?」

「言わない……」

「やっぱりろくでもない」


「違うし。優しかったから」

「優しい顔して近づく奴が、一番厄介なんだよ」

ロディはため息をついた。

「ったく……。次やったら、俺がエドガーにチクるからな」


「それだけはやめて!」

「だったら大人しくしてろ」


ルナティナは口を尖らせて黙り込む。

ロディは苦笑しつつ、彼女の頭をぽん、と軽く叩いた。

「……まぁ、気になるのは分かるけどな。けど今はやめとけ」


「……うん」

素直に頷くルナティナの瞳には、まだどこか、街で見たあの人の姿が残っていた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


作者のことを聞きたい方はスクロール。

聞きたくない方はこれで終わった方がいいです。


なんで人って恋をするんでしょうね。

恋される側の気持ちって、案外分からないものです。

私も告白されたことがあります。特に意識していなかったので、断りました。

本当に、なんで好きになったのかが分からないです。


こちらは、「へぇ、そうなんだ」なのに、相手は全力でドキドキしてるんですから、面白いですね。

でもまあ、人生にはこういうちょっと面白いハプニングも必要ってことで。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