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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
19/84

二つの嘘の夜

今回は前回の続きです。本番ですね。

読み疲れると思います。それでは読んでってください。


一週間が経過した今日。ついに当日を迎えた。


馬車が王宮の門前で停まる。ついに着いてしまった。

落ち着け。今はルナティナなのだから。


隣にはエドガーが立ち、冷静な視線で周囲を見渡している。

「ルナティナ様、背筋を伸ばしてくださいませ。周囲はルナティナ様として見ております。振る舞い一つ一つが印象になりますよ」

彼の声が、僕の緊張を少し和らげる。


広間に入ると、煌びやかなシャンデリアの光が反射し、音楽と談笑のざわめきが空間を満たしていた。

視線を感じると、周囲の令嬢たちの表情には必死さがにじんでいる。

「誰かしらあの方……美しい……負けられないわ」

「私も王子に認められなければ……!」

「隣にいる方もカッコイイ」


僕は冷静を装い、軽く会釈する。自然に振る舞う。

一人の令嬢が興味深そうに近づき、小声で尋ねてきた。


「ルナティナ様、舞踏会は初めてでいらっしゃいますか?」

「……はい、初めてでございます」

緊張を抑えつつ答えると、彼女は目を見開き、軽く会釈して退いた。


隣のエドガーが淡々と言う。

「……周囲は完全に王子の花嫁候補として必死です。落ち着きすぎると、かえって目立ってしまいます」


「……わかったわ」


煌びやかな広間のざわめきの中、必死に振る舞う令嬢たちを横目に、僕とエドガーは静かに舞踏会の中心へ歩き始めた。


広間の中央に近づくにつれ、音楽と談笑のざわめきが一層大きくなる。ピアノの音が聞こえる。広間を支配する美しい旋律。僕はふと視線を向けた。ピアノの前に座る青年――その横顔を見た瞬間、胸が大きく波立った。


