運ゲーで
今回は前回の続きです。フィシリア視点です。
面白くは無いかも…見たくない方は見ないでください。
雨音が石畳を叩く静かな街の中、僕たちは人気のない路地を進んでいた。
街灯の明かりは弱々しく、霧のような雨に霞んでいる。
雨に煙る路地の奥。
突如現れた石壁に、文字が浮かび上がった。
『雨は三度重なりて虹を生む。されど一度でも誤れば、永遠に閉ざされる』
壁には三つの色石――赤、青、緑――が縦に並んでいる。
「……最初の謎かな?」
主人が小声で呟く。
「虹、ですか……赤、青、緑……」
僕は真剣に石を見つめる。赤、青、緑か。
エドガーさんは渋い顔をして首を振った。
「お嬢様、軽率に押すのは危険です。文言からして罠が仕掛けられている可能性が高いです」
主人はしばらく考え込んだ
――けれど、すぐにうんざりしたように肩をすくめる。
「……面倒くさい」
そう言うなり、迷いなく三つの石を順番に押し始めた。
主人はためらいなく、
赤、青、緑――その順に押した。
一瞬、空気が張り詰める。
壁の奥で「ガチリ」と鈍い音が響いた。
石壁が震え、真ん中から亀裂が走る。
そして、重々しい扉が音を立てて開いたのだ。
「……えっ……」
僕は目を瞬く。
エドガーは絶句し、額に手を当てた。
「……お嬢様……なぜ、その順で?」
主人は涼しい顔で答える。
「虹って言えば、赤から始まるじゃん?そのあと青、最後は緑。ほら、簡単」
「簡単……」
フィシリアは呟き、エドガーは小さくため息を吐いた。
「……まぐれにしか思えませんが」
「違う!これは直感ってやつ」
――最初の謎は、運と直感であっさり突破された。
僕たちは亀裂の入った石壁の奥に進んだ。
「……扉が開いた!凄い!」
主人は淡々と歩み寄り、床を見下ろすと、足元で小さな金属の鍵が光った。
「これは……?何の鍵でしょう?」
エドガーさんが手に取る。鍵は古びているが、ずっしりと重みがあり、何か特別な用途がありそうだ。さらにその傍には紙があった。
『鍵は名前を知れ。そうすれば場所は開かれる』
「まだ分からないね。とりあえず探索」
僕たちは鍵と紙を拾い上げ、暗い路地をさらに進んだ。
雨は止む気配を見せず、街灯の光はますます霞んでいる。
路地を進んでいたところ、黒い影のような建物が現れた。
古びた木製の大扉。そこに鉄の装飾が施され、鍵穴がひとつ口を開けている。
「……きっと、この扉ですね」
エドガーさんが呟く。主人は嬉しそうに鍵を掲げ、差し込もうとする。
しかし――カチリと乾いた音がするだけで、扉はびくともしない。
「開かない……?」
フィシリアが首を傾げる。
「あの紙の出番じゃない?」
「つまり……この建物の名前を知らなければならない、という事ですね」
エドガーさんが真剣な眼差しで扉を見つめる。
主人は肩をすくめる。
「名前?…宿ぽいから、適当に“レインハウス”とか言えば開くんじゃない?」
半ば冗談でそう呟いた瞬間――扉の表面に、にじんだ文字が浮かび上がった。
フ → ロ → ト → ホ
「これは……」
僕は思わず声を上げる。
エドガーさんは唇を結ぶ。
「“欠けた音を補い、調べを整えよ”……」
主人は目を細め、扉に刻まれた文字を指でなぞる。
「ここは『ッ』とかじゃない?だって意味がある単語と言えばこれでしょフロット。フランス語で意味は雨。しかもこの町、雨降ってるから」
僕は灯りを当て、文字の余白を凝視した。
「……うっすらと『テ』『ル』が見えます」
「答えはフロットホテルね」
すると鍵が手の中で淡く光り、扉の鍵穴に吸い込まれるように嵌まった。重々しい音とともに、ホテルの扉がゆっくりと開いていく。
中からは冷たい空気が流れ出し、雨の匂いとは違う古い香りが漂ってきた。
重々しい音を立てながら扉が開いた。
外の雨音がすっと遠ざかり、かわりに、どこからともなく低い風のうねりが響いてきた。
「おぉ!」
主人は目を輝かせた。
「……中は、思ったより……綺麗ですね」
「なんだか寒いね」
「もう帰りませんか?」
提案してみる。
「何、フィシリア、ビビってんの?」
主人に言われてしまった。そんな事ありませんが。
広がっていたのは、広いロビーだった。
床は黒光りする石畳。壁には金色の額縁が並び、だが中身の絵はほとんどが掠れて判別できない。天井には古びたシャンデリアが吊られている。
探索したところロビーには何も無かった。なので三人で奥に進むことにした。
ホテルの奥に進んだ。
赤・青・緑の扉の前に立つと、木製の扉にはそれぞれ小さな鐘の形をした金具が付いていた。
「来た!次の謎!」
主人が軽く赤の扉の金具を叩く。
「カーン……」
低く重々しい音がホールに響き渡る。
「……音?」
僕は耳を澄ます。
続いて青の扉。主人が叩くと、中音の「コーン」という音が重なった。そして緑――高音の「キーン」が加わる。
その瞬間、扉の上に淡く文字が浮かび上がった。
『三つの音の調べを揃えよ。誤れば沈黙に閉ざされる』
「なるほど、和音を作らなきゃいけないのね」
ルナティナは頷く。
エドガーさんは眉を理論的に説明する。
「赤が低音、青が中音、緑が高音……順番を間違えると不協和音となり、道は閉ざされるでしょう」
僕たちは一度試すことにした。
主人が赤、エドガーさんが青、僕が緑。
「カーン……コーン……キーン……」
しかし、音は少しずれて不協和音に。
扉はびくともしなかった。
「やっぱり息を合わせないと。もう1回!」
三人で肩を合わせ、息を整える。
「一、二、三……!」
カーン……コーン……キーン
三つの音が完璧に重なった瞬間、ホールに柔らかな共鳴が広がる。扉の表面が淡く光り、ゆっくりと開き始めた。
奥には長い廊下が伸び、薄暗い光が遠くまで揺らめいている。
「……えぇ、終わり?それじゃあ次」
進んだら、迷路だった。しかし鏡の迷路で無数の自分たちの姿が揺れ、どれが本物か分からない。
床の反射に足音が跳ね返り、方向感覚は簡単に狂いそうになる。
「……そんな早く終わんないよね。着いてきて」
主人は迷うことなく右の通路へ一歩踏み出す。
主人に着いていく。周囲の反射や行き止まりを気にせず、歩き続けた。
「えっと、ここでいいのですか……?」
エドガーさんと僕が少し不安げに声を上げる。
でも僕は笑って肩をすくめる。
「大丈夫でしょ」
曲がり角をいくつも直感で曲がり、左右に揺れる鏡を無視して歩き続ける。
そして――気がつけば、暗い角を曲がった先に、鏡張りの壁が途切れ、広いホールが見えていた。
「……え、もう終わり?」
主人はそう呟く。こっちが聞きたい。
エドガーは唖然とし、少し呆れた顔で僕を見つめる。
「……どうやって、この迷路を?」
「適当に」
主人は笑う。
迷路は、考えるよりも大胆さと直感を信じることで、あっさり突破できてしまったのだ。
そして次の広間へ歩き出すのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
謎解き解説、いらないですよね。
さっさと終わらせたい。これ別のシリーズでも良かった。
次で終わらせます!そして!ギャグ展開に入るんだ!
次はエドガー視点メインです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




