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無名の魔法をかけて  作者: 灰色うさぎ88
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ご主人様

今回はフィシリアの正体が分かります。長めです。

良ければ読んでください。


僕は主人の言葉に息を止め、ブレスレットに視線を落とした。


「……このブレスレット、特別なんですか?」

僕の声は震えていた。


ルナティナは小さく頷く。

「ええ。あなたが生まれた時から、両親が魔法を封じて守ってきたもの。……だけど、それだけじゃない」


「だけど?」


「それを狙う者は、ただの魔導騎士団じゃない。国家レベルの秘密も絡んでいる。だから、あなたは狙われる」



確かにこれまでの“普通じゃない日常”は、単なる偶然ではなかったのだ。


エドガーが横から淡々と口を挟む。

「国家レベル、ですか……。それなら、彼らの動きも理解できますね。ですが、焦る必要はございません」



「じゃあ、今後どうするんですか……?」

僕の声はまだ小さく、どこか震えていた。


「まずは、訓練を続ける。そして魔法の威力を上げる。訓練再開だ!」



主人のその一言で訓練は再開された。




「まずは基本の魔法を正確に」

僕は小さく頷き、手のひらに魔力を集中させる。


何度も同じ動作を繰り返す。手首の感覚、体全体に流れる魔力、指先から放たれる力。エドガーは横で計測しているのか、時折数字を口にする。


時間が経つにつれ、僕の動きは徐々に滑らかになり、魔力の軌道も安定してきた。


「いいね!……その調子!」


休憩を告げる声がかかる。主人はそっと僕の隣に座る。 休憩中、汗を拭い、膝をついて深呼吸をしていると、主人が静かに立ち上がった。


「模擬戦でもやるか〜」

「模擬戦……ですか?」

主人は頷いた。

「フィシリアは観戦。私とエドガーが戦う」


エドガーも立ち上がり、落ち着いた声で言う。

「また、唐突ですね」

「良い機会でしょ。そうだ罰ゲーム付けよう。負けた方は勝った方の命令を聞く。あと両者魔法を使わずに戦う」

「嫌です」

「そんな事言わずにさ、見たいよねフィシリア」

思わず頷いてしまった。

「フィシリアもそう言ってるて事で決定〜!」


ルナティナは周囲に小さな障壁や標的を作り出す。光の球が飛び交い、戦闘環境が整う。


「準備はいい?エドガー」

「はい」


始まった。

剣先が激しくぶつかり火花か散っていた。主人の表情は真剣そのもので、笑みはなく、ただ鋭い意志が宿っている。一方、エドガーさんも冷静そのもので、無駄な動きは一切なく、確実に主人の攻撃を受け流し、隙を突こうとしている。


「……ふっ」

主人が軽く息を吐き、構えを変える。

その瞬間、エドガーが素早く斬り込む。主人は一瞬の間合いの見極めでかわし、逆にエドガーさんの剣先を押し返す。

二人の間に緊張の糸が張り詰め、時間がほんの一瞬止まったように感じる。


僕の胸は高鳴り、手に汗が滲む。観戦といえど、この距離で命を賭けた戦いを見るのは、想像以上に息が詰まる。


「……まだまだ」

主人の低い声。まるで自分自身に言い聞かせるかのようだ。

「……そうですね」

エドガーも落ち着いた声で応じる。だが、その目は鋭く、集中力は最大限に達している。


次の瞬間、主人が足を滑らせるように前へ踏み込み、斬りかかる。エドガーはその攻撃を寸でかわし、間髪入れずに逆襲を仕掛けた。剣と剣がぶつかり合い、甲高い金属音が響く。


「――わっ!」

主人の顔に一瞬の緊張が走る。だがすぐに微笑むように力を抜き、態勢を立て直す。

「私が負けるわけにはいかない」

なんでだろうか?フラグにしか聞こえない。


互いの剣が激しくぶつかり、床に軋む音が響く。僕はただ見つめることしかできない――この戦いは、勝敗以上に、二人の意志と覚悟のぶつかり合いだと理解した。


そして、ほんの一瞬の隙。主人の剣がエドガーの腕にかすり、エドガーの防御がわずかに崩れた。


「……決まったか?」

やはりフラグにしか聞こえない。主人の声は静かだが、どこか喜びを含んでいる。


しかし、エドガーさんもすぐに反撃の構えを取り、最後の一閃を放つ。剣先がぶつかり合い、火花とともに二人の間に沈黙が訪れた。


勝負は――引き分けか、それとも……。



僕は心臓を押さえ、震える手でその瞬間を見つめる。二人の目が交わったとき、そこには敵意でも友情でもない、ただ“互いを認める覚悟”が宿っていた。


主人が剣をゆっくり下ろし、エドガーも同じように剣を納める。


「……今回は私の勝ち」

主人が軽く笑みを浮かべる。

「……認めます」

エドガーの口元にも、わずかな微笑みが見える。


空気が一気に和らぎ、緊張の糸が切れた。僕は深く息を吐き、ようやく胸の高鳴りが落ち着くのを感じた。



主人はニヤリと笑い、エドガーの前にゆっくり歩み寄った。

「……面白い罰ゲームを思いついた」


エドガーは軽く身構え、眉を寄せる。

「……面白い、とは?」


主人は少し声を落として囁くように言った。

「フィシリアに『勝者の命令を一つだけ聞いてもらえる』権利与える」


「え……!? フィシリアさんに、ですか!?」


「君は……その命令に従わなきゃいけない。どんな命令かは、フィシリア次第」


エドガーは軽く息をつき、頭を抱える。



僕は少し戸惑いながらも、胸の奥で小さな笑みを浮かべる。

まさか、勝者でもない僕が罰ゲームの権利を持つなんて……。


主人は楽しそうに手を叩く。

「フィシリア、何を命令する?」


僕は考え込む。罰ゲーム……面白くて、でも恥ずかしすぎず、エドガーにちょっとだけ困ってもらう……。


「じゃあ……その……」

僕が言いかけると、エドガーはわずかに身を引き、困惑した表情を浮かべる。


「まさか……その命令を……」

主人が僕を見てうなずく。

「さあ、どうする?」


僕は少し笑いながら、小さな声で決めた。

「……エドガーさん、一日中、主人のことを

『ご主人様』って呼んでください」


エドガーは一瞬凍りつき、

「……わかりました」


主人は大笑いしながら、剣を肩にかけた。

「フィシリア、なかなかセンスあるね」


僕は少し照れくさい気持ちと同時に、妙に楽しさも感じていた。勝者でもない僕が、こんな形で二人を振り回せるなんて――少しだけ特別な気分だった。



その後

一日中、ご主人様と言うエドガーが見られたのであった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

今回は明るくなってしまいましたね。おまけあります。読みたい方はどうぞ。


魔道騎士団とは?

魔法と剣術を兼ね備えた騎士たちの組織


なぜフィシリアが?

フィシリアの過去が関係してます。次回に回します。


ここまで読んでくださりありがとうございます。ちょっとふざけすぎましたね。キャラの口調がおかしくなった所もあったと思います。


作者はエドガーが可哀想な目にあって欲しいという願望でこんなりました。

エドガー、あきらか不利ですね。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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