息を呑む。

隣で控えていたエドガーも、わずかに目を細める。

「……ルナティナ様。あれは」

「間違いありません……本物です」


他の令嬢や貴族たちはただ「素敵な演奏」としか思っていない。けれど僕とエドガーだけが、この場に二人の“ルナティナ”が存在することを理解していた。


音楽は続き、広間を支配していく。

周囲の令嬢たちは感嘆のため息をもらし、誰も正体に気づかない。ただ僕とエドガーだけが分かる。


煌びやかな広間のざわめきが、ふいに静まり始めた。

視線の先、堂々と姿を現したのは、この国の王子――エリクス王子だった。

王子がこちらに視線を向け、ゆっくりと歩み寄ってくる。その距離が近づくにつれ、心臓の鼓動が早まる。


漆黒の礼服に身を包み、背筋を伸ばして歩く姿には、自然と周囲の令嬢たちが息を呑む。

「……エリクス様……」

「本日も凛々しい……」

羨望と緊張が入り混じった声が広間に広がる。


エドガーが肩越しに小声で囁く。

「……落ち着いてください、ルナティナ様。王子は初めて見る方に興味を抱くものです。自然に振る舞えば十分でございますよ」


僕――いや、『ルナティナ』を演じる僕に、王子がまっすぐ視線を向けた。心臓が一瞬だけ跳ねる。


「……貴女が、ルナティナ嬢でいらっしゃいますね」

澄んだ低音の声が、僕に向かって響く。


「……はい。ルナティナにございます」

喉が渇きそうになるのを抑え、僕は静かに会釈した。


エリクス王子は微笑みを浮かべ、ゆるやかに右手を差し出す。

「光栄です。ぜひ、最初の一曲を私にお付き合いいただけますか」


周囲の令嬢たちが一斉にざわめき、嫉妬と驚きの視線が僕に突き刺さる。

「なっ……最初に誘われたのはルナティナ様……?」

「どうして……」


隣で控えるエドガーが、わずかに口元をゆがめて囁いた。

「……断れません。ルナティナ様。頑張って来てください」


僕は一瞬だけエドガーさんを見た。それから観念して、王子の差し出した手に自分の手を重ねた。


「……承知いたしました。エリクス殿下」


広間が拍手に包まれる中、僕は舞踏会の中心へと導かれていった。

背後では、誰も気づかぬ場所でピアノの旋律を奏でる主人――ルナティナの音色が、静かに僕を支えていた。


---

広間を満たしていた旋律が、最後の和音で静かに終わった。

拍手が湧き上がり、ピアノの前に座っていた人物――魔法で男装したルナティナは、軽く頭を下げただけで、観客の一人として群衆の中に紛れた。

その姿に誰も違和感を覚えない。彼女自身がそう見せているからだ。


フィシリア、ちゃんと踊れてる。王子も夢中になっているみたい。

ルナティナは男の装いのまま、グラスを片手に広間を歩きながら、冷静に観察を続けた。



一方その頃。中央ではダンスを終えたフィシリアが、エリクス王子に向き合っていた。

「ルナティナ嬢。やはり貴女は特別だ。少し、席を移してお話をしたい」


周囲の令嬢たちが嫉妬に駆られ、視線を突き刺してくる。

僕は冷静を装いながらも、心臓がざわめいた。

「……殿下のご厚意、ありがたく存じます」


王子が一歩踏み出し、手を差し出す――その手を取ろうとした瞬間、誰かがすっと僕の前に立ちはだかった。


「――失礼」

低い声が割って入り、僕の横に一人の青年が立った。


振り向いた瞬間、僕は思わず目を見張る。

……主人!?

そこにいたのは、本物のルナティナだった。


「――お邪魔して申し訳ありません」

低く落ち着いた声。視線には鋭い意図が宿っている。


王子は一瞬眉を上げた。

「……あ、貴殿は……?」


主人はにこやかに、しかし自然な調子で答える。

「ルナティナ嬢の側近を務めております。少々、彼女に付き添わせていただきます」


王子は一瞬、目を細めた。

「側近……ですか?」

「はい。舞踏会での振る舞いを補佐する役目でございます。どうぞご安心くださいませ」

その声には揺るぎない説得力があり、王子は言葉を探すことしかできない。


男装ルナティナはそっと手を差し出し、僕の手を取る。

「では、失礼いたします。少しだけこちらでお話しを」


僕はため息交じりに小さくうなずき、彼の手に従った。

王子が何か言おうと口を開くが、男装ルナティナの落ち着いた雰囲気と毅然とした態度に圧され、結局何も言えず、その場に立ち尽くす。


主人は自然に僕を広間の喧騒から外れた場所へと導く。

「安心してください、ルナティナ様。ここからは僕に任せて」


僕は小声で、しかし少し笑みを浮かべて答える。

「……わかった」


エドガーも少し離れた位置で、冷静に僕たちの後ろを確認しながら、低く呟く。

「……お嬢様、完全に主人の掌中にございますね」


そうして控え室へ向かうのであった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

可哀想な人達ですよね。それはそうと読んでて混乱した人もいるのではないでしょうか?頑張って読み取ってください。

そろそろルナティナの魔法について話しましょうか。


これはどっかの話で月影属性と属性は判明していたと思います。そしてこれは光属性と闇属性の中間だと話したかも知れません。私は正直覚えてません。闇属性の魔法を使うと姿が変わります。

特別訓練後?でルナティナの口調が変でしたよね。

それは闇属性のスキルを使ったせいです。ですが今回は変になってませんよね。これはスキルは使わず、魔法だけ使ったので変になっていません。ルナティナは闇属性のスキルを使ってしまうと乗っ取られてしまうのです。しかし、スキルは使わないと今回のように姿だけ変わります。分かりましたでしょうか?


さらに要約すると、

・ルナティナは光属性と闇属性の中間である

・闇属性のスキルを使うと体が乗っ取られてしまう

・今回は闇属性の魔法だけ使ったため乗っ取られていない


ということです。矛盾してたりしてたらごめんなさい。

これぞ作者クオリティです。


フィシリアはルナティナを演じているので、敬語が無くなったりしてたり、エドガーは本物のルナティナではないのでお嬢様様ではなくルナティナ様など気づいた人はいるのでしょうか?続くのでお楽しみに。


以上後書きでした。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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