ご主人様
今回はフィシリアの正体が分かります。長めです。
良ければ読んでください。
僕は主人の言葉に息を止め、ブレスレットに視線を落とした。
「……このブレスレット、特別なんですか?」
僕の声は震えていた。
ルナティナは小さく頷く。
「ええ。あなたが生まれた時から、両親が魔法を封じて守ってきたもの。……だけど、それだけじゃない」
「だけど?」
「それを狙う者は、ただの魔導騎士団じゃない。国家レベルの秘密も絡んでいる。だから、あなたは狙われる」
確かにこれまでの“普通じゃない日常”は、単なる偶然ではなかったのだ。
エドガーが横から淡々と口を挟む。
「国家レベル、ですか……。それなら、彼らの動きも理解できますね。ですが、焦る必要はございません」
「じゃあ、今後どうするんですか……?」
僕の声はまだ小さく、どこか震えていた。
「まずは、訓練を続ける。そして魔法の威力を上げる。訓練再開だ!」
主人のその一言で訓練は再開された。
「まずは基本の魔法を正確に」
僕は小さく頷き、手のひらに魔力を集中させる。
何度も同じ動作を繰り返す。手首の感覚、体全体に流れる魔力、指先から放たれる力。エドガーは横で計測しているのか、時折数字を口にする。
時間が経つにつれ、僕の動きは徐々に滑らかになり、魔力の軌道も安定してきた。
「いいね!……その調子!」
休憩を告げる声がかかる。主人はそっと僕の隣に座る。 休憩中、汗を拭い、膝をついて深呼吸をしていると、主人が静かに立ち上がった。
「模擬戦でもやるか〜」
「模擬戦……ですか?」
主人は頷いた。
「フィシリアは観戦。私とエドガーが戦う」
エドガーも立ち上がり、落ち着いた声で言う。
「また、唐突ですね」
「良い機会でしょ。そうだ罰ゲーム付けよう。負けた方は勝った方の命令を聞く。あと両者魔法を使わずに戦う」
「嫌です」
「そんな事言わずにさ、見たいよねフィシリア」
思わず頷いてしまった。
「フィシリアもそう言ってるて事で決定〜!」
ルナティナは周囲に小さな障壁や標的を作り出す。光の球が飛び交い、戦闘環境が整う。
「準備はいい?エドガー」
「はい」
始まった。
剣先が激しくぶつかり火花か散っていた。主人の表情は真剣そのもので、笑みはなく、ただ鋭い意志が宿っている。一方、エドガーさんも冷静そのもので、無駄な動きは一切なく、確実に主人の攻撃を受け流し、隙を突こうとしている。
「……ふっ」
主人が軽く息を吐き、構えを変える。
その瞬間、エドガーが素早く斬り込む。主人は一瞬の間合いの見極めでかわし、逆にエドガーさんの剣先を押し返す。
二人の間に緊張の糸が張り詰め、時間がほんの一瞬止まったように感じる。
僕の胸は高鳴り、手に汗が滲む。観戦といえど、この距離で命を賭けた戦いを見るのは、想像以上に息が詰まる。
「……まだまだ」
主人の低い声。まるで自分自身に言い聞かせるかのようだ。
「……そうですね」
エドガーも落ち着いた声で応じる。だが、その目は鋭く、集中力は最大限に達している。
次の瞬間、主人が足を滑らせるように前へ踏み込み、斬りかかる。エドガーはその攻撃を寸でかわし、間髪入れずに逆襲を仕掛けた。剣と剣がぶつかり合い、甲高い金属音が響く。
「――わっ!」
主人の顔に一瞬の緊張が走る。だがすぐに微笑むように力を抜き、態勢を立て直す。
「私が負けるわけにはいかない」
なんでだろうか?フラグにしか聞こえない。
互いの剣が激しくぶつかり、床に軋む音が響く。僕はただ見つめることしかできない――この戦いは、勝敗以上に、二人の意志と覚悟のぶつかり合いだと理解した。
そして、ほんの一瞬の隙。主人の剣がエドガーの腕にかすり、エドガーの防御がわずかに崩れた。
「……決まったか?」
やはりフラグにしか聞こえない。主人の声は静かだが、どこか喜びを含んでいる。
しかし、エドガーさんもすぐに反撃の構えを取り、最後の一閃を放つ。剣先がぶつかり合い、火花とともに二人の間に沈黙が訪れた。
勝負は――引き分けか、それとも……。
僕は心臓を押さえ、震える手でその瞬間を見つめる。二人の目が交わったとき、そこには敵意でも友情でもない、ただ“互いを認める覚悟”が宿っていた。
主人が剣をゆっくり下ろし、エドガーも同じように剣を納める。
「……今回は私の勝ち」
主人が軽く笑みを浮かべる。
「……認めます」
エドガーの口元にも、わずかな微笑みが見える。
空気が一気に和らぎ、緊張の糸が切れた。僕は深く息を吐き、ようやく胸の高鳴りが落ち着くのを感じた。
主人はニヤリと笑い、エドガーの前にゆっくり歩み寄った。
「……面白い罰ゲームを思いついた」
エドガーは軽く身構え、眉を寄せる。
「……面白い、とは?」
主人は少し声を落として囁くように言った。
「フィシリアに『勝者の命令を一つだけ聞いてもらえる』権利与える」
「え……!? フィシリアさんに、ですか!?」
「君は……その命令に従わなきゃいけない。どんな命令かは、フィシリア次第」
エドガーは軽く息をつき、頭を抱える。
僕は少し戸惑いながらも、胸の奥で小さな笑みを浮かべる。
まさか、勝者でもない僕が罰ゲームの権利を持つなんて……。
主人は楽しそうに手を叩く。
「フィシリア、何を命令する?」
僕は考え込む。罰ゲーム……面白くて、でも恥ずかしすぎず、エドガーにちょっとだけ困ってもらう……。
「じゃあ……その……」
僕が言いかけると、エドガーはわずかに身を引き、困惑した表情を浮かべる。
「まさか……その命令を……」
主人が僕を見てうなずく。
「さあ、どうする?」
僕は少し笑いながら、小さな声で決めた。
「……エドガーさん、一日中、主人のことを
『ご主人様』って呼んでください」
エドガーは一瞬凍りつき、
「……わかりました」
主人は大笑いしながら、剣を肩にかけた。
「フィシリア、なかなかセンスあるね」
僕は少し照れくさい気持ちと同時に、妙に楽しさも感じていた。勝者でもない僕が、こんな形で二人を振り回せるなんて――少しだけ特別な気分だった。
その後
一日中、ご主人様と言うエドガーが見られたのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回は明るくなってしまいましたね。おまけあります。読みたい方はどうぞ。
魔道騎士団とは?
魔法と剣術を兼ね備えた騎士たちの組織
なぜフィシリアが?
フィシリアの過去が関係してます。次回に回します。
ここまで読んでくださりありがとうございます。ちょっとふざけすぎましたね。キャラの口調がおかしくなった所もあったと思います。
作者はエドガーが可哀想な目にあって欲しいという願望でこんなりました。
エドガー、あきらか不利ですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




