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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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ごめんって

今回はエドガーの誕生日にちなんだ話です。

遅れましたが。

9月6日の夜のこと。エドガーは拗ねていた。


あの舞踏会から数日が経った。

屋敷は静まり返り、フィシリアはすでに寝息を立てている。

主と私だけが、薄明かりの灯る部屋に残っていた。


昨日は私の誕生日だった。だが、お嬢様は何も仰らなかった。いつものことといえば、そうだ。主従に過ぎぬ私に、祝われる資格など本来ない。

それでも……どこかで、わずかな期待をしてしまったのだ。


私は机の上の帳簿を片付けながら、つい声に出してしまった。

「……お嬢様、昨日は……特別な日であったのですが」


「あっ!そのごめん忘れてた」

その瞬間、胸の奥で小さな失望が広がる。やはり、忘れておられたのだ。


私は普段通りに言葉を続けようとした。けれど、どうしても淡々とは言えなかった。

「……まあ、別に構いません。私は主従としてここにおりますから。誕生日を覚えていただけなくとも……」


言いかけて、自分でも拗ねた子供のように聞こえるのが分かる。お嬢様に聞かれるのも恥ずかしい。だが、もう引き返せなかった。

あれから間もなく、主人が静かに立ち上がり、私の前に向き直った。


「……着いてきて」

その一言に、私は一瞬戸惑った。だがその顔には確かな決意があり、私は礼をして立ち上がった。


外は少しの街灯に照らされ星と街が綺麗だった。

私達はとある店に着いた。こんな遅くまで営業してるなんて。

ここはジュエリーショップみたいだ。


「あなたの好みに合わせる。別に驚かせるつもりはないから、正直に選びなさい。この中から選んで」

そう言ってお嬢様は三つの指輪を並べた。


三つの指輪は、それぞれ趣が異なっていた。

一つは金色に近い暖かな輝き。

一つは深い青石を埋め込んだ涼やかなもの。

そして最後の一つは、銀色に細工が施された、質素でありながら品格を感じさせるもの。


私は無意識に最後の指輪へ視線を向けていた。

華美ではない。けれど、確かに日常に寄り添うような静かな輝きを放っている。


「……これが良いかと」


お嬢様は目を細めて小さく頷いた。

「やっぱり。そう言うと思った」


店員が静かに箱へと収め、包装を施している。


「……ありがとうございます」

私は深く頭を下げた。だが声は少し掠れていた。


屋敷へ戻り、控えの間で二人きりになったとき。

お嬢様は小箱を差し出し、ふっと口角を上げる。

「遅くなったけれど……誕生日おめでとう。いつも支えてくれてありがとう」


私は受け取った小箱を震える手で開いた。

銀の指輪が、蝋燭の灯に照らされて穏やかに輝いている。

思わず言葉を失い、視界が滲むのを誤魔化すために視線を伏せた。


「……お嬢様に、このようなものを頂けるなど……過ぎた贈り物です」


「いいの」

お嬢様は軽やかに言う。

「あなたには、いつも支えられているから。形に残るものを渡したかっただけだから」


私は指輪を薬指に嵌める。

冷たさが一瞬走り、その後じんわりと体温に馴染んでいく。

まるで、最初からあったかのように。


「……感謝いたします、お嬢様」


深く頭を下げたその声は、拗ねた男ではなく、ただ一人の忠実な従者の声だった。


その夜、眠りに就くまで指輪の感触を確かめ続けた。

この銀の輪は、きっと私の生涯に渡る誇りとなるだろう。



翌日、屋敷の台所は朝の光で満ちていた。

主人と僕は、二人でケーキを作っている。どうやらエドガーさんの誕生日だったらしい。


「……主人、砂糖はどれくらい入れますか?」

僕が訊くと、主人は手際よく手を動かしながら答える。

「計量は正確に。だいたいこのくらい――でも、あなたは少し甘党ね」


僕は小さく笑い、粉をふるった。卵を割る手が少し震えるのは照れのせいかもしれない。

主人はふと思い出したように、キッチンの棚から小さな箱を取り出す。


「昨夜は……少し慌てたわ。エドガーの誕生日のこと、忘れていたから」

主人があっさりと言う。


「指輪を渡したのですか?うまく行きましたか、主人」


「ええ。驚いていたけれど、すぐに素直な顔になった」


主人は手際よく生地を混ぜ、オーブンへと入れた。

火加減は魔法で微調整しつつ、僕はクリームを泡立てる担当だ。


「フィシリア、端々を見ておいて。焼き加減と、あとは飾りつけの案を出して」

僕は真面目に頷いた。僕は主人の横顔を見ながら、さっきの二人のやりとりを思い出す。


オーブンの中のケーキがふっくらと膨らむ。主人はそっと窓を開け、外の空気を吸い込んだ。

「エドガーには、明日改めて皆で祝おう。今日は静かに過ごしてもらおう」


僕は頷き、泡立てたクリームを器に移す。主人の提案はいつも的確だ――そして、人の心に寄り添っている。


焼き上がったケーキにクリームを塗り、果実を飾っていく。主人はデザインを決めると、僕に小さなヘラを渡した。二人で黙々と作業を続ける時間は、言葉のない会話のようで、心地よかった。


出来上がったケーキをテーブルに飾り、僕はそっと主人を見上げる。彼女は柔らかな笑みを浮かべていた。

「これでいい。反応が楽しみね」


僕は小さく「はい」と応えた。窓の外では夜が静かに近づいてくる。今日もまた、屋敷には穏やかな一日が流れていた。



その夜。喜ぶエドガーが見られた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

まず最初に言うことはエドガーごめん。誕生日おめでとうですね。この後は作者の小話を話したいと思います。


指輪を贈る意味って知っていますか?

私が調べた所、永遠、約束、契約だそうです。

それなので今回は指輪を贈らせました。

私はこうゆうの大好きな人間なので。

余談ですが私は登場キャラには意味を込めてます。

誕生日とか名前とか。全部分かったらすごい。

こうゆう小ネタって私は好きなんです。


こんなもんですね。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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